2013 Fiscal Year Research-status Report
立体形状をした強磁性体の高精度非破壊検査技術の開発と傷の定量的評価手法の検討
Project/Area Number |
24560889
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
福岡 克弘 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (40512778)
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Keywords | 非破壊検査 / 磁粉探傷試験 / 渦電流探傷試験 / 定量的評価 |
Research Abstract |
立体的な形状をした被検査対象物(強磁性体)を、高精度に非破壊検査する技術の確立を目的とし、研究を実施した。極微小な傷の検査が可能な“磁粉探傷試験”と、傷形状(長さ、深さ、幅)を定量的に評価するのに有利な“渦電流探傷試験”を組み合わせたハイブリッド電磁非破壊検査システムの確立を検討した。磁粉探傷試験と渦電流探傷試験において、立体的な形状の強磁性体を探傷するため、三次元空間に均一且つ簡便に磁界を発生できる磁化装置の開発を検討した。平成25年度の具体的な研究実績を以下に示す。 1. 磁化器の開発・・・磁粉探傷試験および渦電流探傷試験において、強磁性体である被検査物を磁化する磁化装置の開発を行った。有限要素法を用いた数値解析を実施し、三次元立体空間に均一な強度の回転磁界が発生できる磁化装置を検討した。 2. 渦電流探傷試験における定量的評価の検討・・・強磁性体を渦電流探傷する場合、強磁性体中に存在する磁気特性の差により、検出信号にノイズが生じる。そのため、強磁性材料の微小な傷を渦電流探傷することは難しい。そこで、強磁性体を磁化することで磁気的なノイズの低減を試みた。本年度は、微小な傷におけるS/N比を向上させることを目的とし、検出コイルに小型パンケーキコイルを用いたプローブを作製した。 3. 磁粉探傷試験における定量的評価の検討・・・磁粉探傷試験により傷を定量的に評価する手法を確立するため、傷の深さと付着磁粉量の関係について評価した。傷深さを変化させた試験体を作製し、各試験体の傷に付着する磁粉の幅と高さを、高速度カメラを用いて観察した。傷に付着した磁粉の幅と高さのデータを用いて、傷の深さを定量的に評価する手法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の「研究の目的」、「研究実施計画」に即して、予定通りの研究が実施できている。また成果についても、期待していた結果が得られている。 平成24年度は、三相交流を用いた3極コイル型磁化器2個を対向して配置することで、三次元立体空間に回転磁界を発生できることを確認した。しかし、その回転磁界は各方向で強弱があり、不均一な回転磁界分布であることも確認した。そこで本年度においては、発生する回転磁界が全方向に均一に分布する磁化器の配置に関して検討した。有限要素法解析を行い、対向させて配置した磁化器の角度が変わると、各方向に発生する磁界強度が変化することが判った。したがって、一方の磁化器を固定しておき、もう一方の磁化器を探傷作業中に回転させることで、三次元空間の全方向に均一な強度の回転磁界が得られることを確認した。 渦電流探傷試験に関しては、平成24年度の研究において、丸棒状の試験体を対象とし、貫通コイル型プローブを検討した。本年度は、平板状の試験体を対象としたプローブの開発を目的とし、探傷結果より傷の形状を把握することが有利な、一様渦電流プローブを用いた探傷システムについて検討した。複雑形状部の探傷試験に対応させるため、フレキシブル基板に32個の検出コイルを並べたアレイ型マルチ一様渦電流プローブを作製した。また、強磁性体を磁化し磁気飽和させることで、磁気ノイズの低減を図った。冷間圧延鋼板SPCCに、長さ6mm、幅100μm、深さ500μmの傷を放電加工により作製した試験体を用いて、開発した渦電流探傷システムにより傷の検出が可能であることを確認した。 磁粉探傷試験に関しては、昨年度に引き続き、傷の深さの違いによる傷への磁粉付着量の変化に関して、高速度カメラを用いた動画像計測により評価した。傷の深さをパラメータにした試験体を作製し、付着磁粉量から傷深さを推定する手法の開発を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した「研究の目的」、「研究実施計画」に即して、次年度以降の研究を推進する。具体的な推進方策を以下に示す。 平成24年度の研究において、三次元方向に回転磁界を発生する磁化装置の開発では、2個の磁化器を対向して配置することで、三次元立体空間に回転磁界を発生できることを確認した。平成25年度の研究では、磁化器の配置や極性に関して有限要素法解析により検討し、一方の磁化器を固定しておき、もう一方の磁化器を探傷作業中に回転させることで、三次元空間の全方向に均一な強度で回転磁界が得られることを確認した。本年度は、更なる発生磁界の均一化を狙い、3極コイル型磁化器の極数を増やし、マルチコイル型磁化器の検討を行う。さらに、これまで検討してきた数値解析による評価結果をもとに、実機磁化器を作製する。作製した磁化器により発生する磁界を、3軸ホールセンサにより実計測する。また、作製した磁化器を用いての磁粉探傷試験および渦電流探傷試験を実施する。 平成25年度は、傷形状のパラメータとして傷の深さに着目した。本年度は、傷の深さに加えて、傷の長さおよび幅をパラメータにした試験体を作製し、傷の形状(長さ、深さ、幅)と探傷結果との関連を明らかにする。また、これまでの研究では冷間圧延鋼板SPCCの生材を用いて研究を進めてきた。しかし、鋼板の種類や焼き入れなどの熱処理条件により、鋼板の磁気特性は変化する。そこで、鋼板の種類を変えた試験体および焼き入れ処理をした試験体を作製し、本研究の内容を一般化する。 傷形状をパラメータとした数値解析モデルを作製し、傷から生じる漏洩磁束密度分布(強度および分布形状)を詳細に把握する。高速度カメラを用いた動画像計測により得られた傷形状と付着磁粉量の関係と、数値解析より得られた傷形状と漏洩磁束密度分布の関係を用いて、探傷結果から傷の形状が推定可能な定量的評価手法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
数値解析で用いているワークステーションは、OSがWindows XPの旧式のものであるため、更新の必要があった。同様に、学会発表で使用しているノートパソコンも旧式であるため、更新の必要があった。また、モデル形状が大型であるため並列計算が必要であり、汎用有限要素法ソフトのライセンスを新たに購入する予定であった。 しかし、平成25年度にWindows XPのOSサポートが終了し、パソコンおよびワークステーションが品薄状態となっていた。そこで、平成26年度にワークステーションおよびパソコン、汎用有限要素法ソフト等を購入することに予定変更した。 傷加工し試験体を作製する費用および試験体を熱処理する費用として使用する。また、旧式のワークステーションおよびパソコンの更新費用、および汎用有限要素法ソフトのライセンス購入費用に使用する。 外部施設(工業試験場、民間企業等)の装置を使用した実験を実施することを計画している。また、研究協力者や電磁非破壊検査の専門家との研究報告・打ち合わせを定期的に実施する予定である。さらに、本研究で得られた研究成果を、学会等において積極的に報告する。それらの旅費・学会参加費として使用する。
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Research Products
(13 results)