2013 Fiscal Year Research-status Report
非対称交流電解による生体親和性を有する多孔質皮膜の生成
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24550241
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Research Institution | Kurume National College of Technology |
Principal Investigator |
田中 慎一 久留米工業高等専門学校, 材料工学科, 教授 (10372244)
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Keywords | チタン / 多孔質 / 交流電解 |
Research Abstract |
陽極酸化処理によってチタン表面に多孔質皮膜を形成する際に,陽極酸化前に予め水素を電気化学的に吸蔵させることによって,多孔質皮膜が生成する電解電圧が低下することを明らかにしてきた。この水素吸蔵,陽極酸化の2段階プロセスを短縮化するために,交流電解による多孔質皮膜の生成を検討した。 直流電解時は,チタン表面では,チタン酸化物皮膜の成長と副反応としての酸素発生反応が進行するが,予め水素を吸蔵させるとち密な酸化皮膜が生成するため,酸素発生が激しく進行する前に,生成した酸化皮膜に十分な電解電圧が印加され,酸化皮膜が絶縁破壊することによって,多孔質皮膜が生成すると同時に,チタン表面で進行するスパーク放電が抑制される。一方,硫酸水溶液中で白金を対極としてチタンを交流電解すると,チタン,および白金の両電極上で激しく水電解に起因する水素と酸素の気泡が発生する。基本的に気泡は絶縁多であるため,電極近傍の気泡層で絶縁破壊が進行し,スパーク放電が発生する。直流電解では,発生する気泡は酸素だけであるため,酸化物の絶縁破壊電圧以上の電圧が酸化皮膜に印加されるが,交流電解の場合は,チタン表面で発生した水素と酸素によってチタンが覆われるため,スパーク放電が低電圧で進行し,チタン表面に生成する酸化物に十分な電解電圧が印加されないため,結果として多孔質皮膜の形成は,進行しないことが明らかになった。多孔質皮膜が生成すると考えられる電圧を印加することは,スパーク放電が激しく進行するために電解できなくなる。従って,交流電解法による多孔質皮膜の生成は難しく,電極表面で進行するガス発生を抑制するか,電解液の撹拌による発生したガス層の速やかな除去が必要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の多孔質皮膜の生成機構をもとにして,今年度は直流電解法による水素吸蔵,陽極酸化の二段階プロセスの短縮化を目的として,交流電解法を検討した。その結果,初年度に推測した多孔質皮膜の生成機構は,正しいものと推測され,交流電解時に発生するガス層の除去が交流電解法のキーになることを見出すことができたため,「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
交流電解による多孔質皮膜の生成の障害は,チタン表面で発生するガス層の存在であるため,ガス層の除去方法を検討する。除去方法としては,電極の配置,撹拌方法などを検討すると同時に,水素発生反応を抑制する非対称交流電解法の適用を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
水晶振動子による吸蔵水槽量の見積もり実験を予定していたが,水素急増により水晶振動子上の電極の剥がれが進行するため,水素量を見積もることができないことが明らかとなり,予定していた水晶振動子を購入しなかったために残金が生じた。 非対称交流電解を実施するにあたり,容量の大きい電源を購入する予定。また,基板としてチタン以外の金属であるTa,Zrなどを購入することに使用する予定。また,試験片を作製する際の放電加工機のワイヤー購入費などに充てる予定。
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Research Products
(1 results)