2012 Fiscal Year Research-status Report
予冷ターボジェットアフターバーナーにおける水素燃焼および窒素酸化物生成メカニズム
Project/Area Number |
24560971
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津江 光洋 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50227360)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 推進・エンジン / 予冷ターボジェット |
Research Abstract |
水素を燃料とするスペースプレーン用予冷ターボジェットエンジンのアフターバーナーにおける燃焼挙動の解明および環境負荷低減を目的とし,高エンタルピー風洞での燃焼試験を行った.同時に,燃焼メカニズムおよび窒素酸化物生成メカニズムの解明を目的とした,数値シミュレーションを行った. 燃焼器形状はラム型燃焼器であり,主流方向にストラットの二列の噴射口から角度をつけて噴射する.本年度はまず燃焼容器,噴射器の設計および作成,圧力や温度測定法の検討を行った.本年度は風洞試験において,熱電対を用いて燃焼効率を求めた.対向するインジェクタから噴射された水素と主流の干渉の様子を明確にし,噴射角と燃焼効率の関係を明示した.数値計算を同時に行うことにより,噴射挙動の違いが燃焼メカニズムに及ぼす影響を調べ,噴射角の変化は乱流構造に大きな影響を及ぼすことを示した.また,壁面への熱損失が全体の燃焼効率に及ぼす影響を明確にした.この解析手法により,水素燃焼器における最適な燃焼器形状を考える指針になる. 噴射水素の主流空気に対する当量比が過濃の場合,振動燃焼が観察された.この振動燃焼の様子をハイスピードカメラにより観察し,解析を行っている.振動燃焼時においては,燃焼効率は大きく減少する.この現象は希薄条件の場合には観察されなかった.振動の周波数は概ね500Hzであり,インジェクタからのカルマン渦に起因するものでなく,燃焼器の気柱振動によるものであることがわかった. 燃焼効率測定手法では,数本の熱電対を使用し,エンタルピーを推算することで求めた.測定位置や温度むらの影響を大きく受け,誤差が大きいと考えられる.そこで,本研究では,主流中にマイクロメートルオーダーの粒子を加え,その放射により二色法で温度を求める手法提案し,バーナー試験により基礎データの収集を行った.それにより,本手法の有効性を示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,水素を燃料とする予冷ターボジェットアフターバーナ―に対し環境負荷が少なく高効率な燃焼状態の実現をめざし,実験および理論計算により研究を実施している.主流と燃料噴射との干渉,窒素酸化物生成メカニズムの解明,および計測手法の確立を目指している. 実験においては,高エンタルピー風洞を用いた燃焼器の製作,制御系の構築,可視化を含む計測系の構築,安全で安定した運転状態の確立を目標として研究を実施した.本年度において,上記運用が可能であることが確認され,基礎データの取得を行った.燃焼試験において,いくつかの当量比条件において熱効率を求めた結果,おおむね妥当な値が得られている.振動燃焼の発現の確認に加え,それを追跡できる計測システムを構築し観察した.今後の研究発展性を確認することができた. また,同時にCFDによる数値実験手法の構築を行った.アプローチとして,時間スケールの大きな定常計算,および圧縮性を考慮した非定常計算を行った.定常計算においては,詳細反応モデルを用いた,3次元計算により,燃焼効率や窒素酸化物の生成メカニズムの検討が可能となっており,概ね研究実施に必要な手法の確立を行った.非定常計算においては,より乱流燃焼現象や振動燃焼現象を詳細に追跡することを目的とし,コード構築を行った.非燃焼の状態においては,噴射角度と乱流強度の関係を模擬できる状態にある.今後の詳細反応モデルを用いた検証を行うための基盤が本年度に構築された. 粒子を付加した二色法による温度測定においては,ある程度の粒子濃度で比較的精度よく温度測定ができることがバーナー試験で示された.