2012 Fiscal Year Research-status Report
交雑集団を利用した近縁種間における異なる花冠長への分化過程および維持機構の解析
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24570101
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山城 考 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (50380126)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アキチョウジ / ヤマハッカ / 交雑集団 / マイクロサテライト |
Research Abstract |
アキチョウジ(シソ科植物)からDNAを抽出し、ビーズ濃縮法により10個のマイクロサテライト遺伝子座を増幅させるプライマーを開発した(Application in Plant Scencesに投稿中)。開発したプライマーのうち増幅効率が良好な8つを使用して、アキチョウジ8集団、ヤマハッカ2集団、推定交雑集団2集団の計252サンプルの遺伝子型の決定を行った。12集団から得られた遺伝子型についてSTRUCTUREを使用し、集団のアサインメントを行った結果ΔKは2であり、ヤマハッカとアキチョウジの2つに分かれた。推定交雑集団2つのうち徳島県大滝山の集団の交雑性は支持されなかった。愛媛県東温市の集団では高い確率で2集団のadmixtureが見られ、交雑集団であることが支持された。また、12集団について葉の形態7形質、萼と果実の形質9形質を用いて、主成分分析を行った結果、STRUCTUREでadmixtureが検出された東温集団の個体ではアキチョウジとヤマハッカの中間にプロットされた。東温の交雑集団における結果率はリファレンス集団のアキチョウジとヤマハッカではそれぞれ、80%と86%であり、交雑個体では62%であった。これらの果実サンプルについては、現在発芽実験を行っている。交雑個体における送粉昆虫の観察の結果ではヤマハッカとアキチョウジではミツバチとトラマルハナバチの訪花が観察された。このうちミツバチはアキチョウジを避け、ヤマハッカのみを訪花していたが、トラマルハナバチはヤマハッカ、アキチョウジ、交雑個体を区別せずに訪花していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
推定交雑集団の大滝山集団について、交雑由来の可能性を示すことができなかった。これは、実験計画で想定した過去の交雑に対して、使用した遺伝子マーカーの進化速度が速すぎる可能性が考えられる。そのため、次年度では計画を一部変更して、核遺伝子の塩基配列の決定を行い、交雑由来の検証を行う。また、送粉昆虫については当初の予定では、花部形態と口吻のマッチングが見られそれぞれ、異なる送粉者に媒介されていると推定していた。しかし、トラマルハナバチはアキチョウジとヤマハッカを訪花することが明らかになった。しかし、ヤマハッカでは花序の強度が弱く、トラマルハナバチが訪花をすると植物体が倒れてしまう現象が観察された。このことから、次年度は捕縄を作成し、トラマルハナバチのアキチョウジとヤマハッカへ対する受粉能力の比較を行う必要があることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年で遺伝子マーカーの開発、交雑集団とリファレンス集団の遺伝子型決定、形態形質の測定は終了している。本研究を遂行する上で、今後の課題としては、1)遺伝子と分子交雑指数の比較、2)次世代集団の遺伝子型と形態解析、3)送粉昆虫の両親種と交雑個体へ対する送粉の有効性、4)讃岐山地集団の交雑由来の検証の4つがあげられる。 1)については、New hybridなどのソフトウェアを使用し、データー解析を進める。2)に関しては、現在発芽実験を行っているので、発芽した芽生えからDNA抽出を行い、遺伝子型決定を行い、得られたデータについて父性解析を行う。3)の送粉昆虫の有効性は野外調査からは確認が困難であるため、徳島大学薬学部の植物園において実験集団の作成を行う。5×10m程度のネットでおおったアキチョウジ、ヤマハッカ、交雑個体、それぞれ20個体からなる人工集団を3つ作成する。人工集団にトラマルハナバチを離し訪花させ、結果率を調べ、受粉効率の評価を行う。4)については、マイクロサテライトより、進化速度の遅い、核遺伝子の塩基配列の決定を行い、交雑由来かを検証していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の直接経費の内訳は物品費550,000、旅費100,000、その他50,000である。物品は主に、発芽個体の遺伝子型決定および讃岐山地の交雑由来の検証のための核遺伝子のシーケンスに必要な試薬及び消耗品に使用する。遺伝的解析に使用する消耗品としては、キャビラリー、ポリマー、サイズマーカー、ホルムアミド、ターミネーター、DNA合成酵素、チップ等プラスチック類の購入が主になる。また、人工集団作成のための資材(ネット、支柱)の購入にも使用する。旅費は一部をサンプリングと野外調査(主に愛媛県東温市)に使用し、平成26年3月に行われる日本植物分類学会(熊本)への参加の出張費として使用する。その他は形態解析と遺伝子解析をまとめた投稿論文の英文校閲費として使用する予定である。
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