2012 Fiscal Year Research-status Report
繊維シート補強したコンクリ-トの繰り返し温度履歴による界面のせん断挙動
Project/Area Number |
24560572
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gunma National College of Technology |
Principal Investigator |
田中 英紀 群馬工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30551725)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
耐震補強材料の炭素繊維およびアラミド繊維シートを用いた試験体を用い、母材コンクリ-トとの線膨張係数の違い(各繊維単体では負の線膨張係数を有している)による接着面のせん断剥離を凍結融解試験によって把握することを目的として実験を行った。特に、厳冬地域を想定した温度負荷データは少ないので、本実験では炭素繊維シート補強を行った実績のある北海道の日高市の冬季外気温度に相当する-10~6℃を凍結融解試験機に設定した。なお、試験体は100×100×400mmの角柱試験体を基本とした。 本年度の実験では、炭素繊維シート、アラミド繊維シート補強した試験体を選定し、3000サイクルまでの凍結融解試験を行い、温度-ひずみ曲線を整理し、3000サイクルまでは母材コンクリ-トと下地処理材間、下地処理材と各繊維シート間の剥離現象は見られず、健全な状態を保持していることがわかった。 また、得られた温度-ひずみ関係からせん断剥離に関する寿命予測可能な評価を2つの考え方を用いて行った。ひとつは各サイクル毎での温度-ひずみ曲線で囲まれるひずみエネルギ-による評価、次に0℃以下の積算温度による評価である。積算温度による評価では実環境の3年程度に相当し、ひずみエネルギ-もほぼ一定の値で推移していることから、現象としての剥離現象が観察されなっかたことに対する物理的評価の裏付けができたものと考えられる。 母材コンクリ-トを対象とした3次元非定常温度応力解析を実施し、計測されたひずみの妥当性についても確認をした。最大主応力で2(N/mm2)程度であるが、高サイクル疲労時では剥離やひび割れが十分予想される結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炭素繊維およびアラミド繊維シートを用いた試験体の作製を専門業者に依頼し、下地処理のみの試験体と併せて、本研究で必要な試験体は準備できた。また、予定通りの温度履歴(2500~3500サイクル)を試験体に負荷でき、計画通りの実験内容を達成することができた。温度-ひずみ関係から、これを近似する曲線を得ることができ、各試験体に対応した線膨張係数の特性も整理できた。 数値解析では、最終的に損傷力学モデルを考慮したプログラムを構築するが、予備解析として-10~6℃までの温度履歴を三角関数で近似し、これを外気温度として三次元非定常温度応力解析を実施した。最大主応力の大きな部位やその値から、剥離やひび割れが生じる可能性のある箇所も特定できた。 以上の理由により、24年度当初の予定である炭素繊維シートおよびアラミド繊維シート補強した試験体の繰り返し温度履歴を受けたせん断挙動を整理でき、研究計画に沿って順調に研究が進展していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、基本的には24年度の研究内容を引き続き実施していく予定である。実験では下地処理および母材コンクリ-トの繰り返し温度履歴を受けた温度-ひずみ曲線のデータ収集を3000サイクルを目標に実施する。寿命予測評価もひずみエネルギ-による評価と積算温度による評価の2通りについて考察を加えていく。 さらに、数値解析については、損傷力学を基本としたプログラムを構築する予定である。具体的には母材コンクリ-ト、下地処理、各繊維シートの温度-ひずみ曲線が得られるので、母材コンクリ-トを基準とした積層方向の各材料の温度-ひすみ曲線が得られる。このデータを基に接着層としてのせん断挙動の数値モデルを構築しようと考えている。解析モデルの構築については、大型コンピュータ-が必須であり、東京大学の協力の基、外部からのアクセスが可能な方法を考えていたが、ハッキング等の問題から直接大学に出向いて利用することになったので、解析プログラムの構築を前倒しして本年度から取り組むようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
下地処理、母材コンクリ-トの繰り返し温度履歴を受けた温度-ひずみ関係を得る実験を継続して行う。この実験にともなう備品として、三軸のひずみゲージ、データローガ(リース)等を次年度の研究費として使用する予定である。 また、数値解析モデル構築のため、東京大学へ定期的に出張してモデル構築のための打ち合わせを行う予定である。そのための交通費にも当該研究費を充てる予定である。
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