2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560685
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
金尾 伊織 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (80372564)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 鋼構造 / 横座屈 / 横補剛 / 立体骨組実験 |
Research Abstract |
2012年度は,①柱脚固定の小型立体骨組実験と柱脚ピン支持の小型立体骨組実験の比較,②横補剛を有する柱脚ピン支持の小型立体骨組実験,③柱脚ピン支持の小型立体骨組の振動台実験の3種類の小型立体骨組実験を実施した. 柱脚固定の骨組において,柱脚部に発生しているモーメントを直接図ることは困難であることから,柱脚部耐力を除外する目的で柱脚ピン支持の骨組実験を行った.その結果,梁横座屈後の骨組耐力低下が実験的にも確認でき,梁に横座屈が生じると梁の横座屈耐力を維持できないことを示した.しかし,骨組としての耐力低下は緩やかであり,最終的には梁耐力を弱軸回りの全塑性モーメントとした場合の崩壊荷重に落ち着くことを確認した. また,設計基規準・指針にはいくつかの横補剛規定が示されているが,それぞれの効果については十分に検討されていない.その点に着目し,補剛効果にどの程度違いがあるのかを実験的に検討することを目的として,①建築物の構造関係規定で示されている等間隔補剛,②塑性設計指針,③限界状態設計指針で規定されている補剛規定について,小型立体骨組の大たわみ実験を実施した.その結果,いずれの補剛方法についても最大耐力は崩壊荷重を満足したが,最大耐力以降の耐力低下の様子に違いが見られた.さらに,それぞれの設計基規準・指針で規定している補剛力は,想定している変形範囲では概ね満足していることも確認した. 振動台実験では,地震加力時にも横座屈は発生するものの,発生するタイミングは静的実験よりも遅く,発生が遅れることを実験的に示した. 数値解析では,申請者が開発しているFERT-3Pを用いて,柱と梁の剛性比をパラメータとした数値解析を実施した.柱はH形鋼,角形鋼管,梁は細幅,中幅H形鋼を対象とし,角形鋼管柱とH形鋼柱では柱に取りつく梁の横座屈耐力および座屈後挙動に差異があることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験に関しては,装置製作および計測確認を順調に終え,予定以上の実験を実施できた.24年度に予定していたピン支持骨組実験に加え,25年度に予定していた横補剛付骨組実験,さらに振動台実験まで拡張し,静的および動的挙動の性能を実験的に把握できた. 静的載荷実験では,骨組内の梁の横座屈後耐力を把握できるように,柱脚ピン支持骨組を対象とし,①単調載荷実験,②繰返し載荷実験,③塑性設計指針による横補剛を有する骨組,④限界状態設計指針による横補剛を有する骨組,⑤等間隔補剛を有する骨組の5種類の実験を実施した.実験結果を分析し,横座屈後の骨組耐力の低下度,横補剛に発生する補剛力,横補剛数による変形性能の違いについて分析している. 振動台実験では,エルセントロ,JMA神戸地震波を与えて加振し,静的載荷時と同様の復元力特性を示すことを確認すると共に,横座屈の発生するタイミングが動的適載荷時の方が遅れることを示した.また,横座屈発生の有無に関わらず,崩壊に至ることを示している. これらの2つの実験考察をまとめて,日本建築学会近畿支部研究報告会および全国大会に投稿し,発表予定である.実験に関しては,研究期間3年間で考えて,概ね80%の達成度である. 数値解析については,申請者が開発しているFERT-3Pに局部座屈を考慮できるように拡張する目的で式展開を進めているが,プログラミングには至っていない.そこで,通常の実大骨組においては,局部座屈がそれほど大きな問題にはならないと考え,拡張前のFERT-3Pを用いて柱と梁の剛性比をパラメータとした数値解析を進めている.解析対象は,柱はH形鋼,角形鋼管,梁は細幅および中幅H形鋼を対象としており,柱の違いによって骨組内の梁の横座屈耐力および座屈後挙動に差異が生じることを確認すると共に,現在データをまとめている.24年度の数値解析に関しては,概ね達成できた.
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は,解析法の開発と整備に加え,数値解析による骨組挙動の解明を中心に進めていく. 24年度に実施した小型骨組実験のデータに関して詳細に考察を進め,その数値解析を実施する.実験結果を用いて開発しているFERT-3P(静的解析)およびFERT-3PD(動的解析)の性能検証を行う.このとき,汎用有限要素解析プログラムによる数値解析も実施し,FERTと比較する.骨組のモデル化の妥当性を検討した後,実験では不十分な点について,数値解析結果を加えて考察し,小型模型実験における骨組の大たわみ挙動特性,梁横座屈発生後の骨組耐力および変形性能を検討する. さらに,解析精度を検証したFERT-3PおよびFERT-3PDを用いて,実大骨組の変形性能に関して数値解析データを収集する.無補剛の骨組に加え,各種指針で示されている横補剛規定に関して,その効果と必要補剛剛性,補剛力の検討を解析的に進める. また,現在開発しているプログラムFERT-3Pに対して,局部座屈を考慮できる骨組解析法への拡張を目的とした式展開を進め,プログラミングを行う.拡張したプログラムの性能検証については,24年度に実施した骨組実験結果の他,圧縮軸力を受ける短柱の有限要素解析結果との比較で検討する.開発が順調に進めば,局部座屈を考慮した実大骨組の変形性能および座屈後挙動を解析し,データを収集する. 26年度は,25年度に実施した数値解析データおよび実験データの整理を行い,変形性能の指標となるDs値を検討する基礎となるデータを作成する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は,24年度に実施した小型骨組実験の数値解析によるシミュレーションと,引き続き実大骨組を対象とした数値解析を進め,梁横座屈が生じた場合の骨組の変形性能および骨組内の梁の横座屈挙動を解析的に明確にする予定である.さらに,現在開発しているプログラムFERT-3Pに対して,局部座屈を考慮できる骨組解析法への拡張を目的とした式展開を進めると共にプログラミングを行い,24年度の実験結果および汎用有限要素プログラムによる部材解析結果を模擬する予定である.そのため,パーソナルコンピュータ一式およびソフトウェアの購入を予定している. 実験に関しては,数値解析を実施していく中で新たに実施した方がよい実験が出てきた場合に実験を実施する予定である.実験装置および冶具は24年度中に揃えているが,新たな冶具などが生じた場合,その製作費用が必要となる.また,部材の製作が必要である. その他,24年度の成果をまとめて日本建築学会で発表予定である. 以上より,パーソナルコンピュータ一式,ソフトウェアの購入,追加実験のための部材製作費および冶具製作費,謝金,学会への旅費などに使用する予定である.
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Research Products
(4 results)