2012 Fiscal Year Research-status Report
ポスト都市再生時代の欧州都市における社会的持続性を実現するための計画論の再構築
Project/Area Number |
24560769
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
阿部 大輔 龍谷大学, 政策学部, 准教授 (50447596)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会的持続性 / ポスト都市再生 / カタルーニャ州 / 界隈法 / 統合的都市政策 |
Research Abstract |
本研究は、持続可能性概念の社会的側面に着目し、欧州諸都市の都市政策上の課題が空間の再生から社会的持続性に移行しつつある現状を明らかにするとともに、高齢者や移民といった社会的弱者を包摂する新たな都市計画論の構築を図ることにある。H24年度の研究目標は「持続可能性の観点から見たスペイン・イタリアを中心とする対象都市のこれまでの都市再生政策の潮流の把握ならびに再評価」にあり、以下の項目を実施した: 1) これまでの国内外の持続可能性概念の研究をレビューし、地域空間における社会的持続性を論じる政策的文脈を考察した。特に、1980年代から世界各国、各都市で相互に影響を受けながら展開されてきた、自動車に支配された都市空間を再び人間の手に取り戻そうとする「都市再生運動」に注目し、サステイナブル・シティ論の一端を明らかにした。 2) EUでの都市再生プログラム(UPPやURBANなど)や各国で展開されている統合的な都市政策(例えばドイツで全国レベルで展開されている社会都市プログラムやイタリア・トリノで展開されているProgetto the Gate事業、スペイン・カタルーニャ州の界隈法など)の枠組みや論理構築を把握した 3) スペイン・イタリアの都市を中心に、社会的持続性の向上がどのように構想・計画・実現されているのかについて把握した。スペイン・カタルーニャ州ににおける界隈法の第一期対象地区を中心に、域内の8地区においてフィールド調査・インタビュー調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書に記載したイタリアでの現地調査は実施できず、文献調査を通した政策の枠組みの把握にとどまった。しかし、持続可能性概念のレビューと現段階についての考察ならびにこれまでの研究蓄積を発展する形でのカタルーニャ州ならびにイタリア・トリノの事例研究を取りまとめることができた。次年度以降の調査課題もさらに明確になったことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
スペイン・カタルーニャ州「界隈法」の事業運用実態を中心に、類似の政策関心を有する他のEU諸都市の事例も踏まえつつ、環境的・経済的・社会的衰退地域の諸問題ならびに地域からの自律的な取り組みの実態分析を進める予定である。すでに入手、整理した基礎的文献をもとに、界隈法の理念および運用実態を理解し、界隈法が適用された各基礎自治体の再生政策実施後に顕在化している問題群と社会的弱者(貧困層や移民)コミュニティの諸問題を解明する。現在までに70を超える自治体が界隈法によりソーシャル・ミックスを念頭に置いた環境改善に着手している。今後、すべての適用地域の実態をレビューする。現地調査を行い、各都市の行政担当者や整備開発後者等にヒアリングを行い、疲弊市街地の再生の問題がプランナーの側からどのように捉えられていたのかを明らかにする。また、地区レベルでの既存コミュニティの維持・強化をテーマに掲げ活動を展開している地元住民組織へのインタビューを行い、地域からの自律的な空間コントロールの取り組みの実態を分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料収集のための図書購入、図版作成のための編集ソフトならびにPCの購入、スペイン・イタリアを中心とする海外現地調査のための旅費、国外での講演会参加のための旅費、国内の学会発表のための旅費、学会論文投稿・掲載費、現地からの書籍郵送費、資料整理や図版作成、通訳のための謝金を予定している。
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