2013 Fiscal Year Research-status Report
新規温度応答性分離膜の開発-膜透過可能な分子サイズの温度による制御-
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24560916
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
村上 賢治 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10272030)
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Keywords | 温度応答性膜 / 感温性高分子 / 分子ふるい / 有機無機複合体 |
Research Abstract |
本年度は基板として市販のガラスフィルター(フィルター直径φ40.5mm,厚さ4mm,細孔径10~16μm)を使用し,その表面に3-ジメチルアミノプロピル基を固定化したものを使用した。感温性高分子であるポリN-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)をラジカル重合法によって約0.04gガラスフィルター上に固定化した。高分子固定化の際に,架橋剤であるN,N’-メチレンビスアクリルアミドを約0.5wt%添加することで,高分子層のガラスフィルターへの結合強度は増した。 昨年度作製した膜透過装置を用い,メチルオレンジ(MO)およびコンゴーレッド(CR)透過速度の温度依存性を検討した。膜透過実験の条件は供給側と透過側のMO初濃度をそれぞれ100と0ppm,水溶液の流速0.5L/min,水溶液の温度は25又は40℃とした。MO透過量は透過側のMO濃度をUV-Vis(日本分光V-630)で連続的に測定することで定量された。高分子を被覆していないガラスフィルターの場合,MO物質移動係数は1.4×10-6m/sであった。温度応答性膜を使用した場合,温度によって物質移動係数は異なった。PNIPAMの相転移温度(約32℃)より高い40℃では物質移動係数は1.3×10-6m/sで,未修飾のガラスフィルターとほぼ同様の値であった。一方,低温である25℃では6.4×10-7m/sと小さくなった。以上の結果は,PNIPAMが温度に応答して体積変化し,高温では体積収縮により高分子鎖間の空隙が広がってMOが透過しやすく,低温では体積膨張により高分子鎖間の空隙が狭まってMOが透過しにくくなったことを示している。分子サイズの大きなCRの場合も同様の温度応答性を示したが,その物質移動係数はMOの場合より1桁小さいものとなった。このこともまた,PNIPAM層が分子の拡散抵抗になっていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に実施を予定していた膜透過装置の製作は昨年度既に完成している。また,今年度から膜透過速度の温度依存性の検討を始めることになっており,実際に当初予想していたような結果が得られており,おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はガラスフィルター上に固定化する感温性高分子の相転移温度の制御を行う。具体的にはアクリルアミドのような他のモノマーとの共重合が考えられる。我々のグループの別の実験では,PNIPAMにアクリルアミドを20wt%添加することで,相転移温度を約15℃高温側にシフトさせることに成功している。多孔質膜上でも同様の効果が得られると考えている。また,現在は平面フィルター上へのPNIPAMの固定化を行っているが,チューブ状の多孔質膜上へのPNIPAM被覆も試みる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
おおむね順調に予算を消化してきたが,年度内に使い切ることができなかった。しかし,次年度への繰越額はわずかである。 繰越した補助金についてはガラス器具や試薬代として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)