2012 Fiscal Year Research-status Report
高分子マイクロゲル分散系の結晶化・ガラス化挙動の解明と巨大コロイド単結晶作製
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24550248
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
竹下 宏樹 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (80313568)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ゲル / 高分子マイクロゲル / コロイド結晶 / コロイドガラス / 光散乱 |
Research Abstract |
架橋密度一定で100~500nmの粒径を有するポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) (PolyNIPA)ゲルを沈殿重合法により調整し、その粒径の温度依存性を動的光散乱法により測定した。粒径は温度に依存して変化し、通常のpolyNIPAゲルと同様30-35 ℃付近に体積相転移温度を有した。 種々の濃度に調整したマイクロゲル分散液を40 ℃から20 ℃前後の所定温度へ温度ジャンプすると、ある温度・濃度領域においてコロイド結晶化に起因する回折光が観察された。紫外可視分光スペクトルの温度・時間依存性測定により、PolyNIPAマイクロゲル水分散系においてそのコロイド結晶化温度とガラス化温度を決定し相図を作成した。また、希薄系における粘度測定および静的光散乱法によるマイクロゲルの分子量測定に基づき、コロイド結晶化条件が体積分率のみに依存することを明らかにした。 相図に基づき、コロイド結晶サイズの冷却条件依存性を測定し、単純冷却でも数ミリメートルサイズのコロイド結晶が得られることが分かった。 紫外可視吸収により、様々な濃度温度条件におけるコロイド結晶化速度を測定した。結晶化速度は通常見られる釣鐘型の温度依存性を示した。また、結晶化度の時間依存性は過去に報告された剛体球分散系の微重力下におけるものと同様であった。これは、マイクロゲルの密度が溶媒とほぼ同等であることに起因する。 DLSにより拡散係数を評価したところ、低温ほど粒径が増大するにも関わらず、低温のコロイド結晶化温度以下においてむしろ拡散係数が大きくなった。高温で見られるマイクロゲル粒子の並進拡散に、集合体としての緩和モードが加わるためであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までは、試料合成と基礎的物性の評価に重点を置いており、研究遂行上支障となることは無かった。 また、本年度以降の研究遂行のために有効な知見が多数得られ、研究は概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に得られたコロイド結晶化についての理解をさらに深める。これまで行った測定において、成長速度の異なる2種類の結晶の存在を示唆する結果が得られている。剛体球分散系のコロイド結晶では、一般に2種類の結晶形が存在することが報告されており、本研究においても同様かもしれない。コロイド結晶からの回折光測定のための静的光散乱装置を構築し、結晶形の決定を行うとともにそれぞれの結晶形の成長速度の特徴を明らかにする。 ガラス化挙動についても詳細に検討する。この系は溶媒とマイクロゲルとの屈折率差が小さいため、固体コロイド系と比較して試料の白濁度が小さく多重散乱の影響を受けにくく、結晶化・ガラス化するような高濃度であってもDLSによる解析が可能である。これまで、流動状態から結晶・ガラス状態への転移過程において、動的構造関数の複雑な変化が観察されている。最近導入した長時間測定可能な光子相関計を用い、動的構造因子の温度・濃度依存性の特徴を明らかにする。。 上記、結晶化、ガラス化の基礎的特徴を見据えつつ、温度とグレインサイズの関係、結晶核生成速度とそこからの結晶成長速度の粒子充填率依存性をUV-Visスペクトルと光学顕微鏡観察により系統的に明らかにすることにより巨大単結晶作製の可能性を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
回折光観察のための静的光散乱装置構築のための光学部品(約200千円)と光源装置(約100千円)、コロイド結晶観察のための顕微鏡落射光源(約200千円)、温度制御装置(約150千円)が主たる購入備品となる。また、昨年度と同様、放射光X線散乱測定のための旅費が延10回分程度(約300千円)必要となる。さらに研究成果報告のための学会出張旅費(約150千円)を支出する予定である。 その他、合成試薬類やガラス器具類、また年度後半には巨大単結晶作製のための温度制御セルを試作・導入する予定である。
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Research Products
(4 results)