今後,高エンタルピー風洞内の燃焼試験への応用の可能性が示された. 燃焼試験,解析手法,計測手法,数値解析に関する基盤が本年度に確立しており,基礎データも取得し,発展性が示され,概ね順調に進行していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,高エンタルピー風洞を用いたアフターバーナー部での燃焼法の確立,熱電対を用いた燃焼効率測定法の確立,数値計算コードの開発および新たな計測手法の検証,基礎データの取得を行った.今後は幅広い実験条件において研究を実施する. 今後の研究は,希薄から過濃領域に至る幅広い当量比範囲内において,噴射形態の違いが燃焼に及ぼす影響を明確にする.そのためには,正確な温度測定法が必須である.粒子を用いた二色法を高エンタルピー風洞における燃焼試験に応用する.ハイスピードビデオカメラを用いた測定を行うことにより,燃焼効率の詳細な測定に加え,振動燃焼の発生メカニズムを詳細に追跡する.安定した燃焼を実現するには,インジェクタのウエイクを含む保炎メカニズムの解明が必要である.燃焼メカニズムの解明に加え,今後は窒素酸化物の生成に着目する.当量比が過濃領域における高温場での窒素酸化物生成メカニズムの解明を目指す.窒素酸化物の濃度は,赤外分光高度法あるいは化学発光法を用いて測定する.噴射口の配置が千鳥型および直線型に対して試験を行い,環境負荷が少なく,高効率,かつ安定な燃焼の実現を目指す. 数値計算においては,詳細反応モデルを考慮した非定常および定常現象に対する数値流体力学解析を行う.非定常計算においては,窒素酸化物生成機構を含む詳細化学反応モデルを組込む.インジェクタ形態の違いによる振動燃焼メカニズム,保炎機構の解明,燃焼効率,窒素酸化物生成メカニズムの違いを実験と同時に数値計算を行うことで明確にする.また,定常計算においては,窒素酸化物生成機構に関し,反応速度を変化させることによる感度解析を実施する.燃焼器内部の各燃焼ステップにおける主要反応経路および律速ステップの同定を行う. これらの実験および数値解析両手法を同時に行うことにより,水素を用いた環境負荷の少ない高効率な燃焼状態の実現を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は高エンタルピー風洞において,アフターバーナーを想定したラム燃焼器を作成し,実験制御系,冷却系の構築を行った.次年度はこれらの実験装置を改良するとともに,新たなインジェクタを作成する.インジェクタの噴射角および噴射口配置をパラメータとする.インジェクタの製作には,高度な加工技術を要するため,本学の工作室および関連工場で作成できない場合は外部業者に発注を行う.また,二色法を用いた温度計測を実施するため,燃料噴射系には大幅な改良を行う.燃料噴射系の改良にあたり,流量および噴射圧力を調節するためのバルブや測定のための圧力センサなどを購入する.二色法に使う酸化マグネシウムは,燃料に供給する.これらのインジェクタや粒子供給系を作成するのに必要な金属材料,配管機器,バルブ等を購入する.また,二色法を実施するのに必要な光学部品を購入する. また,計測系として,窒素酸化物の測定系を構築する.窒素酸化物濃度測定を行うため,プローブによりサンプリングしたのち,化学発光法により計測を行う.2000K付近の高温ガスにプローブを挿入するため,水冷機構を備え,自動化されたサンプリング系を構築する.それに必要な材料および機器購入に研究費を使用する.また,FT-IRを使用した窒素酸化物濃度測定を検討する.FT-IRを用いた計測を実施するための光学系の構築,およびキャリブレーション用のガスに研究費を使用する. それらに加え,実験を行うのに必要な水素などの燃料費,液体窒素,アクチュエータに使用する空気,酸化マグネシウム粒子などの消耗品は適宜購入する. 電子部品およびコンピュータ関連では,制御系の構築に必要な電子部品,二色法の解析を行うための画像処理かつ実験装置を制御,数値計算結果を解析するために必要なコンピュータ,データ保存用のストレージを購入する.
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Research Products
(3 results)