2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24570072
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉国 通庸 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50210662)
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Keywords | 卵黄蛋白質 / マナマコ / 卵黄形成 / 卵成熟誘起ホルモン |
Research Abstract |
ナマコ類の卵成熟誘起機構を解明する為に、(1)クビフリン作用により誘導される2次物質(COS)精製の為の抽出液の作成を継続した。26年度に解析を行う予定である。(2)マナマコの卵巣の発達における卵黄蛋白質(MYP)の動態を解析した。従来、マナマコのMYPは体腔液中の可溶性成分として存在し、卵巣を経て卵母細胞に取り込まれることで卵黄形成が進むと考えられてきた。本研究では、MYPの存在様態が体腔液中の可溶性画分中には含まれておらず、超遠心操作により初めて沈降しうる直径1ミクロン以下の微小な小胞に含まれていることを明らかにした。また、MYPはナマコの体壁を構成する界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム:SDS)により可溶化される蛋白質画分中の最も主要な構成成分である事を明らかにした。MYPの産生組織は未解明であるが、生合成されたMYPは小胞に集積された形で体腔液中に放出され、卵巣へと輸送されると考えられる。また、同時に体壁へも輸送・蓄積されていると考えられる。マナマコを無給餌状態で飼育しても、ある程度の卵巣の発達が観察されることから、MYP産生組織-体壁-卵巣間での貯蔵・輸送経路が存在する可能性があると考えられる。体腔液中の微小小胞はDAPI染色に陰性を示す事から、非細胞性の構造であると思われる。同小胞及び卵巣壁中のMYPのアミノ酸配列の解析から、これらの構造中にはMYP1とMYP2の2種類のMYP蛋白質が同時に存在していることが示されたが、その量的比率は未解析である。また、卵母細胞発達中のMYPはSDS電気泳動上で約200KDaの分子量を示すが、卵母細胞の直径が最大径を示す時期になると、卵成熟が誘起される前の未成熟な状態であっても、分子量が190KDaへと変化することが明らかとなった。卵母細胞発達の最終期を示す分子マーカーの一つとして捉えることが出来ると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マナマコの卵成熟は、神経ペプチドクビフリンが卵巣内の未知の組織に作用して新たに2次物質の産生を促し、その2次物質が卵濾胞に作用して誘導されると考えられる。本課題では、目的の一つとして、この2次物質の解明を目指している。手法としては、クビフリンで刺激した卵巣から培養液中に2次物質が漏出してくると考え、摘出した卵巣をクビフリンと共に培養した後に培養液(卵巣容量と等容の培養液を用いる)を回収し、その中に含まれる2次物質を単離・精製する計画である。これまでの先行研究から、その含有量は極めて低いと予想されており、十分量の培養液を集める必要がある。昨年度の予備的な解析を参考に、数リットル程度の培養液を収集する実験を進めている。現在、2リットル程度の培養液が蓄積できた。本年度末に入手できたマナマコ(約130匹)の卵巣発達度が不十分で、今期に予定した培養液の収集が不足する可能性を懸念している。収集した培養液からの2次物質の精製は26年度に進める予定である。 卵成熟機構を考える上で、卵母細胞の肥大成長を支える卵黄形成の仕組みを明らかにすることも重要である。マナマコでは、既に2種類の卵黄蛋白質(MYP)遺伝子が明らかにされ、各々の蛋白質の発現も確認されている。本研究では、MYPの卵巣への輸送に関わると思われる体腔液中の微小な小胞の存在を明らかにした。また、体壁を構成する可溶性蛋白質の主成分がMYPから構成されることも明らかにした。MYPの産生組織はまだ特定できていないが、小胞を介した体腔内輸送機構の存在と体壁が貯蔵器官として働いている可能性を明らかにした。マナマコの卵黄蛋白質輸送機構の解明に繋がる新たな発見である。 以上の2点から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度には、計画の予定通りに、卵巣培養液中の2次物質の本精製を開始する。 また、卵黄蛋白質(MYP)の産生組織を特定する予定である。MYP遺伝子は既に明らかにされているので、PCR法により、マナマコの種々の組織・器官におけるMYPmRNAの発現の有無を解析する。PCR法により特定されたMYP産生組織は、さらにin situ hybridization法により、MYP産生細胞の特定を試みる。
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