2013 Fiscal Year Research-status Report
生体触媒とパラジウム触媒をシンクロさせた多様性核酸プローブの創製
Project/Area Number |
24550193
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
幡野 明彦 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (10333163)
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Keywords | チミジンホスホリラーゼ / 酵素合成 / 非天然ヌクレオシド / 蛍光色素 / 有機溶媒効果 / ドッキングスタディー |
Research Abstract |
核酸代謝酵素は,生体内のヌクレオシドの濃度バランスを司っている.なかでもチミジンホスホリラーゼは,チミジンとリン酸を基質とし,塩基部位であるチミンを遊離させてデオキシリボース-1-リン酸に変換する.本研究室ではこの酵素を利用して,ウラシルの5位に様々な置換基を導入した化合物が基質となり,非天然ヌクレオシドに変換できる事を報告してきた.昨年度までの研究で,ウラシルの5位にアルキル鎖を介してクマリン色素を有するウラシル誘導体が,チミジンホスホリラーゼの基質となり,非天然ヌクレオシドに変換されることを報告した.本年度はさらに発展させて実験を行った. 異なる蛍光色素を有するウラシルの合成と酵素反応検討 蛍光色素修飾ウラシルとして,ピレン,トリフルオロメチルクマリン,レゾルフィンを有する化合物の有機合成を行った.ピレンとウラシルはアルキル鎖長8,トリフルオロメチルクマリンとレゾルフィンはアルキル鎖長6でウラシルと共有結合でカップリングした.化合物の同定には,核磁気共鳴装置,質量分析装置を用いて確認した.緩衝液中では,ほとんど反応が進行しなかった.溶解性が悪く,酵素と基質の衝突頻度が低下しているためであると考察できた.DMSO を 50 % 添加して溶解性を向上させると,反応転換率21.6%となった. 基質の溶解性を高めるための有機溶媒の添加効果 蛍光色素部位は脂溶性が高く,緩衝液のみでは溶解性が低くなってしまう.酵素内部への基質の取り込みが低下してしまい,反応転換率が向上しないと考えられた.そこで,有機溶媒の種類,有機溶媒の濃度の効果を検討した.その結果,DMSOが最も高い反応転換率を示し(40%添加で反応転換率57%),DMF も比較的高い反応転換率を示すことが分かった(40%添加で転換率18%).それに対し,メタノール,THFでは反応はほとんど進行しなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チミジンホスホリラーゼの基質と成り得るウラシル誘導体の有機合成では,4種類の蛍光色素を有するウラシル誘導体を合成することができた.その蛍光色素はクマリン,ピレン,トリメチルクマリン,レゾルフィンである.現在,他の蛍光色素も合成中である.なお,フェロセンを結合させるには至っていない. クマリンとピレンを有するウラシルでは,酵素反応による非天然ヌクレオシドへの変換反応を検討することができた.酵素合成は,バイアル瓶にクマリン修飾ウラシル5mM,チミジン50mM,チミジンホスホリラーゼを10ユニット,1mMリン酸緩衝液pH 6.8を加え,37℃で実施した.反応追跡は,逆相カラムを有した高速液体クロマトグラフィーにて行った. 新しい知見として,DMSO を40%まで添加してもチミジンホスホリラーゼは失活せず,脂溶性の基質である蛍光色素含有ウラシルをヌクレオシドへ導入することに成功した.収率もクマリンの場合は57%と高い効率で転換可能であった.これらの反応をさらに拡張できれば,蛍光色素や機能性官能基導入デオキシウリジンが一段階,立体選択的に可能となり,遺伝子診断等に利用できるプローブ分子の調整が容易になる.
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Strategy for Future Research Activity |
ウラシルの5位にフェロセンを導入したウラシル,ならびにフラーレンを導入したウラシルを有機化学的に合成し,チミジンホスホリラーゼによって非天然ヌクレオシドへの変換反応を検討する. 現在,リポフェクションによる細胞導入実験を行っており,ヌクレオシドの動態解析に利用できるかどうかを検討している.水に不要で有機溶媒に可溶なため,塊として細胞膜にくっついてしまうことが分かった.そこで,親水性の非天然ヌクレオシドを本手法を用いて合成する予定である. また,チミジンホスホリラーゼのX線結晶構造解析図は報告されている.本データを用いて,5位に巨大官能基を導入したウラシルを用いてドッキングスタディー(コンピューターシミュレーション)を実施する.理論計算と実験結果がシンクロするかどうかを確認する.
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Research Products
(7 results)