2013 Fiscal Year Research-status Report
パルスパワーによるハイブリッドナノカーボンの創製と固体高分子型燃料電池への応用
Project/Area Number |
24560355
|
Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
今坂 公宣 九州産業大学, 工学部, 准教授 (40264072)
|
Keywords | パルスパワー / 水溶性ナノカーボン / 固体高分子型燃料電池 / 表面改質 / 膜電極接合体 |
Research Abstract |
平成25年度は、固体高分子型燃料電池(PEFC)で重要となる膜電極接合体(MEA)の電極材料に多層CNTを用いて再現性のよい作製方法についての検討および出力特性について検討した。得られた主な成果を以下に示す。 1 MEA作製法として(1)転写法と(2)電極塗布法を試みた。両者とも白金担持CNTを調整するための固体高分子材料として濃度の異なるナフィオン溶液(20%と5%)を用いて検討した。(1)転写法:作製したMEAを走査型電子顕微鏡(SEM)およびX線光電子分光分析装置(XPS)で表面分析した結果、白金担持CNTが溶液中に埋もれて表面に存在する割合が極めて少なく、ナフィオン膜との間に隙間ができていることがわかった。(2)電極塗布法:SEMおよびXPSで表面分析した結果、カーボンペーパーの表面に白金担持CNTが分散したナフィオン膜との隙間もほとんどないMEAが作製できた。PEFCとしての出力および再現性も向上した。 2 大気中パルスパワー放電により多層CNTの表面改質を行った。フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)およびXPSによる表面分析の結果、多層CNTの表面にカルボキシレートイオン(-COO-)が導入されたことがわかった。これは大気中パルスパワー放電により生成したオゾンによる多層CNTの表面の酸化によるものである。また、放電時間の増加とともにカルボキシレートイオンの導入量も増加した。カルボキシレートイオンは、親水性を呈示するため、ナフィオン溶液中に白金および多層CNTを懸濁して分散させる際に、均一分散が可能となり、より均一性の高いMEAを作製できると考えられる。 3 表面改質した多層CNTを用いてMEAを作製した。その結果、水素極に多層CNT、酸素極に表面改質なしの多層CNTを用いた場合に、PEFCの出力が向上できることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するために、平成25年度は以下の研究計画に基づいて研究を遂行した。 【固体高分子型燃料電池の動作特性における水溶性ナノカーボンの効果】 安定した出力が得られるFEPCを作製するためにMEA作製法を検討する。また、水溶性ナノカーボンとしてパルスパワー放電による水溶性多層CNTの創製を行う。 1 固体高分子型燃料電池の作製と動作特性試験: MEA作製法として(1)転写法と(2)電極塗布法を用いて再現性のよいMEA作製法を検討する。ナフィオン溶液中での白金および多層CNTの分散には、本年度購入した超音波分散機を利用する。作製したMEAを用いたFEPCの出力特性を調査する。 2 水溶性ナノカーボンの効果:上記1で検討した再現性のよいMEA作製法を利用して水溶性ナノカーボンを用いたMEAの作製とFEPCの出力特性を検討する。 以上の研究計画項目1に対して「研究実績の概要」に記載した通り、当初の計画を概ね達成できている。また、研究計画項目2に対して、水溶性CNTの効果が認められた。非常に興味深い結果であるため、平成26年度に継続して検討を行う。このようにPEFC研究のための方策を徐々に確立できており、本研究を進展できていると評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究内容を継続して、パルスパワー放電を用いた水溶性ナノカーボンの表面修飾及び固体高分子型燃料電池への応用の観点より、研究1 固体高分子型燃料電池の動作特性における水溶性ナノカーボンの効果、研究2 パルスパワー放電を用いたハイブリッドナノカーボンの創製技術の開発について研究する。 研究1は、昨年度の継続内容である。研究2は本年度の新たな研究課題であり、電気泳動法を用いたMEA作製を行う。水溶性ナノカーボンと白金触媒の混合溶液中での電気泳動法を用いてナフィオン膜の表面に白金担持水溶性ナノカーボンを吸着させる。特徴は、粒径数nmの白金と水溶性ナノカーボンを同時に集積させることができ、白金担持水溶性ナノカーボンの膜厚を制御可能であることである。ナノカーボンと白金触媒の混合溶液として塩化白金酸溶液を用いる。水溶性ナノカーボンの創製には、大気中および塩化白金酸溶液中でのパルスパワー放電を利用する。また、ナノカーボンとして多層および単層CNTを用いる。 パルスパワー放電条件(電圧、周波数、処理時間等)や電気泳動法による集積時間などをパラメータとして、白金によるナノカーボンの表面修飾を行い、種々の分析装置を用いてナノカーボンと白金のハイブリッド化の可能性を探求する。 PEFCには昨年度購入した電極温度が調整可能なPEFCを用いる。 本研究では、放電パラメータを制御できる自作のパルスパワー電源(ブルームライン型および磁気パルス圧縮型)を用いて、主に以下の項目について検討する。 ハイブリッドナノカーボンの創製における表面官能基の定量評価(FT-IR、XPS)、結晶構造の観察および分析(TEM、SEM、ラマン分光器)および固体高分子型燃料電池における動作特性試験とその評価並びに本研究の総括
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度のMEAの作製法に関する研究結果より、白金触媒の粒径がPEFCの出力特性に影響することが明らかになった。PEFCの出力特性を向上するためには、白金触媒の粒径が数nm程度のナノサイズであることが重要であり、液層プロセスによるナノサイズの白金微粒子を作製する必要がある。また、PEFCの出力特性はMEAのインピーダンスに依存する。さらにMEAのインピーダンスは、白金触媒の活性等の要因に依存するため、PEFCの出力特性を改善するためには、インピーダンスの低減が重要である。従ってインピーダンスを調査することによりMEAの特性を定量的に検討するとこができる。そのため、次年度にこれらに関する研究を行うためのナノサイズ白金微粒子の作製およびインピーダンス測定のための装置および測定器の購入など、装置および測定器の購入のために、消耗品等の購入物品を研究に支障のない範囲で金額を抑えたことなどにより、次年度使用額が生じた。 平成26年度の主な研究課題として、単層および多層CNTと白金触媒の混合溶液中での電気泳動法を用いたMEA作製並びにパルスパワー放電を利用した白金担持水溶性CNT(CNTと白金のハイブリッド化)の構築に関する基礎研究を実施する。そのため「次年度使用額」の主な用途は、ナフィオン膜表面への白金担持水溶性CNTの集積のための電気泳動装置の作製や単層CNTなど種々の材料の購入である。また、研究進捗状況によりMEAのインピーダンスの定量評価のために必要となる電気化学測定器の購入を検討する予定である。これらの装置を利用することにより、白金担持の効率化や電子伝導性の向上など、PEFCの出力特性の改善策の検討を効率的に遂行することができると考えられる。
|