2012 Fiscal Year Research-status Report
マントル鉱物の格子振動に関する研究: 定圧熱容量およびエントロピー決定への応用
Project/Area Number |
24540521
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
糀谷 浩 学習院大学, 理学部, 助教 (60291522)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 格子振動 / 熱容量 / エントロピー / マントル鉱物 / 熱力学 |
Research Abstract |
当研究では、高圧下で安定であるが1気圧下に急冷回収できない物質や、1気圧への急冷回収は可能であるが1気圧下での加熱で結晶構造が崩壊してしまう物質について、分光学測定から得られる格子振動の情報に基づいて理論的に熱容量、エントロピーを推定することが目的である。 マントル鉱物として重要であるスピネル型Mg2SiO4、イルメナイト型MgSiO3、カルシウムフェライト型MgAl2O4は、1気圧下に急冷回収できるが高温での加熱によりアモルファス化したり低圧相へ後戻り転移したりしてしまう。このため、1気圧下において約500℃より高温側での熱膨張率や定圧熱容量を実測することはできない。特に、カルシウムフェライト型MgAl2O4については、合成可能な試料量が少ないために低温熱容量も現在のところ測定困難な状況である。それらの高圧鉱物について、高圧ラマンスペクトル測定から格子振動モードの振動数の圧力依存性を求めることにより熱力学グリューナイゼン定数の決定を行った。また、大気圧・室温下でのラマンスペクトル測定から振動モードの状態密度をモデル化し、定積熱容量の格子振動モデル計算を行った。さらに、得られた熱力学グリューナイゼン定数および定積熱容量を用いて、熱膨張率をグリューナイゼンの式から計算した。 当該年度の研究の成果により、分光学測定に基づき求められた定積熱容量と熱力学グリューナイゼン定数を用いることにより、熱膨張率をかなりの精度で決定できることが分った。定圧熱容量の計算には熱膨張率が必要であるため、この成果は精度の良い定圧熱容量そしてエントロピーの決定のために非常に重要である。さらに、得られた熱膨張率は、高温高圧の状態方程式にも適用できるため、高圧高温下における熱力学的に内部一致したギブスエネルギーを計算することにも貢献する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
定圧熱容量やさらにはエントロピーを求めるための理論的なモデル計算の整備はかなり進んできた。一方、高圧ラマン測定において、予定していた圧力範囲を超えて行う実験があることが分かったため、現在の圧力発生装置や測定方法を再考する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、 CaSiO3ペロブスカイトについての高圧ラマンスペクトル測定を行う予定であったが、スペクトルの取得が困難であることが判明したため、MgSiO3-FeSiO3ペロブスカイト固溶体について高圧ラマンスペクトル測定を行う予定である。約80 GPaまでの圧力下でレーザー加熱によりダイアモンドアンビル加圧装置中で(Mg,fe)SiO3ペロブスカイト固溶体を合成し、減圧しながらラマンスペクトル測定を行う。様々な組成の固溶体について1気圧下での振動モードの振動数を外挿により求め、それらからFeSiO3ペロブスカイトの振動モードの振動数を推定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度ではダイアモンドンビルの購入を予定していたが、当初予想していた圧力範囲を超えて実験する必要が出てきたため、購入を控えていた。したがって、次年度では、その研究費のほとんどは、ダイアモンドアンビルの購入に充てられる。
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Research Products
(10 results)