2012 Fiscal Year Research-status Report
ショウジョウバエ求愛歌生成を制御する神経回路の同定とその動的特性の生理学的解析
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24570082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小金澤 雅之 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (10302085)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 求愛行動 / fruitless / doublesex |
Research Abstract |
1:強制活性化法を用いた求愛歌生成に関わる神経細胞群の同定 (A) ショウジョウバエの体細胞性決定因子fruitless(fru)とdoublesex(dsx)を発現する神経回路に注目して実験を行った。温度感受性チャンネルdTrpA1をfruもしくはdsx発現ニューロンに異所発現し、高温条件下でこれらのニューロン群を強制活性化することによって、pulseとsineから構成される正常な音響パターンを持つ求愛歌が生成されることが明らかとなった。さらに少数のニューロンのみを操作する機能的モザイク解析により、異なるニューロン群の強制活性化は求愛歌の異なる音響要素を生成することを見出した。(B) 胸部分節化に関わるteashirt(tsh)遺伝子を利用して、脳もしくは胸部神経節のみのfru/dsx発現神経細胞をdTrpA1により強制活性化する実験を行った。脳のfru/dsx発現細胞を強制活性化したところ、片翅展開が観察されpulse songが誘導できることが明らかとなった。またこの条件では明確なsine songは生成されなかった。一方で、胸部のfru発現ニューロンのみの強制活性化で生成される音響パターンは求愛歌とは全く異なり、翅展開についても両翅展開となることが明らかとなった。以上の結果より、pulseとsineから構成される片翅展開に伴う正常な求愛歌生成は、胸部の運動パターン生成回路の強制活性化のみで生成できるのではなく、脳に由来するコマンド信号との相互作用により生み出されている可能性が示唆された。 2:単離脳標本を用いた求愛歌生成神経回路の生理学的解析 ニューロンの強制活性化とCa2+イメージングを組み合わせた記録システムの構築および予備実験を行った。また、H25年度以降に計画していたパッチクランプ法を用いたニューロンからの電気生理学的応答記録システムの構築を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1:強制活性化を用いた求愛歌生成に関わるニューロン群の同定に関しては、複数のfruもしくはdsx発現ニューロンを同定するとともに、正常な求愛歌の生成に脳と胸部神経節のニューロン群の相互作用が必要である可能性が示唆できた。計画をやや上回る成果が得られている。 2:単離脳標本を用いた求愛歌生成神経回路の生理学的解析については、温度感受性チャンネルを用いてニューロンの強制活性化を試みたが、温度変化による脳標本の移動が大きくCa2+イメージングの際に障害をもたらすことが判明した。より強固な脳固定法の開発が必要であることが判明した。また、fru/dsx発現神経回路全体のイメージングと同時に少数のニューロンのみにdTrpA1を発現させる事を目的として、hs-Flpを用いたモザイク個体作成を行った。しかし、僅かの熱ショックにより多数のニューロンがラベルされてしまうことが判明し、少数のニューロンのみを選択的に活性化する方法を再度検討する必要が認識された。一方で、生理学的研究に関してH25年度以降に計画していたパッチクランプ法を用いたニューロンからの電気生理学的応答記録システムの構築を前倒しで始めることができた。 以上を総合的に判断して、計画はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1:強制活性化法を用いた求愛歌生成に関わる神経細胞群の同定については、機能的モザイク実験により求愛歌生成に関わるニューロン群の同定をさらに続ける。また求愛歌生成の特徴、例えば片翅展開の制御や、pulse songとsine songの切り替え制御など、求愛歌生成の特徴に関わるニューロン群およびその機能的接続関係を明らかにしていく。 2:単離脳標本を用いた求愛歌生成神経回路の生理学的解析については、温度感受性チャンネルを用いる場合の温度変化による脳標本の移動を低減するために、より強固な脳固定法の開発を行う。さらに温度変化を必要としないChR2などを用いた光刺激によるニューロンの強制活性化も併用して実験系を構築する。またCa2+イメージングでは検出困難であるような微小かつ時間的解像度の高い現象を解析するために、パッチクランプ法を用いたニューロン活動の記録システムの構築を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日常的に使用する、ハエ飼育に関わる試薬・器具等、分子生物学的・生理学的実験に必要な試薬類などの購入に物品費を充てる。特にH24年度に開始したパッチクランプ法を用いた電気生理学的実験システムの整備のための機器類が高額になるために、物品費を多く供給する。研究成果発表の為の学会出張旅費、および研究成果を雑誌に投稿する際の英文校正・投稿料等としてその他の費目をあてる。
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[Journal Article] Fruitless recruits two antagonistic chromatin factors to establish single-neuron sexual dimorphism2012
Author(s)
Ito, H., Sato, K., Koganezawa, M., Ote, M., Matsumoto, K., Hama, C., Yamamoto, D.
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Journal Title
Cell
Volume: 149
Pages: 1327-1338
DOI
Peer Reviewed
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