2013 Fiscal Year Research-status Report
マスク転写自己形成による光配線のための接続技術と光デバイスの研究
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24560417
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
三上 修 東海大学, 工学部, 教授 (30266366)
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Keywords | 光インターコネクション / 光硬化樹脂 / 光配線 / コネクタ / V溝 |
Research Abstract |
【はじめに】光接続の難しさゆえ、ボード内およびチップ内の光配線の導入には課題が多く残されている。そこで、光配線板と光ファイバとの接続を効率的に行うために、ファイバ多芯一括接続用に標準化されている4チャンネルのMTコネクタと、光硬化樹脂を用いた光ピンによるマイクロサイズの90度光路変換素子とを一体化することを提案試作した。さらに、フォトマスク転写法を用いたV溝基板作製を試みた。V溝の形状制御をはかるとともに、ピッチ変換や新たな付加価値を与えることを検討した。 【90度光路変換コネクタ】光ピンはブルーレーザによる光硬化樹脂を用いた自己形成の原理によって作製する。ブルーレーザ光路の途中に45度ミラーを設置し、90度光路変換された光ピンを4チャンネル作製した。光ピンを埋め込むために、屈折率の低い別の樹脂を用い、マスク転写法により、紫外光(λ= 365 nm)で300sec 照射した。光ピンの長さはミラー前後で405μm と628μmとなった。光コネクタ側の光ピンの径は光コネクタ側で43μm、接続側48μmとなっており、全体としてテーパ形状になった。波長850 nmのLDを用い、挿入損失法によりこの素子の光損失を測定した結果、受信では-3.18dB、送信では-3.39dBとなった。新たな光路変換素子を提案・試作し、実験によって有効性を確認することができた。 【ポリマーV溝】まず開口部と遮蔽部がストライプ状に並ぶような開口パターンを設計した。フォトマスクの上に三角プリズムを設置し、従来同様1つの光源でV字型の形成を行うことを可能にした。V溝の高さは100μmとした作製されたサンプルの硬化部の上辺の幅(フォトマスクとの接触箇所)はおよそ101.5μmとなり、作製誤差は3.5μmになった。新たなポリマーV溝基板の作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由) 光硬化樹脂にブルーレーザによって光ファイバから内部照射を行うと、光照度に応じた形状に樹脂が硬化していく. したがって光ファイバの端面から光導波路が形成されるため、位置合わせが不要である特長を有する。今回、試作した素子の光損失が妥当であるか評価するために作製したものと同寸法のモデルを想定し、光線追跡法により求めた光損失を比較した。その結果、光損失の測定値は、理論値よりも大幅に大きかった。現状、実測値と理論値との差異は大きく、さらなる改善が必要である。 一方、これまでこれらの光ピンは空気中に保持されて機械的な強度が危惧されたが、クラッド樹脂による埋め込みによって回避できる見通しを得た。今後、自己形成導波路の特長を生かして、光路変換素子と光配線板とのアライメント機能を与えるような工夫を検討していくことも実用上重要であることが分かった。 マスク転写法は多種多様な応用が期待される魅力的な作製方法である。今回、三角プリズムを用いることで光源の数を減らし、作製プロセスの簡略化と柔軟性を与えることが出来た。フォトマスクを設置する高さや開口パターンの設計、プリズム、樹脂の選択により、従来のガラスやシリコン結晶のV溝では困難であった柔軟な作製を行うことが出来る等、さらなる発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策) マスク転写による光ピンの作製は、今後、多チャンネル化が必須であり、再現性良く安定に作製する技術の確立が求められている。樹脂や作製条件の検討が不可欠である。また、これまでのマルチモード用の比較的大きい口径だけでなく、単一モード用の小さい口径のピンの作製にも挑戦していくことによって、応用分野の拡大を狙う。 コネクタ応用では、光路変換素子と光配線板との簡易かつ高効率を実現するアライメント機構を考案することが実用上必須である。自己形成法によって、光硬化樹脂によって作製した凸部あるいは凹部の組み合わせによる等、勘合によるアライメント機能を創出する工夫を検討する。 またポリマーV溝では、現状製作された溝のスロープ角度が設計値と不一致であり、その原因が明らかになっていない。その原因を追及するとともに、ポリマーV溝の特長を生かした新たな展開を検討していく。具体的には、V溝を作製する際に照射するUV光によって、光ピンを埋め込むクラッド樹脂をも同時にパターン化して硬化させることにより、クラッド一体型のV溝を実現する。この構成は従来のシリコンあるいはガラスにより作製したV溝とは、全く異なる発想によるものであり、整列したファイバアレイあるいは光配線板と、一体型クラッド内部に包含された光ピンとの接続を簡易にかつ高効率で実現する優れた方法であり、実用化に資するところが大であろう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
助成金の繰り越しが発生した主要な理由は、購入を前提としていた樹脂材や製作に使用する精密光部品を、研究に協力いただいている企業のサポートにより、支給・貸与を受けることができたためである。 次年度は、マスク、材料の購入を予定している。
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