2012 Fiscal Year Research-status Report
可視光増感性金属触媒による直接的アリレーションを鍵反応とする機能性分子の効率合成
Project/Area Number |
24550071
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高尾 昭子(稲垣昭子) 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (00345357)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 光増感性錯体 / 触媒反応 / パラジウム |
Research Abstract |
平成24年度は、(1) 光増感部位の改良および (2) 基質適用範囲の調査の2点について検討した。これまで、(1)についてはルテニウムポリピリジルユニット [(bpy)2Ru(bpm)]2+ を主に用いてきた。別の触媒反応系において光増感ユニットは、その触媒活性に大きな影響を与えることを見出しているので、置換基を導入した光増感ユニット [(bpyR)2Ru(bpmX)]2+ (R = Me, X = H, Br) を持つPd―アセテート錯体類縁体を合成し、反応性を調査したところ、いずれの置換基R, X ともにHのものが最も高活性であることが分かったため、以後はこの無置換ルテニウムポリピリジルユニットを有するPd触媒を用いることにした。(2) について基質適用範囲を広げるために、C-H活性化を受ける芳香族側の基質を変えて反応性を調査した。これまで、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)との反応で、高選択的にシンナミル基とカップリングした生成物が得られることを見出してきた。ベンゼン、トルエン、n-プロピルベンゼン、キシレン、と反応させたところ、クロスカップリング生成物は全く得られず、シンナミルアセテートのホモカップリングのみが進行した。メチル基の数を増加させ、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン(デュレン)の場合は反応が進行したことから、この反応が求電子的な反応であることが分かった。 これらの結果を踏まえ、様々な対照実験を進めた。この反応はニトロメタン中、Ru-Pd二核錯体を触媒として用いるが、パラジウムアセテート単核錯体や、これにビピリジル配位子、銀塩を加えても反応は進行せず、二核骨格+光照射がこの反応の進行に不可欠であることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本触媒反応の基質適用範囲を系統的に調査することによって、このC-H活性化が求電子的な反応であることを明らかにすることができた。一方で光増感部位を種々検討し、本系では無置換のルテニウムポリピリジルユニットを持つ錯体が最も高活性であることを示した。また、シンナミル基の方は、様々なアセテートとの反応を試みている段階であり、まだ基質の拡張には至っていない、しかしながらシンナミル基のカップリングパートナーであるアリール基は、上述のベンゼン環を持つ基質以外にもチオフェン類に適用可能であることを予備的に明らかにしている。一方で基質を固定して、種々のコントロール実験によって条件検討を進めたところ、反応に不可欠な因子としてRu-Pd二核骨格および光照射が必要不可欠であることを確認することができた。 一方で、置換基を持つ触媒は、低活性ながらも比較的安定性が高いことから錯体を結晶化し、予備的解析ながらも構造を明らかにすることができた。したがってその活性に応じて用途を使い分けることができる。結晶構造解析では、パラジウムモノアセテートユニットを持ち、空き配座には、二酸化炭素が中央の炭素原子でh1-配位しているという予想外の結果を得た。このような構造は、これまで報告例のほとんどない、珍しい錯体であることからさらに精度の高い構造解析を必要とする。 基質の拡張はまだ十分とはいえないものの、系統的な調査により、反応の基本的な傾向が明らかになり、これらの結果をもとに次年度以降、基質を選択することが可能となることから、予定通りの達成度と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述の結果から、不可欠は反応条件や基質適用範囲を明らかにすることができたので、予定通り、さらなる基質の拡張を進めていく。シンナミル基、アリール基ともに基質の種類を広げることが可能であり、それに伴い、様々なカップリング体の触媒的合成が可能と考えている。しかしながら本系は、光を用いたC-H活性化の本質を明らかにするところにあるので、これと同時に反応機構の解明を進めていく。たとえば反応中間と考えられるような錯体を別途合成し、反応中間種を同定し、機構全体を明らかにする。また、律速段階を明らかにすることができれば、その過程の効率化を検討することによって、触媒反応効率を劇的に向上させることができると考えている。シンナミル基がh3-で配位したパイアリル錯体を経由する可能性が高いことから、これを別途合成し、これを同様な反応条件で触媒反応を検討する。また、本系では、明確な誘導期が存在することから、この誘導期間の反応過程を明らかにし、それを短縮することを目指す。一方で中間種の光励起状態を明らかにすることは、光反応効率の向上につながるために、原系のRu-Pd モノアセテート錯体を含め、中間体の光物性(吸収、発光、励起寿命、酸化還元電位)の調査を進める。今年度について非常に効率的に予算執行を進めることができたため、残金が生じた。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、基質の拡張、反応機構の解明に力を注ぐ予定であることから、数多くのNMR実験が必要であり、比較的高価なPyrex、石英NMRチューブ、嫌気下で行うすり付反応容器と重溶媒を必要とする。このため、予定通り、消耗品である重溶媒とガラス器具、試薬類に重点的に予算を割く予定である。また、反応容器であるシュレンクチューブもガラス器具に該当し、購入予定である。上記以外には光照射装置、成果発表のための学会参加、勉強会に伴う旅費、計算機利用料に利用予定である。
|
-
[Journal Article] Manganese(II) Semiquinonato and Manganese(III) Catecholato Complexes with Tridentate Ligand: Modeling the Substrate-Binding State of Manganese-Dependent Catechol Dioxygenase and Reactivity with Molecular Oxygen2013
Author(s)
Komatsuzaki, Hidehito; Shiota, Akihiko; Hazawa, Shogo; Itoh, Muneaki; Miyamura, Noriko; Miki, Nahomi; Takano, Yoichi; Nakazawa, Jun; Inagaki, Akiko; Akita, Munetaka; Hikichi, Shiro
-
Journal Title
Chemistry- An Asian Journal
Volume: 8
Pages: 1115-1119
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-