2012 Fiscal Year Research-status Report
ステロール-脂質二重膜の体積緩和ダイナミクスとミクロドメインの動的形成機構
Project/Area Number |
24550157
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
玉井 伸岳 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (00363135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 優樹 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (30507455)
松木 均 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (40229448)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リン脂質二分子膜 / コレステロール / 圧力摂動熱量法(PPC) / 高圧密度測定 / 等温圧縮率 / 緩和挙動 |
Research Abstract |
当該年度の研究成果は、 (a) 圧力摂動熱量法(PPC)に関する成果:(1)脂質ベシクル分散系に対するPPCの適用性に関して、精密密度測定の結果と比較することにより、相対誤差1%以下で一致することを確認した。(2) ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)ベシクル分散液に対してPPC測定を行い、60 psi以下の圧力変化ではDMPC二分子膜の緩和は線形とみなせ、その特徴的な時定数を実験的に決定できた。 (b) 高圧密度測定に関する成果:(1)旧型装置を用いた、30 °CにおけるDMPCベシクル分散液に対する高圧密度測定により、二分子膜中におけるDMPCの等温圧縮率を決定した。(2)より精密な測定を実施するための保圧システム(シン・コーポレーション社製)を導入した高圧密度測定装置を構築した。 (c) 本研究に関連したその他の成果:(1)コレステロールの同族体であるスティグマステロールおよびエルゴステロールがリン脂質二分子膜の相挙動におよぼす影響を、温度-組成相図を作成することにより明らかにした。 成果(a-1)は本研究の基盤に相当する。そのため以前より進めていた研究の成果であり、すでに論文に掲載されている(N. Tamai et al., Colloids Surf. B: Biointerf. 92 (2012) 232)。成果(a-2)および(b-1)は、国内学会(第50回生物物理年会)および国際会議(HPBB2012)で発表した。またその成果の一部はすでに論文で報告している(N. Tamai et al., High Press. Res., (2013) in press)。成果(c-1)は、国際会議(14th ICSCS2012)で発表し、その一部は速報誌に掲載されている(N. Tamai et al., Chem. Lett., 41 (2012) 1087)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の計画において、当該年度は本研究計画の基盤を築くことを目的とし、測定方法・解析方法の確立を目標として研究計画を作成していた。具体的には、以下の二点が主たる目標である。 (a) 圧力摂動熱量(PPC)法の測定方法および測定結果の解析方法の確立 (b) 高圧力下における精密密度測定装置の構築および測定方法の最適化 (a)に関しては、当初目標としていた緩和時間の実験的決定が達成されたことから、測定方法・解析方法の確立という意味では概ね計画通りに進んでいると考えている。また、当該年度の実績の概要で記載したとおり、その成果の一部を論文に報告することができたことに関しては、計画以上の進展といってもいいだろう。しかし、当初研究計画で想定していたほど条件検討の範囲を広げることができなかったことから、研究の進捗状況は完璧とは言えず、慢心することなく一層精力的に研究を進めていかねばならない。(b)に関しては、30 °Cでの膜中におけるDMPCの等温圧縮率を決定することができたとはいえ、旧装置を用いての成果であり、保圧システムを導入した新装置での成果は現時点でまだ充分といえるほど得られていない。高圧密度測定装置の改良に関して、業者との討議が予想していた以上に長引いたことが、当初想定していたほどには進捗しなかった原因の一つである。このことを踏まえて、より一層積極的に研究を推し進めていかなければならないのはもちろんのこと、それを平成25年度以降の研究計画に反映させる必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」に記載したとおり、平成24年度の研究計画において、(a)PPC測定に関連した研究実施計画については概ね当初の予定通りに進められた一方で、(b)高圧密度測定装置の構築に関しては、当初計画していたほどには進捗していない。そのことを踏まえ次年度以降の計画において、特に(b)に関連する研究実施計画を計画以上に積極的に進めていくことを考えている。具体的には、 (a) PPC測定:当初の計画通り、測定対象を一成分系のリン脂質二分子膜からコレステロールを含む二成分系リン脂質混合二分子膜へと発展させていく。また測定結果の解析に関しては、方法論的には確立できたものの、効率という点においてはまだ改良の余地がある。測定対象がこれまで以上に複雑になることを考慮すれば、解析方法の改良は決して軽視すべき課題ではないと考えている。したがって、アプリケーションの開発または対応可能なソフトウェアの購入などによる解析方法の効率化を、実験と並行して進める。 (b) 高圧密度測定:第一に、平成24度研究計画ではすでに完了していなければならない予備実験の積み重ねを早急に完了させることを最優先の課題とする。ただし、この予備実験の積み重ねは、再現性の良い測定結果を得るのに最適な測定方法を確立するためには必要不可欠なプロセスであることから、決して突貫工事的に済ませるつもりはない。測定方法の確立が終わり次第、一成分系のリン脂質二分子膜に対して高圧密度測定を行ない、部分モル体積の圧力依存性から等温圧縮率をいくつかの温度で決定する。一成分系リン脂質二分子膜に対する実験が完了後、ただちにコレステロールを含む二成分系リン脂質混合二分子膜へと発展させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は新たに設備を購入する予定はないが、本研究を計画に沿って進めていくためには、試薬や汎用実験器具の購入は不可欠である。特に本研究の対象としているリン脂質二分子膜は、純度の高い合成リン脂質を試料として使用しなければならず、通常の汎用試薬と比較すると高額になる。したがって次年度の研究費の大半を物品費として試薬購入費用に充てる予定である。残りの研究費は、旅費およびその他の費用として、それぞれ、成果発表を行う予定の学会参加費および論文の別刷りの購入費用に充てる予定である。詳細は以下のとおりである。 物品費:試薬代(リン脂質(\22,400/g)×20 g = \442,000)、高圧装置メンテナンス(\100,000)、汎用実験器具(シリンジ、ガラス器具等\58,000)合計\600,000 旅費:第回コロイドおよび界面化学討論会(名古屋)、第回生物物理年会(京都)、第回高圧討論会(新潟)に参加予定 その他:論文別刷り代(現在Biochimica et Biophysica Acta Biomembranesに投稿中)
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Research Products
(21 results)