2013 Fiscal Year Research-status Report
ヘリウムイオン顕微鏡の二次電子信号評価シミュレーション
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24560029
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
大宅 薫 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (10108855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 卓也 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 技術専門職員 (00546335)
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Keywords | イオン顕微鏡 / 二次電子放出 / ヘリウムイオン / シミュレーション |
Research Abstract |
これまでに開発したイオン照射による固体表面の二次電子放出のシミュレーションコードを拡張し,ナノデバイスの段差構造を模した実評価シミュレーションや構成絶縁材料の帯電コントラストなど,実測定を想定したシミュレーションを行い,ヘリウムイオン顕微鏡の実用性能を評価した.ヘリウムイオン照射による固体表面の二次電子収率が電子ビームに比して大きく,入射角に敏感であることや,表面近傍でビームの広がりが小さいことなどから,ヘリウムイオン顕微鏡で大きな段差コントラストが得られることを示した.さらに,ヘリウムイオンビームの大きな侵入深さが照射された数百ナノメートル以下の絶縁薄膜の帯電を大きく抑制することなど,従来の走査電子顕微鏡やガリウムイオンを用いたイオン顕微鏡に対するヘリウムイオン顕微鏡の優位性を示した.また,ヘリウムイオンビームによる結晶材料の照射損傷や方位コントラストとその変化などを評価できるイオン・固体相互作用の分子動力学コードを開発した.さらに,シリコン基板上に作成した百ナノメートル程度の深さのラインパターンの段差コントラストの観察,数十~数百ナノメートルの厚さの酸化膜を顕微鏡内でイオン照射して帯電コントラストを観測することによって,ヘリウムイオン顕微鏡の実機評価も行った.数千個程度の僅かな照射量でも観察可能であることや,段差コントラストがビーム角度に敏感であることなど,これらの実験結果の解析を進め,シミュレーションモデルの検証および改良を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに,二次電子放出の基礎特性を評価するシミュレーションモデルの構築と,それを用いた基礎特性評価シミュレーションコードの開発を完了し,従来の走査電子顕微鏡やガリウムイオンを用いたイオン顕微鏡に対するヘリウムイオン顕微鏡の優位性を示した.また、ヘリウムイオン照射時のイオン注入や原子混合による材料の二次電子放出の動的変化を評価するダイナミックコードを開発、原子レベルでの材料変化を計算する分子動力学コードの開発も順調に進み,これを用いて結晶方位コントラストについての評価も可能となった.一方、デバイス実評価のための絶縁薄膜の帯電や段差コントラストの評価について,デルフト工科大学において実機実験を実施し,数千個程度の僅かな照射量でも観察可能であることや,段差コントラストがビーム角度に敏感であることなど,現在,実験結果との比較を進めながら,シミュレーションモデルの改良および評価コードの高性能化を進めている.これら当初計画以上の進展もあり、本計画はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
デルフト工科大学との共同研究を更に推進し,デバイスの実評価で問題となる絶縁薄膜の帯電やナノ構造解析が可能なイオン顕微鏡の二次電子信号評価シミュレーションシステムの評価精度向上を図る.また,ネオンイオンビームを用いたイオン顕微鏡など,他イオン種によるイオン顕微鏡の開発も進んでおり,開発したヘリウムイオンによる二次電子放出の基礎特性評価シミュレーションコードと実デバイス形状の評価システムを拡張して,水素イオンも含め,それらイオンによる二次電子放出の基礎特性と実評価における分解能や各種コントラストの比較を行う.これによって,イオン顕微鏡の実機開発に指針を供する.さらに,開発したシミュレーションコードの公開方法等を検討し,準備を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度投稿した論文が次年度早々に学術誌へ掲載されることが決まっており,その掲載料等の必要額を次年度に繰り越した. 次年度掲載予定の論文掲載料も含めて,最終年度である次年度では,主として国内外研究機関との共同研究と国際会議での成果発表のための旅費に使用する.物品費としては,結晶材料のイオン照射損傷や方位コントラストの評価に向けて,分子構造模型などを購入する予定である.
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Research Products
(9 results)