2013 Fiscal Year Research-status Report
薄膜アクチュエータ用磁性材料の特性制御に関する研究
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24560859
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松村 義人 東海大学, 工学部, 教授 (60239085)
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Keywords | 薄膜アクチュエータ / 磁歪材料 / イオン衝撃 / 過剰エネルギー / 過飽和固溶体 / スパッタ / 内部応力 |
Research Abstract |
本研究計画は磁歪材料を中心とした薄膜アクチュエータ用材料の特性に及ぼす高エネルギー粒子衝撃の効果を明らかにすることにより、マイクロアクチュエータやセンサデバイスに最適化された薄膜用磁性材料を創り出そうというものであり、”1.新規薄膜アクチュエータ用磁性材料の検討”と”2.薄膜アクチュエータ用磁性材料の特性制御”に関する研究を行っている。 H25年度においては、”1.新規薄膜アクチュエータ用磁性材料の検討”に関しては、現有する二元蒸着式イオンプレーティング装置を用いて非混和系であるFe-In系の薄膜を作製しその際にラングミュアプローブとファラデーカップにより成膜中のプラズマ分析を行った。その結果より求めた蒸着粒子の持つ過剰エネルギーはプラズマを用いない場合に比べ1桁以上高い過剰エネルギーを有し、これが非混和系であるFe-In系においてFe中にInが5 at%以上の溶解度を示す理由であることを明らかにした。”2.薄膜アクチュエータ用磁性材料の特性制御”においては本研究計画において申請した高速高電圧出力アンプを用いてラングミュアプローブ測定を行うことによりKr,XeのようなArと異なるスパッタガスにおいてもPiが同じ場合、作製された磁歪薄膜の内部応力が同じになることを明らかにした。さらにNi2MnGa系磁気形状記憶材料薄膜の作製を試み、この系においてもPiが作製された薄膜の内部応力に制御に適応可能であるが、一部熱応力の影響もあることを明らかにした。 以上の成果に関しては第25回電磁力関連のダイナミクスシンポジウム(SEAD25)、や日本金属学会秋期講演大会等の国内学会において研究成果の発表を行った。さらに2013 MRS Spring Meeting & Exhibit等の国際集会において発表を行い、日本金属学会誌などの学術誌で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規薄膜アクチュエータ用磁性材料の検討に関しては、非混和なFe-In系において成膜中のプラズマ計測により求めたプラズマ中の蒸着粒子の持つ過剰エネルギーの増加が、溶質であるInの溶解度の増加に寄与することを明らかにした。 薄膜アクチュエータ用磁性材料の特性制御に関しては、スパッタ法によるNi薄膜の成膜において単位蒸着粒子あたりに入射するスパッタガスイオンの運動量に基づき求めたイオン衝撃パラメータPiと、成膜後の薄膜に生じる内部応力の関係が、一般に用いられるArのみではなく、KrやXeにおいても成立することを明らかにし、薄膜特性の制御法として有効であることを明らかにした。 それらの成果については、日本金属学会誌等に2報の学術論文および5報の論文集の論文を公表した。また、電磁力関連のダイナミクスシンポジウムで2件や日本金属学会講演大会秋季大会等において3件、計5件の国内学会の発表を行った。さらに、さらに2013 MRS Spring Meeting & Exhibitにおいて1件、MJIIT-JUC Joint International Symposium 2013 (MJJIS2013)において3件、計4件の国際集会における発表を行った。 以上からおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
新規薄膜アクチュエータ用磁性材料の検討において、イオンプレーティング法により成膜を行う際に、大きな運動エネルギーを持つ蒸着粒子イオンのイオン衝撃が格子歪による過剰エネルギーとして働き、固溶限を拡張していると考えられる。この点に関して静電型エネルギーアナライザを作製して、成膜時の蒸着粒子が持つエネルギーを直接測定することより、Fe系過飽和固溶体薄膜形成におけるイオン衝撃の影響を明らかにする。これらの成果に関しては、日本金属学会講演大会や他の国内学会および国際会議において公表を予定している。また、日本金属学会誌等の学術雑誌に投稿の予定である。 薄膜アクチュエータ用磁性材料の特性制御において、本研究計画で申請したデータアクイジションシステムを用いたプラズマ計測により求めたイオン衝撃パラメータPiと、成膜後の薄膜に生じる内部応力の関係が、薄膜アクチュエータ材料一般に適用できるかの検討を行う。さらにスパッタ出力、基板バイアス、基板温度等の成膜条件に対するイオン衝撃パラメータPiの変化を求め、作製された磁歪薄膜の内部応力変化との関係を求め、イオン衝撃パラメータPiの適用可能性を探る。それらの成果については電磁力関連のダイナミクスシンポジウム等における国内学会および、14th International Conference on New Actuators (ACTUATOR2014) において研究成果を発表し論文集に公表する。 以上を総括して報告書を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
MJIIT-JUC Joint International Symposium 2013 (MJJIS2013)における国際会議参加費支払いにおいて、主催者側より\3,000-の返却があったため。 国内旅費および外国旅費として\303,000を予定しており、2013年度に生じた次年度使用額\3,000-は2014年度に開催される国際会議費と合わせて支出予定である。 消耗品費として\430,000を予定している。内訳はデータロガーに\160,000の他、基板材料等薄膜作製用材料として\270,000を予定している。その他の費用として\150,000、内訳は論文別刷代として\50,000、機器分析の外注費として100,000を予定している。
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