Outline of Annual Research Achievements |
近年,被膜の開発は,従来の(Ti,Al)系被膜から,(Al,Cr)系被膜の開発に重点がおかれている.これは,(Al,Cr)系被膜は,高硬度,高酸化温度という優れた被膜特性を有しているため,高温下でも安定して高硬度を維持することができるためである.しかしながら,Cr系被膜は耐密着性にやや劣る. そこで,研究代表者は,超硬合金母材の主成分であるWCに着目し,(Al,Cr)系被膜にWを加えることで密着力を高めることが可能であると考え,(Al,Cr)系ターゲットにタングステン(W)を加えた合金をターゲットに使用した新しいタイプの被膜を開発することを目的とした. そのために,(1)2種類のAl-Cr-W合金ターゲットを試作し,6種類の(Al,Cr,W)系被膜を超硬合金母材に形成させた.(2)(Al,Cr,W)系被膜の被膜特性の評価を行った.(3)(Al,Cr,W)系被膜をコーティングした超硬インサートチップで金型鋼SKD11(60HRC),および焼結焼入れ鋼(339HBS)の切削を行い,工具摩耗を調べた. 得られた主な結果は,次の通りであった. (1)(Al60,Cr25,W15)(C,N),および (Al64,Cr28,W8)(C,N)の被膜硬度は,それぞれ3080(HV0.25N),および3050(HV0.25N)で,(Al,Cr)Nの2760(HV0.25N),(Ti,Al)Nの2710(HV0.25N)より高硬度であった.(2)(Al60,Cr25,W15)(C,N),および (Al64,Cr28,W8)(C,N)被膜の密着強度は,いずれも130N以上で,(Al,Cr)Nの77N,(Ti,Al)Nの73Nより高密着性であった.(3)金型鋼,および焼結焼入れ鋼の切削でも,(Al,Cr,W)系被膜は,(Al,Cr)Nあるいは(Ti,Al)Nに比べ同等以上の耐摩耗性を示した.
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