2012 Fiscal Year Research-status Report
球面上での荷電コロイド結晶化を用いた正多面体状微粒子クラスターの構築
Project/Area Number |
24550160
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山中 淳平 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80220424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥薗 透 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10314725)
豊玉 彰子 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (50453072)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | コロイド / 会合体 / 集合体 / クラスター / 多面体 / コロイド結晶 |
Research Abstract |
本研究では、球面上で荷電コロイドを結晶化させる新規手法に基づき、粒子が正多面体(4面体など)型に配列した、粒子クラスターを構築することを目標としている。また作製したクラスターの自己集合を利用して、新規な構造を構築することも目標である。24年度は、正に荷電したポリスチレン系の粒子(4—ビニルピリジン/スチレン共重合体粒子、粒径420nm)と、負に荷電したポリスチレン粒子(390~1200nm)を用い、正4面体クラスターを含む、様々なクラスターの作製に成功した。 正に荷電した粒子は、2−ビニルピリジン、スチレンおよびジビニルベンゼンを用いて乳化重合により合成した。負に荷電した粒子として、当初はシリカ粒子を用い、その電荷をpHにより制御する予定であったが、シリカの屈折率(1.46)が媒体の水の屈折率(1.33)と近いため、顕微鏡観察が困難であった。そこで、ポリスチレン(屈折率1.59)を用いて検討した。本年度の検討では、正荷電の粒子は粒径420nmのもの一種類とし、負荷電粒子のサイズによって、会合数がどのように変化するか、光学顕微鏡で系統的に調査した。正荷電粒子を大過剰に加えた。会合数には分布があり、今後検討する予定であるが、1個の負電荷粒子あたりの、正荷電粒子の最大数は次の通りである。負粒子の粒径が1200nmのとき、粒子の断面(大円)あたり6〜8個、粒子表面全体には、18個の正電荷が観察できた。また、780および720nmでは10個、600nmでは9個であった。510, 430,および390nmのとき、4個がテトラポッド状に付着していた。これは当初予定していた、正四面体状の会合体の生成を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終的な目的は、球面上の荷電コロイド結晶化に基づき、粒子が正多面体(4面体など)型に配列した、新規な粒子クラスターを構築し、またその自己集合により、新規構造を構築することである。本目標を達成するために、さらに3項目の検討内容を設けている。(1)平板上での2次元荷電コロイド結晶の作成:球面上での結晶化に先立ち、正電荷を持つガラス平板に負電荷を持つシリカ粒子を静電吸着させ、粒子間クーロン反発による2次元結晶の生成条件を明らかにする。粒子がエネルギー的に安定な位置を取れるように、表面の化学修飾を行う。(2)正多面体型クラスターの構築:正に荷電したポリスチレン系粒子と負に荷電したシリカ粒子を用いてクラスターを作成する。大規模な凝集の生成を避けることと、会合数を限定することが重要である。(3)クラスターの自己集合による高次構造の構築:クラスターの粒子配置を化学的手法で固定したのち、クラスター同士を非クーロン力で自己集合させ、高次構造体を構築する。 このうち初年度である24年度は、(1)項を実施したのち(2)項に着手する予定であったが、(1)項の検討をまたずに、(2)項を試験的に実施したところ、目標の一つであった4面体状の会合体が比較的容易に作製できる条件が明らかになった。このように、当初予定から若干の変更があるが、目標に沿って着実に成果を得ていると考えている。一層定量的な考察を加える必要があれば、(1)へもどって検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定度通り、25および26年度以降は(2)項を引き続き検討し、また必要に応じて(1)項の検討に戻ってクラスター形成を検討する。正四面体クラスターが再現性よく構築できれば、申請書で予定した通り、下記の検討へ進む。 クラスター構造の固定化と単離:あらかじめ表面にビニル基を導入した中心粒子(C粒子)と周囲粒子(V粒子)のクラスターを作成し、媒体中で水溶性のビニル系高分子(ポリアクリルアミド等)を合成して、C、V粒子を橋掛けし、クラスター構造を固定する。未会合のC、V粒子や、予定した会合数以外の会合体は、全て正または負の電荷を持つため、これらを直流電場印可により除去する。 クラスターの自己集合による高次構造の構築:上記手法で固定化したクラスター表面は高分子修飾されており、その貧溶媒(ポリアクリルアミドの場合はエタノール等)を媒体に添加したり、また複合体形成を利用する(ポリアクリル酸に対して2価イオンを用いて架橋する)等の方法で、クラスター同士を自己集合させる。正4面体クラスターの場合、炭素原子間の結合に似た、一重、二重および三重結合が可能である。これらの基本的な結合様式が生成する条件を調査したのち、高次構造の構築を目指す。正4面体クラスターがすべて一重結合した構造は数種類あり、その一つがダイヤモンド構造である。構造全体をゲルで固定し、共焦点顕微鏡などで観察する。また一方向成長(貧溶媒の拡散など)による大型構造の形成を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究計画に従い、来年度は本年度と同様に粒子の会合条件を探索するほか、新規に会合体同士の結合実験や、会合体の固定化実験を行う予定で ある。これに必要な試薬、器具類の購入、顕微鏡観察用のカバーガラス等の消耗品の購入が主体となる予定である。また、成果の学会発表のための旅 費を計上する予定である。研究の進捗により、適切なタイミングで論文発表(アメリカ化学会誌など)を行いたいが、25年度は速報で一報の投稿が可 能と期待している。そのさいの論文原稿英文校正の費用も計上の予定である。
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Research Products
(3 results)