2013 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍細胞マーカー構成糖鎖を特異的認識する人工レクチンの開発と膜融合活性評価
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24550196
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
柏田 歩 日本大学, 生産工学部, 准教授 (80350031)
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Keywords | リポソーム / 薬物送達 / 膜融合 / 糖鎖認識 |
Research Abstract |
初年度に腫瘍細胞表層に特異的に発現するTF二糖構造(Gal-beta1,3-GalNAc)を選択的に認識できるレセプター分子の開発に成功したことから,二年目は合成したレセプター分子の性能評価を主に行った。本研究の最終目標は腫瘍細胞への薬物送達に関する方法論の提供にあるため,基礎研究として,人工細胞膜としても知られているリポソームを用いた膜融合実験による評価を系統的に行った。初年度と同様に膜融合の評価は動的光散乱によるリポソームの粒径変化と蛍光測定によるリポソーム構成脂質間の混合挙動を中心に行った。初年度の成果としてTF二糖と同じ糖鎖配列を有するガングリオシドGM1に対し,合成したレセプター分子は選択的認識能を有していることを示してきた。二年目はさらに類似糖鎖配列を有するGM2やGM3を含む標的リポソームとの膜融合挙動の観察からレセプター分子のGM1(TF二糖構造)に対し優位な親和性を証明できた。さらにGM1に対するレセプター分子の認識過程を水晶発振マイクロバランス(QCM)測定により追跡し,分子認識挙動の定量的評価にも成功した。現在,QCM測定を通じてGM2やGM3のような異なる糖鎖を有する標的に対してのレセプターの結合能を評価している最中であるが,レセプターの標的親和性は膜融合挙動からの評価同様,GM1に対して優位であることが示唆されている。二年間の実績は分子論的には新奇な成果であり,学術論文に公表できるものと考える。さらに,再現性を慎重に評価することによりin vivoにも適用できるレセプターの開発への展開が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的として掲げた,設計・合成したレセプター分子のTF二糖構造に対する認識挙動の追跡に関してはリポソーム‐リポソーム間膜融合評価により系統的に評価されている。また,QCMを用いたリポソーム表層の分子認識過程の定量評価も進行中であり,薬物送達デバイス開発に期待が持てる段階にある。論文誌上発表が現時点でできていないことが問題であるが最終年度早々に必要なデータを取りまとめ,十分な再現性を確認したうえで,論文への投稿を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
分子認識過程の直接的評価としてQCMを導入したが,さらにNMRなどを用い,異なった観点からの直接的観察を実践する予定である。さらに最終年度は設計・合成したデバイス分子のin vivoでの利用を見据え,より複雑な条件下(種々の糖鎖が共存する系や塩濃度が高い系など)での評価を続ける予定である。
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Research Products
(1 results)