2014 Fiscal Year Research-status Report
琉球列島ジュゴン個体群保全のための基礎生物学的研究
Project/Area Number |
24570017
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大泰司 紀之 北海道大学, 学内共同利用施設等, 名誉教授 (50001532)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 隆一 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80192748)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ジュゴン / 海草 / 痕跡調査 / mtDNA / PCR法 / 八重山諸島 / フィリピン / バブヤン諸島 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)骨格標本は、その生物の生態や成長段階、個体群構造などを示す非常に重要な資料となる。しかし、八重山諸島のジュゴンの骨格標本は貝塚等からの出土品などに限られていた。そこで我々はかつて八重山諸島で捕獲され、御嶽内に奉納されたジュゴンの頭骨の中で比較的状態が良好に保存されていた頭骨を用いて形態学的解析を試みた。その結果、少なくとも幼獣から成獣までの72頭分の頭骨が保存されていたことが明らかとなった。 2)八重山諸島周辺におけるジュゴンの遺伝的多様性を把握するため、個体識別された頭骨の一部から微量の骨粉を採取しDNAを抽出した後、ミトコンドリアDNAコントロール領域についてPCR法とPCR産物の塩基配列決定を行った。分析した約50個体の標本から高率に得られた遺伝情報を解析したところ、八重山諸島のジュゴン集団は少なくとも4つの母系列で構成されていたことが明らかとなった。 3)環境省(2004)により、2000年代前半に西表島においてジュゴンと思われる目撃情報が複数報告されていたことから、食み跡の探索および海草群落の生育状況の調査を実施した。この結果、西表島西部において幅5~10cm×直径1.5~4cm程の大型草食獣の糞を複数採取したが、特定には至っていない。また、いずれの海域においても高い被度で海草が現存しており、かつてジュゴンの個体群を支えるに十分な環境であったことが推察された。 4)絶滅寸前となった日本のジュゴン個体群回復のためには近接する生息地からの個体の移入が重要であると考えられる。ジュゴンの移動能力や遺伝的特性などを考慮しフィリピンのバブヤン諸島およびルソン島北部に焦点を当て、海草藻場での潜水と地元漁業者への聴き取りによりジュゴンの生息調査を行った。その結果、直接的な生息を示す痕跡は発見できなかったものの、複数の目撃情報を得たとともに一定のジュゴン個体群を支え得る健全な海草藻場が現存していることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示すように、ほぼ目的を達成することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
我が国におけるジュゴンの保護のためには、沖縄島に残っている3~4頭の保全、および佐渡のトキ保護センターのように域外保全を行う必要がある。それらについて計画を作成して次の申請に臨みたい。
|
Causes of Carryover |
主たる調査対象であるジュゴン頭骨が奉納されていた新城下地島の七門御嶽が本年夏竹富町文化財に指定される運びとなった。その折に地元で説明会を行う必要が生じ、その費用が必要なため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
札幌・横浜から説明会場の石垣島までの2名分の旅費として使用予定。
|
Research Products
(1 results)