2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560091
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
下川 智嗣 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (40361977)
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Keywords | 格子欠陥 / 計算力学 / 原子シミュレーション / 転位 / 粒界 |
Research Abstract |
粒界領域の局所的な塑性変形による応力緩和を,分子動力学法を用いて評価した.解析対象はアルミニウムとし,転位の自己エネルギーに対する粒界の影響を検討するために,刃状転位対を含む多結晶体モデルを様々な温度で緩和計算をし,転位の自己エネルギーを計算した.多結晶モデルでは,緩和温度の上昇によって転位の自己エネルギーは減少する傾向が確認でき,粒界には格子転位の力学場に対して,その応力場を解放するような効果があることが理解できた.このとき,粒界は隣接する粒間の相対変位を生じる.これにより,粒界領域のエネルギーが上昇することもあるが,粒内の転位の力学場を解放することが可能となるので,結果的に系全体のエネルギーは減少することが可能である.これらの現象により,転位の自己エネルギーは粒径依存性を持つ可能性が示された. また,伸線加工されたパーライト鋼に代表されるような,脆性相と延性相の積層複合構造体の延性特性に対する異相界面の役割を,原子モデルを用いて検討した.ここでは一般的で単純な2 次元三角形格子を採用した.まず,延性,もしくは脆性を示す仮想材料の原子間ポテンシャルを設計した.次に,異相界面の結合力を制御可能なパラメーターを導入し,転位が異相界面を通過する現象に対する異相界面結合力の関係を検討した.その結果,異相界面の結合力が小さくなるほど,転位通過が困難になることが理解できた.最後に,積層構造モデルの強度と延性の関係に対する異相界面の役割を調査した.積層構造体が高強度・高延性を実現させるために異相界面に必要な2つの条件が得られた.一つ目の条件は,脆性相の安定な塑性変形を可能にするために必要な異相界面の十分な転位供給能力であり,二つ目の条件は,転位放出後に異相界面に生じる幾何学的なミスフィットを緩和できる能力であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の課題であった格子転位の力学場に対する粒界の局所塑性変形による影響を,原子シミュレーションによりその影響を明らかにできたため,順調に進んでいると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究により,粒界は格子転位の力学場に対して強く影響を与えるポテンシャルを有すること,また,異相界面の結合力が転位の通過現象に対して強く影響を与えることが理解できた.これらのことは,ナノ組織材料は界面を多く含むため,通常の連続体力学の枠組では表現できない界面を介した塑性現象が,それらの材料の特異な力学特性に強く影響を与えていることが理解できる.そこで,平成26年度は,昨年度の積層組織モデルをひずみ一定,応力一定条件下で負荷を与え,そのような力学環境下において格子欠陥の力学場が異相界面や粒界にどのように影響を受けているかを検討する.さらに,そのことがナノ組織材料の力学特性(強度や延性)に与える影響を調査する.また,積層組織以外の形態を有する2相組織複合材料についても検討を加える.
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