2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560133
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
關谷 克彦 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80226662)
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Keywords | 切削加工 / 凝着 / 構成刃先 |
Research Abstract |
本研究は,凝着による切削加工仕上げ面劣化メカニズムおよび工具寿命短命化のメカニズムを明らかにすることを目的としている.これまでに凝着物の安定性を議論した研究報告例は少なく,評価方法も確立されていない.そこで,凝着現象の一種である構成刃先が生じた場合に現れる仕上げ面断面曲線の不規則な乱れに着目し,断面曲線の形状と工具幾何形状を比較することにより,凝着物の規模と安定性を評価する手法を想起した.初年度である平成24年は本評価法を実施する上で必要となるデータ処理プログラムを作成するとともに,チタン合金やニッケル合金を中心に,かつて研究代表者のグループが提案した切削抵抗動的成分による凝着性評価と本研究による凝着物の安定性評価とを比較検討した.これに引き続き平成25年度は,典型的な凝着が生じるといわれているオーステナイト系ステンレス鋼を切削加工した場合における凝着物の挙動について調査した.実験に際して,従来凝着が生じ難く,特に高切削速度域では凝着が生じないため光沢のある仕上げ面が得られるとされているサーメット工具を用い,凝着の生じない実験例を取得するべく実施した.しかしながら,一般的な説と異なり,高切削速度域においてすら,「薄いながらも凝着層が工具切刃稜線上に存在する」としか説明しようのない断面曲線が得られた.また,実験では光沢のある仕上げ面が得られており,光沢の有無と凝着の生成自体には関係が無いことが実験的に明らかになった.また,刃先稜線上の凝着物は極めて狭い範囲で成長と脱落を繰り返しており,炭素鋼切削時に生じる構成刃先について従来報告されているような凝着物全体の大規模な脱落は生じなかった.このように,本年度得られた結果は従来の刃先近傍で生じていると考えられている一般的なイメージと異なった現象が生じていると判断せざるを得ないものであった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度のやや遅れた状況を取り戻す予定であった.しかしながら,従来凝着が生じないと考えられていた切削条件下で実験を実施したところ,薄いながらも凝着物が切刃稜線に存在するとしか考えられない仕上げ面断面曲線が得られてしまった.このため,実験方法に誤りがなかったか,追試験を何度か行い確かめる必要が生じた.さらに,この凝着物の厚さ,実験上避けられない誤差によるものではないことを確認する必要も生じ,工具形状誤差の把握や切削抵抗により生じる工具姿勢の幾何形状誤差を見積もる等の検討が増えてしまった.また,切刃稜線に施されたホーニングの影響等追加で確認する事項が増加してしまった. これらのことで,本年度は「凝着の有無と仕上げ面の光沢とは無関係である」ことや「切刃稜線上には凝着が常に生じていると考えられる.」といった従来の説とは全く異なった新たな知見が得られたものの,当初予定していた断続加工における切削厚さの変化が凝着の安定性に与える影響を検討するための実験までは実施できなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
まず昨年度実施できなかった,断続加工における切削厚さの変化が凝着の安定性に与える影響を検討する.実験に必要な4つ爪チャックは別の経費にて入手済みであり,オーステナイト系ステンレス鋼の断続加工用試験片は平成25年度に製作済みである.通例の断続旋削実験は平成25年度に実施済みである. 本年度が最終年度となるため,24年度,25年度に得られた知見に基づいて,これまでに実施したニッケル基合金やチタン合金について補足,追加実験を行い,まとめを行う.
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Research Products
(3 results)