2014 Fiscal Year Research-status Report
ケハダスナホリムシ(軟体動物・尾腔綱)の生殖周期の研究
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24570118
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 寛 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (00259996)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 軟体動物 / 尾腔類 / 生殖周期 / 分類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は産卵のタイミングを絞り込む目的で、産卵期と推定される期間に3回の調査航海を実施して標本の採集を行った。同時にCTDで表面から海底までの水温と塩分を測定記録した。得られた標本は、定めた部位から体表の棘を採取してプレパラートを作成・同定した後、生殖巣が存在する部位を薄切し、連続切片のプレパラートを作成して観察した。各月30個体、12か月分で合計360個体分の切片を作製する予定であるが、これまでのところ3分の2にあたる240個体分の切片を作製した。これには12か月分の標本が少ない月でも10個体含まれており、生殖細胞発達過程の概要をつかむことができた。 産卵誘導の実験では、実際に放卵、放精と、その後の発生を幼生初期まで観察することができた。産卵誘導では異常発生が見られるものの、一部は正常に発生し、幼生となって泳ぎまわるものも観察された。さらに、同所的に棲息する同属別種との区別や、成熟期には外観で雌雄を区別することも可能であることがわかり、今後の進展が期待できる結果が得られた。 分類学的研究では採集地点に棲息するケハダスナホリムシ属の2種と、同じ尾腔綱の別科であるケハダウミヒモ科の2属2種の合計4種を新種として記載し公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
切片作成については、当初計画より遅れている。これは網で採集される海底の砂泥から標本を選別する作業を優先したためと、切片作成補助者が海外留学し、代わりに作業できる補助者を見いだせなかったためである。選別を優先した理由は、標本を砂泥と共にホルマリンの中に長期間入れておくと、液が酸性に傾き、石灰質でできた体表の棘が溶解して同定が困難になる恐れがあるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
残り3分の1の生殖腺組織切片作成作業と観察を進める。これにより各月30個体分の生殖腺を1年分観察し、これまでに推定されている産卵周期と産卵期を明らかにしたい。組織切片作成の経験がある補助者を本年4月から雇用しており、切片作成作業は進展している。生殖腺の観察、卵サイズの計測も行っており、研究結果の公開に向けて情報を蓄積する。産卵推定時期に産卵期の絞り込みと、その条件を考察するために1度採集を行い、同時に各種刺激による産卵誘発と発生の観察を試みる。
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Causes of Carryover |
研究期間の3年間で1年分各月の標本を得る計画であったが、冬季の荒天や調査船運用の都合等を考慮し、標本の採集と選別作業を最優先した結果、組織切片作成作業に遅れが生じた。この作業ができる切片作成補助者を長期間見いだせなかったことと、見出しても作業時間が限られていたことで、未使用額が発生した。また投稿費用(カラー頁費用約16万円)が出版社より支出され、不要となったことも理由の一つである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
組織切片作成完遂のため、未使用額はその経費(主に人件費と、作成のための薬品類)に充てる。組織切片作成補助者これまでの作業者とは別の熟練者がすでに作業を進めている。
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Remarks |
採集と観察を実施した京都大学舞鶴水産実験所のwebページに研究成果の一部が掲載されている。http://www.maizuru.marine.kais.kyoto-u.ac.jp/katsudou/news.html
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Research Products
(2 results)