2013 Fiscal Year Research-status Report
情報通信技術の進展が交通行動及びプロジェクト評価に与える影響
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24560636
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 浩徳 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70272359)
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Keywords | 業務交通時間価値 / Hensherアプローチ / 費用節約アプローチ |
Research Abstract |
今年度は,業務目的の交通時間節約価値を包括的かつ理論的に分析した.まず,既往研究のレビューより,業務目的の交通時間節約価値の導出には,費用節約アプローチとHensherアプローチとがあることを示した.次に,業務交通を分析する上では,交通の意思決定者,交通時間節約に支払意思を持つ主体,移動中の労働の有無,業務交通のスケジュール,労働時間外の賃金支払いの有無が,留意すべき点であることを示した.その上で,被雇用者,雇用者,および両者の共同意思決定を含めた10の時間配分モデルを定式化し,それらから交通時間節約価値を導出した.さらに,これらのモデルを拡張することにより,賃金率プラス公式とHensher公式を導出した.その結果,第一に,費用節約アプローチのうち,他国の研究者により主張される賃金率プラスアプローチは,被雇用者自身により業務交通に関する意思決定ができ,かつ労働時間外の業務交通に対して賃金が支払われない場合に成立することが明らかとなった.第二に,費用節約アプローチのうち,賃金率アプローチは,雇用者が業務交通に関する意思決定をする状況で成立するものであることが明らかとなった.第三に,輸送そのものを業務とし,かつそれが雇用者により管理される交通(例えば,鉄道やバスの運転手による業務交通)の交通時間節約価値は,賃金率よりも低くなることが明らかとなった.第四に,ブリーフケーストラベラーのように,移動中に労働が行われる場合の交通時間節約価値は,移動中に労働が行われない場合よりも低くなることが明らかとなった.今後,高度情報通信端末が普及していけば,ブリーフケーストラベラーは確実に増加することが期待される.そして,ブリーフケーストラベラーの増加は,業務目的の交通時間節約価値の減少につながる可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
業務交通の時間価値に関する理論上の問題を解決する上で,モデル化のブレークスルーに成功したため,予想していたよりも,作業が進捗した.そこで,今年度は,交通時間価値の新たな推定方法として,最近注目を浴びており,今後我が国でも導入の可能性が考えられるノンパラメトリック手法を用いた時間価値の推定を試みることとする.すでに,アンケート調査によって収集した自動車利用者の経路選択に関するSPデータを用いて,Fosgerau(2006)によって提案された手法を活用し,交通時間価値を推定する.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,既存の研究手法についてレビューを行う.必要に応じて,海外の研究者にノンパラメトリックアプローチを用いた分析の手法に関して問い合わせを行う.その上で,交通時間価値の分布に関して分析を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度からすでに未使用額が生じていたが,今年度は,ほぼ予定通りに予算を使用したために,前年度の未使用額が一部残ってしまった. 未使用金額は,それほど大きな金額ではないこともあるので,成果発表のための学会参加費に使用したいと考えている.
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Research Products
(4 results)