2012 Fiscal Year Research-status Report
フラクタル構造体によって発生する乱流の減衰およびエネルギー移動機構の実験的解明
Project/Area Number |
24560190
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
牛島 達夫 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50314076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 博貴 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10626873)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 乱流 / フラクタル / 熱線流速計 |
Research Abstract |
研究の目的を達成するために,大型風洞(断面80cm×80cm全長3m)と小型風洞(断面13cm×13cm全長2m)の上流部にフラクタル構造体であるシエルピンスキ四面体を設置して,乱流計測を行い,その特性を調べた。 フラクタル構造体は,内部に自己相似な構造をもつ物体であり,その多重度(段数)が違うものを3つ用意し,流れ方向成分のみの下流方向への統計的性質の変化を小型風洞で測定し,多重度が異なっても,上流のレイノルズ数およびフラクタル構造体の最大および最小構造の長さを適切に組み合わせると結果を普遍的にまとめられることがわかった.下流方向の乱流特性の変化については,現在,論文を英文誌に投稿中である. 大型風洞に設置するフラクタル構造体については,シエルピンスキー四面体をそのまま風洞に設置すると,流れ場を測定する空間を十分に確保できないため,予定した大きさを4分の1にしたものを4つ組み合わせたものを作成した.想定した自然界の流れの一つである林では樹木は重なりあって植生しており,実際の問題とも合致している.下流断面の流速をI型およびX型熱線流速計で測定し,4次までの乱流統計量を明らかにした.低流速(10m/s)で,高レイノルズ数(テイラー長さ基準で350)の乱流が生成できることがわかった。断面中心部では,フラクタルの複雑な構造体にもかかわらず,等方に近い乱流が生成されることがわかった。この結果については,次年度の国際会議で発表予定である。 スケール間の非線形エネルギー輸送を調べるために,新しく提案した8線式熱線プローブの試作を行った。プローブの較正を行うための風洞を設計し,完成した。 以上,当初の計画はほぼ達成された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,3年間で,フラクタル構造体(シエルピンスキー四面体)から生じる乱流の特性(特に速度勾配全成分の統計量) を風洞実験によって調査する予定であり,その1年目では,(1)フラクタル構造体の設計・製作と基本流れの調査,(2)8線式熱線プローブ製作用治具の製作とプローブの試作,(3)較正曲線と信号速度変換プログラムの作成を計画した。(1)については,大型風洞に設置する2種類の風洞設計製作し,小型風洞のものと合わせ,断面での乱流特性の分布や,下流方向の変化について明らかにすることができた。(2)については,熱線プローブ製作のための治具を製作し,予定の8線式プローブの試作を行ったが,仕様に見合ったものであるかは未検証である。3次元のあらゆる方向からの流れに対して,較正できる風洞の設計製作を行った。(3)については,8線式プローブの基となる3線式プローブの熱線出力の角度特性について,資料収集したが,較正曲線と信号変換プログラムを完成するまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の2年目は,標準格子乱流および円柱後流乱流での8線式プローブ動作確認を行う予定である。この目的のために,較正用風洞内で,プローブをピッチ角およびヨー角を自由に変更固定できる移動装置の設計製作を年度の前半で行う.同時に,昨年完成できなかった較正曲線および信号‐速度変換プログラムを完成する.並行して,昨年測定したシエルピンスキー四面体の基本流れについて,再現性を確認する. 8線式プローブの較正は,非乱流の状態で行なわれるため,4 組の速度ベクトルについては,較正曲線から速度を見積もれるが,速度勾配については不明である.そこで,速度分布や乱流特性に特徴があり,数値計算の結果が報告されている円柱後流での測定を行い,速度勾配の測定の信頼性の検証を行なう.続いて,格子乱流では,他研究者の12 線式プローブでの実験結果が報告されているので,測定結果を比較し,本速度勾配測定用8線プローブの妥当性を検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
約24万円の繰越は,8線式熱線プローブの較正用の移動装置に用いるトラバースの選定に手間取ったためである.これについては既に確定しており,発注済である.その他は,当初の計画に従って,研究を実施する予定である.
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