2013 Fiscal Year Research-status Report
北海道におけるアイヌ文化成立期以前の建築活動に関する基礎的研究
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24560796
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Research Institution | History Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
小林 孝二 北海道開拓記念館, 学芸部, 学芸員 (80142090)
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Keywords | 先史時代の建築文化 / 先住民族の建築文化 / ニブフの建築文化 / 夏の家 / 冬の家 |
Research Abstract |
本研究は、北海道の民家史・建築史を「通史」として捉えることを可能とするための基礎的研究である。具体的には、研究代表者が行ってきた近世期以前のアイヌと和人の建築活動に関する研究実績を基礎としてアイヌ文化以前の先史文化時代(擦文文化・続縄文文化・縄文文化期)の建築活動に関する資料を包括的に集成・整理し、これまでの研究蓄積との総合化を図り、北海道の建築史・住宅史を通史として捉えるための基礎的資料を構築することを目的として研究を進めている。 1,平成24年度(研究初年):研究全体のフレーム構築のため、既往の北海道建築史研究の整理を通して研究の空白期間の明確化。発掘報告書を中心に先史文化に関わる資料の収集整理。研究2年次以降計画の海外とくに北東アジア地域との比較研究にかかわる資料・情報の収集。 2,平成25年度(本年度):初年度に引き続き、発掘報告書を中心に先史文化に関わる資料の収集整理。海外とくに北東アジア地域との比較研究としてロシア連邦サハリン州において先住民族の建築文化にかかわる調査を実施した。具体的には、サハリン州郷土博物館の協力を得て8月中旬に現地において以下の調査を行った。A,サハリン州郷土博物館が所蔵する先住民族の建築文化に関する資料(文献・写真・模型)調査。B,現在の先住民の建築文化に関する聞き取り調査。C,同博物館の先住民(ニブフ)の復元住居2棟(高床式住居:夏の家、竪穴住居・冬の家)の実測調査および復元にかかわる資料等の調査。 以上のように、北海道島周辺の先住民族に関する現地調査からアイヌ文化と先史文化をつなぐ具体的な資料の収集・調査の実績を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に示したとおり、本研究を進めるにあたって設定した年度別の研究実施計画にそって研究を進めた。 1,「発掘報告書」については、研究蓄積が膨大であることから、これらの資料収集およびデータの抽出に当初計画以上の時間を費やしている。今後は、悉皆調査を目標としつつも、対象地域・年代など抽出条件の検討による絞り込みを検討する。 2,研究計画にそって、北海道島周辺北方先住民の建築文化に関する現地調査を実施した。サハリン島における建築史研究者によるこのような調査は少なく、少数の調査報告との比較研究の側面も含めて貴重な資料を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度(研究3年次)については、以下の3項目を平行して進めたい。 1,引き続き発掘資料の収集を進める。これにあたって抽出条件の検討を行う。 2,北方および北東アジア先住民の建築文化に関する資料の収集をすすめ、次年度以降の新たな現地調査の必要性について検討する。 3,発掘資料の分析を基礎として、主に日本国内の先史文化にかかわる遺跡の現地調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、国内の遺跡調査・資料所在調査などを予定していたが、「発掘報告書」などの収集・分析に多くの時間を費やしたため、現地調査が充分に実施できなかったため。 次年度以降は、「発掘報告書」・文献などの収集・分析に早期に目途をつけ、現地調査を積極的に行っていくことで調査の進展を図る予定である。
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