2012 Fiscal Year Research-status Report
ケハダスナホリムシ(軟体動物・尾腔綱)の生殖周期の研究
Project/Area Number |
24570118
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 寛 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (00259996)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 軟体動物 / 尾腔類 / 生殖周期 / 分類 |
Research Abstract |
本年度は若狭湾西部の水深100 m付近において、2012年7月から2013年3月までの各月、合計9か月分のケハダスナホリムシ標本の採集を実施し、各月30個体以上(35-88個体)、合計457個体の標本を得ることができた(但し3月は選別作業中で含めず)。また各月に、CTDを用いて海表面から海底までの水温と塩分を測定記録した。得られた標本は、順次、定めた部位から体表の棘を採取してプレパラートを作成した後、生殖巣が存在する体の中央よりやや後ろの一部分を薄切し、組織切片のプレパラートを作成した。 この結果、まず棘の形態観察から、サンプル中には極めて類似する2種が存在することが伺われたため、棘と共に重要な分類形質である歯舌も観察したところ、両者の間に著しい形態の差異が認められたことから、採集地点にはケハダスナホリムシ属の未記載種2種が生息することが分かった。 これをもとに体表の棘の形態を観察して両者を区別し、個体数の多い方の種のみについて、切片を作成し、生殖巣の観察を進めた。これまで7月から10月に採集された標本と、本研究開始前の2013年3月に採集された標本の、各月5-10個体の生殖巣の観察を実施したところ、7月から9月に採集された標本では、成熟に近い、あるいは成熟した卵と精子が認められたが、10月に得られた標本では、これまで生殖細胞が認められていない。また3月の標本には未成熟の生殖細胞が認められた。このことから9-10月にかけて産卵が行われている可能性があることが予測される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では各月に十分な個体数の標本を採集する必要があるが、冬季は予想以上に海況が悪い日が多く、採集が困難になることが予想されたため、できるだけ早期に標本を確保するよう、計画を変更した。このため、当初計画の4か月分より多い、9か月分の資料を確保することができた。一方、切片作成については、当初計画よりやや遅れている。これは網で採集される海底の砂泥から標本を選別する作業を優先したためである。選別を優先した理由は、標本を砂泥と共にホルマリンの中に長期間入れておくと、液が酸性に傾き、石灰質でできた体表の棘が溶解してしまう恐れがあるためである。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、4月から6月の3ヶ月の採集を連続して行うことで、昨年度分と合わせ、1年分の標本が揃うことになる。これを基に、組織切片作成作業を進め、まず、各月最低10個体分の組織切片を1年分観察し、産卵周期の概要をつかみたい。その後できるだけ多くの個体の組織切片を観察する。もし上記研究実績の概要で記したように9月から10月の間に産卵が行われる可能性が高まれば、この間に2、3度の採集を行い、産卵時期の解明に近づきたい。もし産卵期をより絞り込めれば、各種刺激による産卵誘発等を試みる。分類学的な成果は本年度中に公表する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費使用計画は、当初計画とほぼ同じで、次のような計画である。 国内旅費:5回から6回の舞鶴水産実験所までの旅費・宿泊滞在費 300(千円)。 人件費・謝金:標本選別、プレパラート作成、組織切片作成支援 8人日x12か月分 768(千円) 消耗品:船舶燃料代、薬品類(固定・保存液、染色液等)、標本瓶、スライドグラス等232(千円)
|