2012 Fiscal Year Research-status Report
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24550080
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 雄大 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (70509950)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マルチ銅酵素 / 酸素活性化 / 分子触媒 / 生体分子 / 燃料電池 / 銅酸素錯体 |
Research Abstract |
選択的な酸素四電子還元反応を触媒するマルチ銅酵素、ラッカーゼの銅三核活性中心を規範として合理的に分子設計した新規な銅三核化配位子の合成(Terpy-PIZN2とTerpy-BPEN2)、および新規配位子の銅錯体化を行った。得られた新規多核銅二価錯体を電子スピン共鳴法により解析し、タイプII銅特有のシグナルが得られたことから、反磁性的な二核銅中心(タイプIII銅)と単核銅中心(タイプII)が共存することが示唆された。得られた新規多核銅錯体による酸素活性化反応機構について検討するために、-90°Cにおいて還元型銅錯体の酸素化反応を行い、反応中間体の捕捉と各種分光学的解析(電子遷移吸収、電子スピン共鳴、共鳴ラマン分光)を行った。分光学的解析より、酸素分子は還元型多核銅中心に結合し、ペルオキソ錯体を生成することを見いだした。この中間体は-80 °C以上の温度で分解することから、高い反応性を有することが示唆された。 さらに、多核銅錯体による酸素還元の電気化学的触媒反応性について検討するために、触媒分子を導電性炭素材料に吸着させた触媒インクを調製し、各種電極表面に塗布、乾燥させ電気化学的な解析(サイクリックボルタンメトリーと回転リングディスク電極による酸素還元反応解析)を行った。Terpy-PIZN2を用いた多核銅錯体においては、2電子酸素還元選択性を示したが、改良型のTerpy-BPEN2ではその選択性が3.6電子にまで向上した。また、酸素還元の過電圧もTerpy-BPEN2においてはTerpy-PIZN2と比べて改善が見られた。多核銅錯体は高い正電荷をもつことから、導電性炭素への吸着も強く、触媒インクの安定性は非常に高いことが明らかになった。 これらの成果は新規性と重要性が高く、速報誌にて論文発表を先行させる目的から、学会発表等は行わなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マルチ銅酵素ラッカーゼを規範とした新規な多核化配位子の合成に成功し、その配位子を用いて、多核銅錯体の合成に成功した。2種類の新規な配位子誘導体の合成に成功し、それらの多核銅錯体による酸素還元反応において、反応性の改善に成功した。また、ラッカーゼの多核銅活性中心における酸素活性化反応機構の解明のために、本モデル酵素錯体を用いて、多核銅一価錯体と酸素との反応を低温条件下において行い、酸素活性化反応中間体の補足と、その各種分光学的解析に成功した。さらに、新規な多核銅錯体の電気化学的酸素還元触媒反応についてサイクリックボルタンメトリーおよび回転リングディスク電極を用いて検討し、酸素還元の選択性および反応開始電位に関する知見を得た。調製した触媒インクは多核銅錯体の高電荷性のために安定に電気化学触媒として機能することを見いだした。 一方で、平成24年度当初の研究計画において、新規銅錯体のX線結晶構造解析を目標に掲げたが、今年度においては錯体の結晶化において微結晶が得られたのみで、本解析に適した単結晶は未だ得られなかった。しかしながら、微結晶はその電子スピン共鳴の解析などから、単一成分で錯体化が均一に行われている知見を得ているので、いずれ近いうちに良質な単結晶が得られると考えられる。また、SQUID(超伝導量子干渉計)を用いた多核銅中心の磁気特性の解析を挙げていたが、測定の依頼先の確定が滞り測定に到らなかった。 平成24年度の研究計画においては新規な多核化配位子の合成と、その多核銅錯体の低温における酸素活性化反応における中間体の補足および分光学的解析が最も難しい段階と考えていたので、以上の成果により、今年度の目標の7割は達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
多核銅錯体としては希有な酸素活性化における反応中間体の生成と単離に成功したので、平成25年度においてはさらに詳細な分光学的な解析を行う。分光手法としてシンクロトロン放射光を利用したX線吸収分光(XAS)による解析を行う。本解析は九州大学シンクロトロン光利用研究センターにて行う予定であるが、測定中の測定試料の分解を抑えるために試料を液体窒素温度下で測定する必要があり、XAS分光用の液体窒素デユワーとセル系の開発が新規に必要となる。本解析により、新たに発見した多核銅中心での酸素活性化反応中間体の銅の電子状態および配位構造に関して詳細な知見を得る。また、詳細な共鳴ラマン分光法および密度汎関数法計算による量子化学計算による解析を行い、新規に発見したペルオキソ反応中間体の詳細な分子構造解析を行う。 また、昨年度の研究から、配位子骨格において酸素活性化に大きく影響を与える部位に関して知見を得たので、配位子骨格(ピリジル部位)の改変をし、四電子酸素還元反応への選択性と反応に必要な過電圧を下げるべく、反応性の改善を図る。新規な配位骨格による反応性の違い、さらに低温における酸素活性化反応による反応中間体の分子構造を解析することで、多核銅錯体の構造、電子状態、反応性の相関について明らかにする。反応性に優れた配位子骨格が得られた際には、ピリジン骨格に置換基を導入して銅錯体の電位の制御をし、反応性の最適化を図る。 さらに、異核多核錯体を合成して(単核銅サイトのタイプII銅を他の金属(亜鉛やコバルト等に置換)、電気化学的酸素還元反応の解析による反応特性および、低温下での酸素活性化反応を解析して反応中間体の分子構造を解析して、銅三核活性中心の本質的な分子機構について解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新たに発見した、酸素活性化反応中間体についてシンクロトロン放射光によるX線吸収分光法により解析するために、クライオデュワーおよびセル系の開発が必要になる。本開発にかかる経費と反応中間体の詳細な分光学に必要な経費(分光用消耗品等)として45万円を計上する。また、改良した配位子の合成のために各種試薬および合成用ガラス器具の購入のために、65万円を計上する。さらに、量子化学計算を行うためにソフトライセンスの購入が必要となり、量子化学計算ソフトJAGUARのライセンス料40万円を計上する。また、成果発表、および共同研究打ち合わせのための旅費、および論文出版にかかる経費をそれぞれ10万円計上する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Crystal structure of aldoxime dehydratase and its catalytic mechanism involved in carbon-nitrogen triple-bond synthesis2013
Author(s)
Nomura, J., Hashimoto, H., Ohta, T., Hashimoto, Y., Wada, K., Naruta, Y., Oinuma, K.-I., Kobayashi, M.
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Journal Title
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
Volume: 110
Pages: 2810-2815
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Axial ligand effects on vibrational dynamics of iron in heme carbonyl studied by nuclear resonance vibrational spectroscopy2012
Author(s)
Ohta, T., Liu, J.-G., Saito, M., Kobayashi, Y., Yoda, Y., Seto, M., Naruta, Y.
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Journal Title
Journal of Physical Chemistry B
Volume: 116
Pages: 13831-13838
DOI
Peer Reviewed
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