2012 Fiscal Year Research-status Report
磁場配向セラミックス創出のための結晶化学的磁気異方性マニピュレーション
Project/Area Number |
24550236
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
堀井 滋 高知工科大学, 工学部, 准教授 (80323533)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 磁気異方性 / 磁場配向 / 三軸結晶配向 |
Research Abstract |
磁場配向法は三軸結晶配向も実現できる組織制御法であり、第一年度である平成24年度では、様々な配位子場に存在する希土類イオンから生み出される磁化軸方向および磁気異方性の定量化について進めてきた。4配位をもつ層状酸硫化物、歪んだ6配位をもつ層状コバルト酸化物、8配位をもつ層状欠陥ペロブスカイト酸化物粉末をエポキシ樹脂中・10テスラの回転変調磁場下での配向効果から、正方晶系の4配位の場合にはREイオンの磁気異方性は一軸性であること、斜方晶系の6配位・8配位の場合には3軸異方性が存在することを明らかにした。なお、磁化軸の方向については、ほぼREイオンの2次のStevens因子だけで決定される。一方、希土類イオンの磁気異方性については、磁化法を用いずに定量化できることを明らかにした。当該年度では、磁気異方性が最も大きいイオンの一つであるErを含んだErBa2Cu4O8(Er124)に着目し、様々な磁場下で配向させた試料の配向度を磁場の関数として表すことで、配向度が大きく低下する境界磁場から各結晶軸間の磁気異方性が決定できる。合成法の確立が研究計画よりも早く実現し、前倒しで新規導入したボールミル装置で微細化しふるいで粒径を良く制御した粉末を利用すると、配向度から決定されるEr124の磁気異方性は磁化測定から決定した値とほぼ一致することがわかった。少なくともマイナス5乗程度の磁気異方性の定量化は磁化法を用いずに実現できることを示した。当該年度の成果は、磁場配向法に資する物質として、分子レベルの構造や導入するイオンの必要条件の一端を初めて明らかにしたものである。また、分子レベルのイオン間の結合長も磁気異方性の決定因子になっているようであり、構造制御による磁気異方性の制御も考慮する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一年度における課題として、 1.異なる配位子場に存在するREイオンの磁化軸の決定 2.REイオンの磁気異方性の定量化 を掲げた。1については、CN=4, ~6, 8を有する物質の合成および磁場配向を実現したが、一部の物質の合成については当初の計画以上の進展が得られた。またREイオン種に対する磁化軸の決定も網羅的に明らかにした。2については、磁気異方性定量化に重要な役割を果たす因子が粉末試料の平均粒径より粒径分布であることを明らかにし、また、CN=4におけるCe, Pr, Ndイオンの面内-面間磁気異方性およびCN=8におけるErイオンの三軸結晶磁気異方性を配向度の磁場依存性から定量化した。 よって、研究課題全般としては、おおむね順調に進展している、と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度以降では、第一年度で行っていた磁気異方性定量化について、他の希土類イオンでの検証を引き続き行うとともに、双晶・転位など結晶粒レベルで導入される欠陥を考慮した物質の磁気異方性発現手法の開発を行う。分子レベルでは斜方晶構造であっても、双晶や転位が導入されると複数のドメイン構造を形成し、結晶粒レベルでの磁気異方性の低下や消失につながってしまう。これは回転変調磁場による3軸磁場配向の実現に大きなハードルとなる。そこで、双晶構造を形成するため磁気科学的なプロセスの適用に大きな困難を伴う実用超伝導物質REBa2Cu3Oy (RE123)やせん断転位によるa軸方向がずれた4つのドメイン構造の存在が指摘されている[Ca2CoO3]0.62CoO2 (Ca349)に焦点を当て、ボールミルによる粉砕効果が与えるドメイン構造の不均化や低温合成法による双晶ドメイン間距離を制御したRE123の合成とドメイン不均化プロセスの融合プロセスから、通常の焼結粉末では消失・低減してしまう面内磁気異方性の発現手法を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度では、配向試料作製のための物質合成条件の確立が予定より早く進行したことや磁気異方性定量化に粒径制御の重要性が新たにわかったことなどから、研究費の前倒し申請(20万円)を利用して遊星ボールミル装置を購入した結果として残額が生じた。次年度は、ほぼ当初の予算に則って研究費を使用していく予定である。
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Research Products
(17 results)