2013 Fiscal Year Research-status Report
シダ類の頂端細胞型シュートを形成する遺伝子の機能解析
Project/Area Number |
24570098
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山田 敏弘 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (70392537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 智明 金沢大学, 学際科学実験センター, 助教 (50390688)
今市 涼子 日本女子大学, 理学部, 教授 (60112752)
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Keywords | シダ類 / 葉 / 珠皮 / リチャードミズワラビ |
Research Abstract |
1)シダ類における背腹性形成因子の機能解析 HD-ZIPIII遺伝子は,種子植物の葉の向軸側組織で発現し,向軸側の性質決定に関与する。リチャードミズワラビにおけるHD-ZIPIII遺伝子の機能を推定するため,昨年度とは別のHD-ZIPIII遺伝子(CrC3HDZ)について発現解析を行った。その結果,CrC3HDZは胞子体世代で強い発現が観察されなかった。一方,パーティクルガンを用いたDNA干渉によりCrC3HDZを一過的にノックダウンすると,造精器の細胞増殖が過剰に促進され,肥大した造精器が形成された。また,胞子体世代においてもCrC3HDZのノックダウンを行ったが,明確な表現型は得られなかった。以上の結果から,CrC3HDZが配偶体世代における細胞増殖を制御する機能を持つ可能性が示唆された。 2)シダ類の葉と種子植物の珠皮の背腹性形成機構の比較 シダ類の葉,種子植物の葉,種子植物の珠皮は,軸的器官から平行進化した。前年度のHD-ZIPIII遺伝子に関する研究で,シダ類と種子植物の葉の背腹性形成機構に共通性が無い可能性が示唆された。今年度はシダ類の葉と種子植物の珠皮を比較するため,種子植物シロイヌナズナの珠皮の形成におけるHD-ZIPIII遺伝子の役割を解析した。その結果,HD-ZIPIII遺伝子は珠皮の背腹性形成に関与する一方,細胞増殖を抑制する可能性が見いだされた。1)の結果と合わせると,HD-ZIPIII遺伝子はもともと細胞増殖を抑制する機能を持つ可能性が考えられた。 3)RNA-seq用サンプルの調整 前年度に抽出した器官別RNAから,シュート頂について,RNA-seq用ライブラリーの作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)サンプル調整の難しさから,RNA-seqの進行がやや遅れている。 2)当初計画では,RNA-seqの結果に基づき,さらにin situ ハイブリダイゼーションによる発現解析を進める予定だったが,1)の遅れの影響を受けた。しかし,種子植物で葉形成に関わる遺伝子のホモログについてシダ類で解析を進めることにより,遅れを多少取り戻した。 3)当初計画したノックダウン実験については,予定通り実行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)26年度は,シュート頂以外の部分(根,普通葉,胞子葉,配偶体)におけるライブラリ作成を速やかに行い,葉形成に特異的働く遺伝子群の探索を行う。 2)今年度,種子植物の珠皮を加えた解析を行うことにより,HD-ZIPIII遺伝子が,シダ類の葉,種子植物の珠皮と葉に共通する機能を持つことが明らかとなった。この機能は,維管束植物の共通祖先であるトリメロフィトン類の出現までに獲得した機能である可能性が高い。珠皮も比較の対象に加えるて同様な解析を行うことで,トリメロフィトン類の体制を復元できるかもしれない。当初の計画では珠皮を解析対象に加えていなかったが,26年度は珠皮を加えることで,より広範な体制進化の理解につなげる。
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