2013 Fiscal Year Research-status Report
気節-非相分離振幅変調多重化フロー分析法の開発と応用
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24550101
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
田中 秀治 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (40207121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 政樹 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (10457319)
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Keywords | フロー分析 / 振幅変調 / 高速フーリエ変換 / アンモニウムイオン / リン酸イオン / 気節法 / 自動分析 |
Research Abstract |
気節-非相分離振幅変調多重化フロー分析法は,本研究者が開発した振幅変調多重化フロー分析法(異なる周波数で流量変動させた試料溶液を合流させ,下流で得られる検出信号を周波数解析することで多試料/多成分同時分析を行う分析法)に,管軸方向の分散に起因する感度減少を抑制するための気節法を導入した新規フロー分析法である。物理的脱気に伴う分散を避けるため,相分離を行うことなく気相と液相の両相を検出器へと導き,検出信号の解析によって液相由来の信号のみを取り出す。 平成25年度は,前年度に開発した本分析法のシステムおよびプログラムを用い,各種陸水試料(河川,池,灌漑用運河,堀)を対象として,リン酸イオンのマラカイトグリーン法による同時定量およびアンモニウムイオンのインドフェノールブルー法による同時定量の研究を継続・発展させた。前者では,その成果を原著論文にまとめて国際誌Talanta (Elsevier社)に投稿し,公表することができた。後者では,第51回フローインジェクション分析講演会(熊本)にて研究成果を発表し,指導する大学院生(研究協力者)が若手優秀ポスター賞を受賞した。 前年度の研究において,本分析法に内在する短所,すなわち,複数の液を合流させることで目的成分の希釈が起こり高感度化に不利にはたらくことも明確になった。そこで本年度は,流れ系の中にフロー式の電解セルを導入し,周期的な電位の変調により目的成分の電解濃縮ー溶出(ストリッピング)を繰り返すことで,感度の上昇をめざした。しかし,現時点では公表に堪えうる有望で再現性の高いデータを得るには至っていない。 振幅変調多重化フロー分析法は,周波数解析の概念を導入したユニークなフロー分析法である。今後は,学術的ユニークさだけでなく,実用分析としての可能性をさらに高められるよう,研究を発展・継続してゆきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気節-非相分離振幅変調多重化フロー分析法のシステム構築とリアルタイム制御・計測・解析のためのVisual BASICプログラムの作成については,懸念していたようなトラブルも発生せず,高い達成度が得られている。応用面では,1試料中の硝酸イオンと亜硝酸イオンの同時定量,2試料中のリン酸イオンの同時定量の研究については,学会発表および原著論文公表にも至り,良好な達成度が得られている。 一方,平成25年度中に達成させたかった2試料中のアンモニウムイオンの同時定量の原著論文執筆,振幅変調多重化フロー分析法全般についての総説執筆は,前者は素稿完成段階であり,後者は執筆開始に至っていない。研究代表者が薬学部副学部長・教務委員長,全学の教育関係各種委員会委員等で,学内外での会議に忙殺されることが多かったのが一因であるが,平成26年度中にはこれら執筆面でも一層の努力をしたい。また,ストリッピング法の導入による振幅変調多重化フロー分析法の高感度化に関する研究が,満足しうるレベルには進展していない点は残念なところである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の報告書で述べたように,多試料同時分析においても検出信号の気相認識・平滑化プログラム処理が十分に高い信頼性のもとに行えることが明らかになったので,平成25年度からは当初計画の直接的な相認識,すなわち2波長を用いる相認識法や,吸光度測定と導電率測定の併用による相認識法の検討ではなく,気節-振幅変調多重化フロー分析法の高感度化を主たる研究目標に切り替えて研究を行っている。 最終年度である平成26年度は,この「振幅変調多重化フロー分析法の高感度化」に向けた取り組みを継続するとともに,頻繁な校正を必要とせず長時間の連続測定が可能な「内標準法を導入した振幅変調多重化フロー分析法」についても検討したい。 前者では,界面活性剤濃度に周期的変動を与えた流れを利用して,スタッキング様の濃縮効果が得られないか検討を始めている。後者では,内標準物質を添加した試料溶液の流量に周期的変動を与え,目的物質および内標準物質をそれぞれ独立に測定(現有する2波長測定分光光度検出器を利用)することで,流量などのハード面でのゆらぎを補正し,頻繁な校正を行うことなく長時間,信頼性の高い連続測定が可能なフロー分析システムを構築する。現在,色素水溶液を用いて基礎的検討を行っている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の支出項目のうち,「その他」の支出(学会参加登録費,論文別刷代)については,計画と実績との間に大きな開きはなかった。物品費のうち設備備品については計画および実績とも0円であった。繰越金が生じた主な理由は,人件費・謝金(予算額35,000円,実績額0円)および旅費(予算額300,000円,実績額119,000円)の支出が少なかったことによる。旅費の支出が少なかったのは,第51回フローインジェクション分析講演会(熊本)での研究成果発表について4名分を計上していたところ,共著者が別なテーマの発表のため他の経費を旅費に充てたこともあり,2名分の旅費にしか使用しなかったためである。これらによる繰越金に初年次からの繰越金が加わった額が,繰越金の総額となった。 平成26年度では,当初の予定通りの消耗品費(試薬,器具など)に加え,内標準法を導入した振幅変調多重化フロー分析法の研究に必要な消耗品を購入したい。まだ原著論文公表ができていない研究成果の執筆や振幅変調多重化フロー分析法全般に関する総説の執筆にも力を注ぎ,これらの別刷費にも経費を充てたい。最終年度なので,研究成果を積極的に発表したい。海外での研究成果発表に加え,平成26年度にはフロー分析の国際学会International Conference on Flow Injection Analysisが日本国内(福岡)で開催される予定なので,これらの参加登録費および旅費にも充てたい。
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Research Products
(4 results)