2012 Fiscal Year Research-status Report
テルル化カドミウム-金属界面準位制御による高分解能放射線検出素子の開発
Project/Area Number |
24560061
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山里 将朗 琉球大学, 工学部, 教授 (10322299)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射線検出素子 |
Research Abstract |
Al, Ti, Niを電極材料として作製したCdTeショットキーダイオード素子について,その障壁高さがほとんど変わらないことをこれまで明らかにしている.このことから,電極-CdTe界面において,界面準位が存在することによりフェルミ準位が固定されていると予想した.そのため今年度は,より仕事関数の低いMg(φ=3.7 eV)を用いて,素子を作製したが,障壁高さが0.57eVとなり,理論値の2.1eVより大幅に低い値となった.すなわち,CdTeの電極材料においては,仕事関数による差が見られず,フェルミ準位がピニングされていることの予想を裏付けていると考えている.そこで,表面,界面状態の解析を行うために,電流同時AFMを用いて,最表面の形状及び電気的特性の分析を行った.表面状態による違いを見るために,as-grown表面と,硫化アンモニウムによる硫黄処理表面の比較を行った.この硫黄処理は,これまでの研究において,放射線検出特性が時間と共に劣化するポラリゼーション現象を最も抑制できた処理である.AFMによるI-V特性測定において,as-grwon表面では,観測表面に対して裏面を正電圧にしたときには電流が流れ,負電圧としたときには電流が流れにくく,明確な整流性が見られた.これは,CdTe表面とRhコートカンチレバー間にショットキーライクな接合が形成されたためと考えられる.一方,硫黄処理を施した表面では,印加電圧の向きにかかわらず両方向で電流が流れる事が観測された.これは表面処理により,Te-rich層が除去されると共に,表面準位も補償され,CdTe-金属コンタクトが,CdTe表面の影響を受けにくくなったためと考えている.ただし,複数の測定箇所で同様の計測を行うと,計測箇所によりばらつきが見られた.このことは表面処理が,必ずしも一様に行われていないことを示していると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度では,Mgを用いてMg/CdTe/Ptショットキーダイオードを作製した結果,理論値より障壁高さが低くなった.Al, Tiを用いた場合も障壁高さは0.7~0.8 eVとなり,理論値の約1.5 eVよりも低くなっている.このことから,CdTe-電極界面準位によるフェルミ準位のピニングにより,ショットキーコンタクトが電極材料の影響を受けにくくなっているという予想が裏付けられた.またこれまで,XPS及びフォトルミネッセンスによりCdTe表面の分析を行い,欠陥準位や硫黄処理後の表面状態を解析してきたが,これらは表面全体を分析するものであり,局所的な情報は得られていなかった.そこで,電流同時XPSにより,局所的な電流-電圧特性を計測することで,表面状態の解析を行った.その結果,as-grown表面と硫化アンモニウムによる表面では,電流-電圧特性に明瞭な違いが見られることを明らかにした.また,XPSによる分析では,硫黄処理後の表面にCdS層が形成されていることが分かったが,今回,電流同時AFMによる計測を行うことで,CdS層が必ずしも一様に形成されていないために,場所によって電流-電圧特性にばらつきが生じていることが示唆される結果が得られた.当初の計画では24年度に,各種金属(Al, Ti, Ni, Mg)を用いてショットキーダイオードを作製し,その電気的特性及び障壁高さの評価を行う予定であったが,それらのデータについては全て計測することができた.また,放射線検出特性についても同様に素子作製及び計測評価を行っており,当初の予定はクリアしたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで,硫黄処理を行った表面に電極を付けた場合,電気的特性及び放射線検出特性が大きく改善される結果を得ていたが,ショットキー障壁高さはほとんど変化していなかった.今回の分析結果より,硫黄処理後の表面が一様でないために,硫黄処理が十分に行われていない箇所の影響を受けて障壁高さが低くなったと考えている.そこで,当初の予定通りH25年度においては,硫黄処理だけではなく,硫黄処理と熱処理を組み合わせた処理やプラズマ処理による表面状態の解析を行う.硫黄処理においては,処理時間を長くしたり,硫化アンモニウムの濃度を高くすれば,表面が一様なCdS層で覆われると考えられるが,これまで表面に形成されるCdS層が厚くなると電気的特性及び放射線検出特性が劣化することが分かっている.従って,素子の性能向上には,薄いCdS層を表面全体に一様に形成させる必要があると考えており,硫黄処理,プラズマ処理,熱処理を組み合わせた時の状態を調べ,CdS層の形成機構や表面準位の補償について詳しく分析を行う予定である.さらに,電圧印加後の電流の時間変化を調べる予定である.これは,素子の電気的特性の時間依存性を計測することで,時間経過と共に放射線検出特性が劣化するポラリゼーション現象と電気的特性との関連性を調べるものである.とくに,リーク電流の時間依存性との関連を明らかにしたいと考えており,現在,そのための計測システムを開発している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品として,真空機器部品を30万円程度,基板及び実験材料を30万円,カンチレバー及び分析料30万円,実験用ガスを10万円,薬品類を10万円,旅費30万円(国内2回),論文印刷費85,000円を予定している.
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Research Products
(1 results)