2012 Fiscal Year Research-status Report
大気からの蒸散要求に対するアクアポリンの応答機構とそれが通水性に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
24570034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
村井 麻理 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター生産基盤研究領域, 主任研究員 (00343971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 淳子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター生産基盤研究領域, 主任研究員 (40343959)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イネ / 水分生理 / アクアポリン / 蒸散要求 |
Research Abstract |
本研究は、大気からの蒸散要求に対するイネ根のアクアポリンの発現量の変化とそれが通水性に及ぼす影響を観察し、その自然環境変動適応性を明らかにすることを目的としている。初年度である平成24年度は、実験手法の確立に重点を置いた。蒸散要求量の具体的指標として使用するポテンシャル蒸発量については、連携研究者である桑形恒男氏の協力を得て、東北農業研究センターの気象観測所で観測された時別の気象データを元に、時刻別のポテンシャル蒸発量を計算する方法を整備した。また、人工気象室の栽培実験等で得た植物材料を用いて、アクアポリン等の遺伝子発現量を正確に定量する手法の確立に取り組むとともに、根の通水性(水透過性)を精度よく測定するために、プレッシャーチャンバを用いて根の水透過性の測定を試みた。イネは単子葉植物でありその形態的な特性のために、根の基部(葉鞘)の付け根の部位をパッキングしてプレッシャーチャンバに装着し、根部位を加圧する場合に、加圧に伴う地上部切除部位からの出液が根を通過したものなのか、それとも葉鞘部位をバイパスしたものなのかの判定が難しいことが分かった。そこで種子根のみを生育させたイネ幼苗を用いて、種子根基部をプレッシャーチャンバに装着することでこの問題が回避できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、本研究課題の初年度にあたり実験手法の確立に重点を置き、当初の予定どおりに進捗した。蒸散要求量の具体的指標として使用するポテンシャル蒸発量については、気温、湿度、日射、風速、長波放射量などの観測データから計算する手法が整備できた。また、アクアポリン発現量の定量については、根で発現している約17種類のアクアポリンの分子種の遺伝子発現量(mRNA量)をリアルタイムPCR法によって定量する手法もほぼ確立された。さらに根の通水性(水透過性)の測定するために、プレッシャーチャンバを用いて根の水透過性の測定を試み、種子根で生育させたイネを材料に用いれば測定が可能なことが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに整備した解析手法に基づき、アクアポリン発現の気象変動応答性を評価するとともに、発現変動性と植物体の水分特性との関係を解析する。具体的には2、3週間程度一定の生育ステージに達するまで栽培した水稲を材料に用い自然条件下で晴天、曇天、雨天などの天候の違いが前日または当日の根のアクアポリン発現量に及ぼす影響を解析する。ポテンシャル蒸発量Epとの相関が高いアクアポリンについては時系列データをさらに詳しく解析することにより、そのアクアポリンが「過去何時間(あるいは過去何日間)のEpの変化と相関が高いのか」あるいは「発現量に影響力が大きいのはEpの変化率なのかそれとも平均値なのか」などの観点から解析を行う。特定の気象条件に対するイネの応答を精査する必要が出て来た場合には、人工気象室を用いた栽培実験も行なう。またアクアポリン発現量の変動がイネの水分特性にどの程度反映されているかの評価を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の代表者(村井麻理)は平成24年4月1日~8月31日まで産後休暇及び育児休業を取得し、これにともない研究開始を9月1日に延長するとともに、補助事業期間を当初の平成26年度から一年延長して27年度までと修正させて頂いた。これにともない研究計画を一部修正し、当初予定していたアクアポリン遺伝子発現量と気象条件の関係解析等を次年度以降に延期した。当初計画では人件費謝金も見込んでいたが、研究補助員等を雇用しての遺伝子発現解析は次年度に実施することにした。これらの理由により、実支出額は当初予定額を下回った。この研究費(次年度使用額)も含めて、次年度の研究費は野外条件下で栽培したイネを材料に気象条件とアクアポリン発現量の解析する。またアクアポリン発現量の変動がイネの水分特性にどの程度反映されているかを解析する予定である。
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