2013 Fiscal Year Research-status Report
新しい超音速乱流変動計測法の開発と超音速乱流機構の解明に関する研究
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24560976
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
坂上 昇史 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70244655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 隆景 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10175945)
西岡 通男 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (60081444)
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Keywords | 航空宇宙流体力学 / 超音速乱流機構 / 超音速乱流境界層 / 超音速混合遷移 / 熱線流速計 / 定量化シュリーレン法 / 3次元PIV |
Research Abstract |
1.乱流境界層の挙動に関する研究:乱流境界層の平均速度分布は対数分布が成り立つことが広く認められているが,零圧力勾配の乱流境界層は対数分布ではなくベキ乗分布で記述されるべきといった主張がでて,意見の対立が続いている.本研究は,平板乱流境界層のオーバラップ層について非平行性を考慮に入れた解析を行い,一般的なベキ乗分布の解に加えて対数分布の解も得られることを示し,高レイノルズ数の平板乱流境界層では,ベキ乗分布よりも対数分布の方が実験結果を精度よく表現することを確認した.また,この解を用いた壁乱流の平均速度分布が対数分布かベキ乗分布かを診断する新しい方法を提案し,平板乱流境界層の速度分布に適用してその有用性を示すとともに,乱流境界層の平均流の特徴的な挙動として対数分布とベキ乗分布の共存する現象を明らかにした. 2.超音速境界層の乱流遷移に対するマッハ数依存性:矩形断面を有する小型超音速風洞を設計製作し,風洞ノズル壁に発達する境界層のピトー管計測とシュリーレン法による可視化計測により超音速境界層遷移のマッハ数依存性を調べた.境界層遷移は風洞角部に生じた乱流域の横方向汚染により広がり,その広がり角はマッハ数が大きくなるに従って小さくなって遷移領域が下流へ移動することを確認した.また,Van Driest変換により非圧縮流変換した遷移レイノルズ数は主流マッハ数によらずほぼ一定となることを明らかにした. 3.超音速乱流混合場の計測:壁面設置型の縦渦導入デバイスに流入する境界層が縦渦対による超音速混合層に及ぼす影響を明らかにするため,種々の条件でシュリーレン法による可視化計測とステレオPIV計測により流れ場を詳細に調べた.流入境界層が乱流から層流になるとデバイス斜面で境界層が剥離し導入される縦渦の循環が小さくなること,境界層を乱流化することで剥離を抑制すると循環が増加することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
熱線流速計を用いた変動計測では熱線の熱慣性が問題となる.非定常流中でも熱線温度を一定に保つ定温度型熱線回路を用いる場合,熱慣性の影響を無視することができるが,プローブリード線のごくわずかなインダクタンスによって回路が発振するという難点があり,微小振幅撹乱であっても100kHz以上の周波数域を測ることは困難である.また,振幅の大きな非線形変動の熱線計測には誤差がつきものであり,大振幅変動の場合の応答帯域は微小振幅の場合よりも低下する.応答周波数が高い定電圧型熱線回路は超音速流での変動計測に有望であるが,周波数帯域を広げるために熱線の熱慣性を補正する位相補償回路を付加する必要があり,熱線抵抗と熱線回路出力の関係が非線形となるため,大振幅変動の場合には低次の統計量である時間平均値にも変動成分が絡み誤差の原因となる. 本研究では,超音速乱流混合場への適用を考慮した大振幅非線形変動の計測に適した熱線回路の開発を主な目的としており,これまでに,その動作原理と高周波数帯域化の可能性について確認しているが,必要な周波数応答帯域を確保できる回路の実装に問題が生じていた.このため,超音速乱流場のピトー管による平均場の計測やシュリーレン法による可視化計測は行えているが,熱線による変動計測が行えておらず,これが当初の研究計画よりも遅れている主な理由である.なお,問題点を取り除いた回路構成についてはほぼ確定できている.
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Strategy for Future Research Activity |
1.超音速流中の大振幅非線形乱流変動に適した熱線流速計の開発 前述のように,新しい熱線流速計の開発はやや遅れているが,超音速乱流の計測に必要な周波数応答帯域を確保した回路構成をほぼ確定でき,さらに,ノイズや発振といった問題点については解決できている.今後,製作した熱線回路を種々の流れ場の熱線計測に適用してその有効性を確認するとともに,その校正法を確立する.また,その成果を学会誌等で発表する. 2.超音速乱流現象の解明 上記の熱線流速計の校正法の確立と平行して,超音速境界層の乱流遷移や超音速乱流混合場の熱線計測を行い,シュリーレン法による可視化計測や3次元PIV計測による結果と比較して,各計測法の計測精度を確認すると共に,超音速壁乱流機構や縦渦の崩壊過程と混合促進の鍵である混合遷移機構など,超音速乱流現象について詳細に調べる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述のように,新しい熱線流速計の開発が遅れていることが理由の1つである.それとともに,この熱線回路を用いた計測には多チャンネルで高速に同時サンプリング可能な計測器(最低でも10MS/s で8ch同時サンプリング可能であること)が新たに必要であることが判明し,これを購入する(約100万円)ために予算を次年度分と合算することとした. 上述の多チャンネル高速同時サンプリング可能な計測器とその制御用コンピュータを購入する.現在,機種選定中であり,早急に手配する予定である.
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Research Products
(7 results)