2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560854
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
津村 朋樹 大分大学, 工学部, 准教授 (10433046)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 常温作動型水素吸蔵材料 / 化学吸着水素 / AlH3 / MOF-5 / LiAlH4 / C3N4 |
Research Abstract |
AlH3処理MOF-5の他に,新たにLiAlH4処理MOF-5およびAlH3処理C3N4において室温から130℃において,水素圧10MPa以下の条件で0.5~1.5重量%の可逆的な水素吸蔵放出が確認された. AlH3およびLiAlH4処理MOF-5では,AlH3およびLiAlH4吸着のMOF-5への吸着とともにMOF-5の骨格の還元が起こっている事をXRD測定および固体NMR測定から確認した.吸着量および還元反応の進行度は処理時間および濃度の増加とともに増加し,還元作用としてはLiAlH4処理の方が強く,MOF-5粒子自身の溶解反応も起こっており,吸着量ではAlH3の方が多くなった. AlH3処理h-BNでは常温作動が確認されなかったことから,N元素含有の黒鉛類似構造を持つBCNおよびC3N4において検討を行ったところ,AlH3処理C3N4において,常温作動が確認された.固体NMR測定および質量分析からC3N4粒子の水素化が起こっており,XPS,EDSからAlはC3N4粒子上に均一に分散して存在していることが確認されている.また,AlH3処理C3N4では熱分解過程でAl金属の析出が見られないこと,C3N4は600℃までに分解し100%重量減少が見られるが,AlH3処理C3N4では1000℃分解後にAlのほかにC,Nが検出され,AlH3処理C3N4は混合物ではなく,AlH3がC3N4と化学的な結合が形成されていることが推察された. いずれのサンプルも吸着実験温度が室温よりも130℃の場合の方が水素吸着量は高く,化学吸着的な水素吸着と考えられた. 以上の研究成果は日本金属学会秋期および春期大会,Third International Conference on Multifunctional, Hybrid and Nanomaterialsにて発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AlH3処理MOF-5だけでなく,新たにLiAlH4処理MOF-5において室温から130℃において,水素圧10MPa以下の条件で0.5~1.5重量%の可逆的な水素吸蔵放出が確認されており,最適合成条件の決定にまでは至っていないが,AlH3吸着量と水素吸蔵放出量の関係から,最適吸着量が存在することが示唆され,AlH3吸着量が多くなりすぎると水素吸蔵量が減少する傾向が見られた点,AlH3ではなくLiAlH4においても水素吸蔵放出が確認されている点から,水素吸蔵放出挙動を発現する吸着化学種としてはAlH3であることが必ずしも必要ないことが明らかになり,Al,Li,LiAlH4,還元析出Zn,芳香環を化学吸着サイトとして絞り込むことができた. 一方,h-BNから方針転換し,黒鉛類似構造を持つBCN,C3N4に展開したことで,新たに室温作動型材料としてAlH3処理C3N4が見いだされた.このことは材料探索の選択肢が大きく広がったことを示している. さらに,いずれの試料における水素吸蔵放出挙動が化学吸着的な吸蔵であることから,AlH3処理C3N4の結果はAlH3処理およびLiAlH4処理MOF-5の結果と併せ考えることで,MOF骨格構造が必ずしも必要ではなく,ある基材にAl,Li,ZnあるいはLiAlH4が高度に分散した状態を作り出すことができれば常温作動型水素貯蔵材料が実現できる可能性を示唆しているものと考えられる.このことによっても,材料探索の選択肢が大きく広がったことを示している.
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Strategy for Future Research Activity |
室温作動型材料として,AlH3吸着処理MOF-5のほかにLiAlH4吸着処理MOF-5およびAlH3処理C3N4が確認され,ある基材にAl,Li,ZnあるいはLiAlH4が高度に分散した状態が作り出すことができれば常温作動型水素貯蔵材料が実現できる可能性が示唆されたことから,次の2つの推進方策をとる. ① MOF-5のほかにC3N4をベースにした室温作動型材料の合成条件の最適化を行う.② 水素吸着サイトと考えられるAl,Li,ZnあるいはLiAlH4を絞り込むために,骨格の異なる金属有機構造体(MOF),共有結合性有機構造体(COF)への水素化物の吸着,アルカリ金属のドーピングを行う.具体的にはアルミニウム-テレフタル酸,アルミニウム-2,6-ナフタレンジカルボン酸のMOFを合成し,AlH3吸着処理を行い,MOF-5の結果と比較することで,Zn,芳香環骨格の影響を調べる.また,金属元素を含まない1,4-benzenediboronic acidとheahydroxytriphenyleneの共重合体であるCOF-5へのAlH3吸着処理を行いMOF-5の結果と比較することで金属元素の影響を調べる.MOF-5,C3N4,アルミニウム-テレフタル酸,アルミニウム-2,6-ナフタレンジカルボン酸のMOF,COF-5へのリチウムのドーピングを行うことで,リチウムのドーピングの影響を調べる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会参加用旅費が学会開催地が近距離であったことから,平成24年度の研究費に繰越119,355円が発生した.これらは新たに必要となった化合物(骨格の異なる金属有機構造体(MOF),共有結合性有機構造体(COF))の合成のための物品(試薬,反応容器)費に組み入れる予定であり,当初予算と合わせて物品費の合計金額は419,355円となる.旅費人件費・謝金は予算通り400,000円,100,000円となっており,旅費は日本金属学会,日本化学会での成果発表を予定し,人件費・謝金はサンプル調製等の実験補助に使用予定である.
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