2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560920
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
仁志 和彦 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (20262412)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 混合 / 撹拌 / 偏心撹拌 / 流脈 |
Research Abstract |
本研究は流れ場における流脈面構造と流体混合の関係を明らかにし、一般化した混合理論の構築を行うものである。主に非対称撹拌を含む撹拌槽を対象に、装置形状の異なる流れ場における流脈面構造と混合性能の関係を明らかにする。本申請の成果として得られる混合理論は流れ場の形状や装置形状によらない一般化したものであり、混合装置の改良、開発に大きく寄与し、これまでにない高度化された混合装置を開発し、新しい産業の展開にもつながるものと期待される。 平成24年度は主に層流状態の検討を行った。実験に用いるトレーサー抽出機構付き垂直パドル翼および、邪魔板条件を変化させられる撹拌槽を作製し、流脈面の観測実験を実施した。 邪魔板無しの中心撹拌における観測は、撹拌レイノルズ数Re=5-70の範囲で実施され、鉛直方向に光切断された流脈面の長さ(流脈面光切断長)および、その表面積相当値の経時的な変化が測定された。この結果に基づき、Reの変化(主に液粘度変化)に伴う流脈面伸展速度の変化が明らかとなり、混合促進に対する流脈面構造の寄与を定量滴に取り扱う指標を得ることができた。 上述の検討は、撹拌翼の設置高さを変化させた場合についても実施され、翼の設置高さを槽底近傍(液深の1/4)やから液自由表面近傍(液深の2/3)とした場合、流脈面の伸展速度は中心撹拌の場合と同程度であるが、それぞれ液面近傍および槽底近傍に流脈面が到達しない領域があることが分かった。このことは撹拌槽における混合作用、メカニズムを議論する上で流脈面包括体積を考慮することの必然性を示唆している。 偏心撹拌についてはRe=20とし、偏心距離を変え流脈面の観測を行った。偏心距離を適切な条件とすることで、槽内の流脈面の伸展する領域が槽全体に及び、極めて良好な混合が期待できる状態となることが分かった。偏心撹拌における流脈面の定量化については現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定した、層流状態にある撹拌槽内の流脈面の観測を実施できた。具体的には2枚パドル翼による中心および偏心撹拌における流脈面光切断長、面積相当値を撹拌レイノルズ数、翼設置高、偏心距離を変え観測することで流脈面構造を定量的に捉えるとともに、それら数値の時間微分から流脈面の伸展速度を推定した。撹拌翼枚数、邪魔板条件についてはいくつかの条件で流脈面観測実験を行ったが、層流状態の撹拌においては、2枚翼や邪魔板無しの結果からある程度結果を推定できる見通しを得たため、詳細な検討は一時中断した(流脈面構造の詳細や混合速度との関係の観点から検討を再開する予定)。 また、上述の実験を数値流動シミュレーション(CFD)で再現する検討も前倒しで実施した。これは、長時間経過した流脈面、すなわち翼部から離れた領域や翼旋回体積内に戻った流脈面の詳細構造を観測することは実験的には難しいと判断されたためである。既存のソフトウェアにより算出される速度分布を用い、粒子法により流脈面を再現するプログラムを開発した。流脈面の実験的な詳細観測が行える条件において同プログラムの妥当性を検証し平成25年度以降の検討の準備が整った。 当初の計画との変更点は、撹拌槽のスケールを槽径10cmとした点である(計画では槽径20cm)。これは、使用液量や実験労力を軽減し、Reや偏心距離に関する実験条件数を、当初の計画より多くするための措置である。槽径20cmスケールでの実験は、平成24年度の検討結果を踏まえ、条件を絞って実施し、流脈面構造に及ぼすスケールアップの影響を明らかにしていく。 上記した状況を鑑み、現在までの達成度はおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は乱流撹拌槽、遷移状態の撹拌を対象に、平成24年度の層流撹拌槽と同様の検討を行う。流脈面構造の計測は、蛍光粒子を同伴添加する可視化手法により観測する。また、観測には高速ビデオカメラを用いて行い、乱流変動が流脈面構造におよぼす影響を併せて明らかにする。さらに、撹拌所要動力の変動値の測定も行い、動力変動が流脈面の構造におよぼす影響も明らかにする。これらの知見を総合し、層流における混合メカニズム(剪断、引き延ばし、折りたたみ、分配等)と乱流におけるメカニズム(乱流拡散)が、それぞれの領域においてどの程度作用しているのかを明確にしていく。また、遷移状態についても同様の混合メカニズムに関する検討を行い、撹拌翼条件による遷移状態の混合構造を明らかにしていく。 CFDによる検討においてはk-ε乱流モデルによる時間平均流による流脈面構造とラージエディシミュレーション(LES)による流脈面構造を比較検討することで、乱流渦(変動)がおよぼす影響を明らかにすることを目指す。 さらに、研究室でこれまでに測定した各種撹拌条件における混合速度に関する実験データを流脈面構造の観点から整理し、混合メカニズムに理論の構築を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(7 results)