2014 Fiscal Year Research-status Report
ディスクEMSシステムによる低粘性スペクトロスコピー法の開発
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24560064
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
細田 真妃子 東京電機大学, 理工学部, 講師 (40366406)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 粘性 / 物理計測 / スペクトロスコピー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、最近申請者らが開発したディスクEMS(Electro-Magnetically Spinning)粘性測定装置について、特に希薄水溶液程度の低粘性測定における高性能化を実現し、汎用のレオロジー計測手法として確立することを目的とする。昨年度までの成果により従来はレオロジー計測の対象範囲外であった10mPa•s以下の粘性領域における流体の力学物性計測を可能にした。本年度はにこれを用いて、たんぱく質や脂質・高分子などの溶液中での一分子状態を調べる新たな研究手法である「低粘性スペクトロスコピー法」の展開を図る。本年度は完成した低粘性スペクトル測定システムを界面活性剤水溶液のレオロジー計測に適用し、分子形態や会合状態の変化をレオロジーの観点から調べ、本システムの展開可能な領域を探索した。 界面活性剤分子は水溶液中で、温度やpHなどの外的環境に応じてその分子形態を変化させる。この構造に関する情報は生体膜の機能と運動を解明する上で極めて重要である。これまでにもレオロジー測定により界面活性剤水溶液の相変化を研究した例はあるが、これは濃度の高い領域での形態変化に伴う分子どうしの「絡み合い」を観察したものであり、溶液中のパーコレーションの形成過程という2次的な情報をとらえるものである。本年度は絡み合いの生じない希薄系において、粘性の高精度測定から界面活性剤のミセル形成過程を直接観察した。この過程において、表面に吸着した分子膜が示す2次元の粘弾性を検出する新たな膜物性測定の可能性を見出した。粘性測定により分子膜の形態変化が検出できれば、レオロジーを汎用の分子構造観察手段として採用することが可能になり、その波及効果は極めて大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
希薄水溶液系の低粘性レオロジー測定については計測システムはすでに完成し、これにより精密な低粘性物質の粘性スペクトル測定が可能になっている。これを用いて様々な界面活性剤水溶液のレオロジー計測を行ったところミセルの形成に伴う曇点の検出が可能になったが、さらに研究実施前には予想していなかった水溶液表面への分子吸着に伴う2次元レオロジー検出の可能性を見出した。このため従来の研究計画を拡張して、レオロジー計測による分子膜の凝集状態の観察にも取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き2次元粘弾性を計測するための装置の高性能化を図る。液体表面の形状変化により、バルク粘性と表面粘性のそれぞれの抵抗トルクの寄与を変化させることができるため、特殊形状の試料セルを作製する。さらにプローブの微小な回転速度の差を検出するために、オプティカルレバーを用いた角度検出システムを構築する。これにより分子膜の凝集状態と表面粘性との相関を調べ、従来の表面吸着量測定の結果と比較する。さらにこれと並行して、バルク粘性の同位体効果を検出するための測定を遂行する。
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Causes of Carryover |
平成26年度7月、界面活性剤の曇天検出のための実験において、水溶液の表面に吸着した分子膜によりプローブの回転速度に偏差が生じることが明らかとなった。これを精密に計測すれば、これまで測定不可能であった分子吸着膜の2次元粘弾性を検出できる可能性が見出されたために、これを検証する必要が生じた。延長期間については2次元粘弾性計測の原理実証実験に3ヶ月、その結果の解析と理論的検証に3ヶ月が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り延べる予定の粘性の同位体効果の精密計測実験に用いる重水など同位体試料の購入に40万円を、さらに微小なプローブの回転速度の変化を測定するためのオプティカルレバーシステムの光源としての半導体レーザーの購入に5万円を使用する。さらに粘弾性解析のためのレーザースペックルパターンの解析などのデータ処理のため、実験補助者への謝金として5万円を使用する。また国内外研究者と討論を行うための旅費とする。
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