2012 Fiscal Year Research-status Report
長距離伝搬型プラズモンを利用した電極触媒表面の高感度振動分光
Project/Area Number |
24550002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
八木 一三 お茶の水女子大学, 共通機器センター, 研究協力員 (40292776)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 表面増強ラマン散乱 / 長距離伝搬型プラズモン / ささやきの回廊モード / プラズモニック結晶 / 電極触媒 |
Research Abstract |
本研究は、長距離伝搬型プラズモンを励起し、電極触媒表面まで輸送することで、電極触媒としては高性能であるもののプラズモンの形成・伝搬には不向きな白金やパラジウムなどのd-金属表面に吸着した分子(特に低波数領域での信号計測が必要な酸素種)の振動スペクトルを計測しようとする試みである。当初は長距離伝搬型のプラズモンポラリトンを利用するため、半円筒プリズム底面に金をコーティングし、さらにその上に誘電体膜として高分子膜やフッ化マグネシウム膜などを形成し、長距離伝搬するプラズモンを最表面に形成したd-金属膜に集束させることを目論み、マトリクス法を用いたモデル計算プログラムを作成し、様々な成膜条件での長距離プラズモン伝搬とその角度分布を計算できるようにした。現在も最適値を得るために、現実的に膜形成可能なポリマーの種類やフッ素化合物を検討している。 一方で、プラズモニック結晶内の定在波プラズモンを特定の場所に集束する方法についても開発を進めており、ポリスチレン微粒子(PS球)を鋳型して金や銀などのプラズモン活性な金属に構造を賦与した球状セグメントボイド(SSV)アレイ型プラズモニック結晶の研究を実施している。通常、鋳型であるPS球を溶解することで、SSV基板が得られるが、PS球を残すことで、PS球内の定在波である「ささやきの回廊」モード(WGM)とボイド内の定在波プラズモンがカップリングしたプラズモニックWGMを励起し、ボイドのエッジ部分に集束できることを発見した。すなわち、このエッジ部分にd-金属を薄く成膜することで、実際に白金表面に形成された酸化皮膜のラマン信号を観測することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定してたプリズムカプラー型構造体に誘起される長距離伝搬型プラズモンポラリトンを利用した信号計測には至っていないが、別の構造体、すなわち粒子埋込型球状セグメントボイド(SSV)型プラズモニック結晶構造を用いる事で、d-金属の代表ともいえる白金表面に吸着した酸素種の振動バンドを高感度に観測できることがわかった。粒子埋込型SSV構造内でも、ポリスチレン鋳型粒子内を伝搬する「ささやきの回廊」モード(WGM)とカップリングした定在波プラズモンが関与しており、長距離伝搬型プラズモンの一種と考えて良い。こちらについても今後、モデル計算を実施し、より効率的に高感度な計測が可能となるよう、研究を推進してゆく。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた半円筒プリズムカプラを用いた長距離伝搬型プラズモンポラリトンを、電極触媒からの信号増強に利用する手法については、引き続き計算を実施しつつ、プラズモン発生源である金薄膜上に形成するポリマーや誘電体膜を均一かつ平坦にしてゆくための実験を実施する。 また新たに発見した粒子埋込型球状セグメントボイド(SSV)型プラズモニック結晶についても、電場計算などのモデル化を進め、ポリスチレン球以外の鋳型球(例えばシリカ球)を用いた場合など検討を進めたい。特に、現状では白金表面に形成される酸化皮膜のPt-O伸縮振動の表面増強ラマン散乱(SERS)信号は観測されているものの、電極触媒反応で重要な超酸化物や過酸化物に対応する信号は観測されてないため、これらを計測するための最適構造を検討してゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、上記の長距離伝搬型プラズモンポラリトンの計算が一段落し、実際に構造体(半円筒プリズムカプラ型積層構造)を構築してゆく必要がある。そのため、塗布用ポリマーの購入や、誘電体膜の真空蒸着等が必要となってくる。特に後者は外注すると1ロット数十万円の費用がかかるため、手持ちあるいは共同利用の真空蒸着装置を用いた試験的成膜が必要になると予想される。高分子膜については、スピンコートを用いることが一般的であるため、スピンコータなどの購入を検討している。 また、粒子埋込型球状セグメントボイド(SSV)基板については、ポリスチレンやシリカ粒子など鋳型粒子のコロイド溶液を購入する他、メッキ液などが必要となる。いずれにしても大がかりな装置は必要なくウェットプロセスでできる部分については、手持ちの実験装置で対応してゆく。
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