2012 Fiscal Year Research-status Report
浮力による流れの不安定現象の解明とCVD製膜問題への展開
Project/Area Number |
24560228
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
北村 健三 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20126931)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 強制対流 / 自然対流 / 伝熱 / 流れの不安定 / 流れの可視化 / CVD / 縦渦 / はく離 |
Research Abstract |
平成24年度は、バレル型CVD炉を模擬した体系、すなわち鉛直下方に一様な流速で流れる空気の強制対流主流中に、等熱流束加熱されたくさびを水平上向きに設置した体系を対象に、くさびまわりの流れの可視化および局所熱伝達率の測定を行った。実験に用いたくさびは辺長d=50mm、奥行き300mmの2次元くさびであり、くさび角θを180度(水平上向き平板)から0度(垂直平板)の範囲で10段階変化させた。まず、強制対流主流速を一定に保ち、くさびの熱流束を0(非加熱)から順次増加させていった場合について、くさび面上の流れを煙を用いて可視化してみた。その結果、くさび角θ=180°~135°のくさび面上では、浮力がある程度以上強くなると、流れ方向に軸を有する縦渦が発生することを見い出した。一方、くさび角θ=120°~0°のくさびでは、浮力がある程度以上強くなると、くさび面に沿う強制対流層流境界層がくさび面からはく離し、はく離泡内にはくさび面に沿って上昇する逆流が生じている様子が観察された。そこで、これら縦渦およびはく離の発生条件を流れの可視化結果を基に無次元パラメータを用いて整理してみた。その結果、くさびの辺長を代表長さとするGr*と強制対流主流速を代表速度とするレイノルズ数Reの2.5乗との比、Gr*/Re2.5、があるしきい値を越えると、上述した縦渦およびはく離が発生することが分かった。つぎに、この結果を参考にして、くさび面の局所熱伝達率を測定してみた。その結果、θ=180°~135°のくさびでは、上述した縦渦の発生に伴って熱伝達率が強制対流くさび流れの熱伝達率よりも高くなること、一方、θ=120°~0°のくさびでは、境界層がはく離に伴って、熱伝達率が強制対流くさび流れの熱伝達率よりも低くなることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱CVD法により基板上に均一な薄膜を形成するには、浮力による流れの不安定現象について理解することが必要不可欠である。本研究は、水平型およびバレル型CVD炉でみられる体系、すなわち水平あるいは鉛直方向に一様な流速で流れる強制対流中に、加熱面を流れに対して傾斜させて設置した体系を対象に、浮力によって加熱面上の流れが不安定となるメカニズムおよび条件を流れの可視化を通じて探り、この流れの不安定が加熱面の局所伝熱特性に及ぼす影響を実験的に調べることを目的としている。この目的のうち、本年度は後者のバレル型CVD炉で見られる体系、すなわち鉛直下方に一様な流速で流れる空気の強制対流主流中に、等熱流束加熱されたくさびを水平上向きに設置した体系を対象に、くさびまわりの流れの可視化および局所熱伝達率の測定を行った。その結果、くさび角の大小により、縦渦の発生および境界層のはく離というメカニズムの異なる2つの流れの不安定現象が存在することを見い出すと共に、この不安定現象により、くさび面からの伝熱が促進あるいは劣化することを初めて明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、水平型CVD炉を模擬した体系、すなわち水平方向に一様な流速で流れる強制対流中に等熱流束加熱された2次元くさびを、尖端を流れに直交して設置した体系について、可視化および伝熱実験を試みる。とくにくさび角θを0°(水平平板)から30°の範囲で変化させた場合を中心に検討する。この体系では、くさびの上側傾斜面では、浮力が流れの向きと同一方向に作用する並行流共存対流が、また、くさびの下側傾斜面では、浮力が流れと逆向きに作用する対向流共存対流が実現される。このとき、浮力がある程度以上強くなると、上向き傾斜面上には縦渦が、また、下向き傾斜面上には強制対流境界層のはく離が発生すると予想しているが、果たして予想通りに縦渦やはく離が発生するか、また、発生するとすれば、どのような条件でこれらの流れの不安定が生じるか、また、くさびからの伝熱にどのような影響を及ぼすか、興味の持たれる問題である。そこで、これらを煙を用いた流れの可視化およびくさびまわりの局所熱伝達率の測定により明らかにする予定である。さらに、平成26年度は、これらの空気の実験結果を無次元パラメータを用いて整理することにより、流動・伝熱特性を支配するパラメータを明らかにすると共に、CVD炉内における流れの安定限界および均一な製膜を可能とする炉運転条件を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、上述したように、水平方向に一様な流速で流れる空気の強制対流中にくさびを設置した体系について実験を行う。この空気の強制対流を実現するに当たって、新たに横置型低速風洞を設計・製作する。この風洞は本研究室で自作する予定であるが、このために加工費およびステンレス、アルミ、アクリル、木材などの材料やアングル材などの消耗品費を計上する。また、くさびまわりの流れの可視化を行うに当たって、キセノンランプを光源とするスリット光照射装置を購入する予定である。さらに、伝熱実験を行うに当たって、多点の熱電対出力を記録・保存するデータロガーを購入する計画である。その他、研究成果発表用の旅費、論文掲載費等に研究費を充当する予定である。
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