2013 Fiscal Year Research-status Report
長距離伝搬型プラズモンを利用した電極触媒表面の高感度振動分光
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24550002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八木 一三 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (40292776)
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Keywords | 表面増強ラマン散乱 / 長距離伝搬型プラズモン / プラズモニック結晶 / ささやきの回廊モード / 電極触媒 / 粒子埋込型球状セグメントボイド |
Research Abstract |
本研究は、長距離伝搬型プラズモンを励起し、電極触媒表面まで輸送・集束することで、電極触媒としては高性能であるが、プラズモンの形成・伝搬には不向きな白金やパラジウムなどのd-金属表面に吸着した分子(特に、低波数領域での振動分光計測が必要な化学種)の振動スペクトルを、表面増強ラマン散乱(SERS)分光法により計測しようとうする試みである。今年度もプラズモニック結晶内の定在波プラズモンをその表面に集束する手法に注力した。特にポリスチレン球を鋳型とし、金のようなプラズモン活性な金属をメッキすることで鋳型球を部分的に包埋して得られる球状セグメントボイド(SSV)アレイ型プラズモニック結晶(Au-SSV)基板におけるSERS観測を研究しており、金メッキ膜の最表面にのみ数原子層の白金やパラジウムを被覆することで、ボイド内部のプラズモンが最表面に集束し、最表面層からの強いSERSが観測出来ることを実証した。ポリスチレン球の直径を変化させ、SSV基板を調製したところ、直径200 nmの鋳型球を用いると、SERS信号が極端に増強されることを見出した。この信号増強は最上層の白金膜厚を10原子層まで増やしても保たれ、このPt/Au-SSV基板を用いることで、電気化学環境下での電極反応のin situ観測にも用いる事ができた。実際、昨年度観測出来た白金酸化皮膜のPt-O伸縮振動以外にも、一酸化炭素が吸着した際のPt-C伸縮振動も観測出来ており、反応が進行しているその場の分子吸着状態を直接観測出来る。今後Pdを被覆したPd/Au-SSV基板などを用いる事で、硝酸還元反応などへと応用できると想定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた半円筒プリズムカプラを用いた長距離伝搬型プラズモンポラリトンを用いる方法については、計算した結果、電極触媒活性なPtやPdでの減衰が著しく、あまり有用ではないことがわかってきたが、代わって、粒子埋込型SSV基板を用い、さらに粒子径を制御することにより、飛躍的に高感度なin situ SERS計測が可能になった。この効果は当初想定していたPdやPt層を付与しても失活することなく、Pt表面に吸着した分子の振動を電気化学環境下で観測出来るようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
粒子埋込型球状セグメントボイド(SSV)の粒径については最適値が求まったが、Auメッキ膜厚や最上層に形成するPtあるいはPd原子層の厚みの影響は不明である。これらを精査するとともに、最も高感度な200 nm鋳型球で形成した基板のプラズモン吸収がどのように鋳型球内の「ささやきの回廊」モードと結合しているかを、反射計測で明らかにする。また、最上層をPdにしてSn被覆することにより、硝酸還元反応に活性な触媒におけるin situラマン計測が可能になると考えており、今後取り組んで行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度と2年目の間に現所属機関への異動があり、1年間は学生なしで実験環境を整える必要があり、計算と実験装置の移設・立ち上げに注力した。 現所属におけるラマン分光光学系の立ち上げに必要な消耗品等に使用する他、硝酸還元反応など、新たな電極触媒反応に取り組むために使用する。
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