2013 Fiscal Year Research-status Report
水晶振動子型水素漏洩検知器の屋外使用のための温度・湿度補正法に関する研究
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24560070
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
鈴木 淳 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (30344154)
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Keywords | 水素エネルギー / センサ / 燃料電池 |
Research Abstract |
水晶振動子センサーベースライン値への温度校正法として水晶振動子センサーとして用いられる水晶振動子とは別の水晶振動子を用いて温度を同時測定する方法を試みた。これら2つの水晶振動子を持つ測定器には水晶振動子センサーベースライン値の温度依存性の結果が入力されており、得られた温度の情報から温度変化分を求めることができ、この分を実際の出力から相殺することにより温度校正する。この測定器を真空装置に取り付け、大気圧の窒素を封入した後測定器周辺の温度を変えて測定した。この温度補正を行うことにより以前は湿度によるベースライン値の差異が水素濃度換算で0.6vol.%であったところ、これを0.2 vol.%まで低減することができた。 また水晶振動子センサーベースライン値への湿度の影響について調べるため、温度一定の条件で湿度を変化させるとベースライン値は湿度とともに減少し、粘性及び分子量の相対的な減少と一致した。出力の湿度依存性を三次関数で近似し、これにより湿度による変化分を相殺することにより湿度による変動を水素濃度換算で1vol.%以下に抑制した。 さらに水晶振動子センサーベースライン値への湿度の影響を排除するため、湿度成分だけを吸着、除外するガスフィルターを用いることにより湿度校正を行う方法について検討した。湿度が0~100 RH%と変化した際のベースライン値の変化はガスフィルターなしの場合と比較して小さく、圧力校正しないベースライン値でもその変化は最大0.5%であった。したがってこのガスフィルターを用いることにより水晶振動子センサーベースライン値への湿度の影響は水素濃度換算で1%以下まで抑制できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は水晶振動子センサーベースライン値へ与える湿度の影響を明らかにすること及びその影響を抑制することを目的とした。以上の目的に対し、まず湿度の影響について温度一定条件下で湿度を0~100RH%の範囲で変化させた際のベースライン値の変化を明らかにすることができた。具体的には湿度の上昇とともにベースライン値は減少し、湿度が0から100RH%へ変化する際に水素濃度換算で最大8.0vol.%変化することを明らかにした。 さらに以上の湿度の影響を抑制する方法としてベースライン値の湿度依存性を線形関数で近似し、これから湿度による変化を相殺することにより湿度の影響を校正することを試みた。その結果、湿度の影響を水素濃度換算で1vol.%以下に抑制することに成功した。さらに湿度の影響を抑制するため水晶振動子センサーの測定子である水晶振動子に湿度成分を除去する効果のある二種類のガスフィルターを装着することにより湿度の影響を抑制することを検討した。その結果、中空糸を用いたフィルター及びホウケイ酸ガラスを成分とするフィルターのいずれの場合においても装着しない場合に比べて湿度の影響を抑制することができた。中空糸フィルターの場合は温度10~40℃の範囲で最大0.6vol.%、ホウケイ酸ガラスの場合は10~30℃の範囲で最大1.2vol.%まで抑制することができた。以上は当初目標である水素濃度換算で0.1vol.%以下には達していないが水素漏洩検知として最低必要な1vol.%を検知するためには十分な安定性であると言える。以上により「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進に関しては当初の実施計画と比較して大きな変更はない。 平成26年度には水晶振動子センサーベースライン値の温湿度依存性の評価に関する研究を実施する。平成24年度及び25年度の成果で得られた水晶振動子センサーベースライン値の温度及び湿度校正方法を応用した状態で、温度及び湿度を同時に変えた際の水晶振動子センサーのベースライン値の変化を評価する。平成24、25年度に実施した研究によって外気温湿度(0-100%、10~40℃)中の温度及び湿度のいずれかが一定の時の温度及び湿度の影響は明らかになるが、実際の屋外使用においては温度及び湿度のそれぞれの条件が同時に変化するため、これらの条件を同時に変化させた時の水晶振動子センサーベースライン値への影響を明らかにする。 平成27年度には温度及び湿度補正法を施した水晶振動子センサーを屋外に設置し、1~2年の長時間にわたり水晶振動子センサーのベースライン値を温度及び湿度と共に記録する。同時に隔膜圧力計により絶対圧力(大気圧)を測定し、水晶振動子センサーベースライン値から圧力の影響を排除する。この圧力校正された水晶振動子センサーベースライン値が外気の温湿度の影響を受けず、その変化がいずれの時点においても水素濃度換算で0.1%以下であることを確認する。 平成28年度は平成27年度に引き続き屋外長期使用における水晶振動子センサーベースライン値を評価する。一日及び暦年におけつ温度と湿度の変化の特徴を把握しつつ、これに対応して水晶振動子センサーベースライン値がどのように変化するか調べる。ベースライン値の変化が水素濃度換算で1vol%以上でかなり大きくなる場合には温度及び湿度の影響低減について再検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度の平成24年度に調達した水晶振動子センサーの価格が想定より200,000円低下していたこと、平成25年度の「第53回真空に関する連合講演会」開催が職場近隣開催となった事を含め旅費使用額が予定より115,000円低下したこと、装置の故障がなく装置保守費計200,000円を行使していないこと、等による。 平成28年度のオプションとして、温度及び湿度を変えた条件での水晶振動子センサーの水素漏洩検知及び水素濃度計測の実証試験を行う計画がある。計画ではこの研究を実施するための経費は予定していないため、次年度使用額は主にこれに充てることとする。 この研究は水晶振動子センサーに水素ガスを導入して水素漏洩検知できる状態において温度及び湿度を変えられる装置を構築し、実際に水素漏洩検知に対する温度および湿度の影響について調べるものである。使用する装置はステンレス配管により構築し、大気、水素及び水分を効率良く、かつ安全に混合するため、気体‐液体混合器を用いる。次年度使用額は主に平成28年度までに以上の装置を構築するための経費として使用する。
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