2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24570170
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
斉藤 修 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (60241262)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 渋味 / 味覚 / センサー |
Research Abstract |
本研究では、渋味感覚の分子機構解明に向け「味覚神経上ではTRPA1とTRPV1が茶カテキン(EGCG)を感じる渋味センサーであり、それらが活性化されることが渋味感覚を導いている。」という仮説を立て研究を進めている。昨年度は、以下の成果を得ることが出来た。(1)ヒトとマウスのTRPA1は、4種のカテキンの中で、どちらもEGCGで最も活性化されるが、ヒトの方がマウスよりEGCG感受性が高いことが判明した(マウスEC50=約50μM、ヒトEC50=約10μM)。また、それらの活性化は、5μM Rutenium Red(RR)で部分抑制され,100μM AP-18と100μMHC-030031で遮断された。(2)感覚神経に発現する他のTRPの中では、TRPV1がEGCGに反応した。さらに、TRPV1は、2μM以上で活性化されTRPA1よりEGCG感受性が高かった。また、その応答は5μMRR, 10μMcapsazepin(CPZ)で遮断された。(3)TRPA1とTRPV1を発現するマウス後根神経節由来の培養感覚神経は、EGCGにより濃度依存的に刺激された。更に、その応答は、100μM AP-18とHC-030031では部分抑制され、10μM CPZでは完全抑制された。即ち、感覚神経のEGCG応答は、実はTRPV1をメインに介していると考えられた。(4)溶解直後のEGCGはTRPチャネルを活性化せず、数時間経過したEGCGがTRPチャネルを活性化する事が判明した。酸化防止剤のVitamin C添加でEGCGへの応答が消失した。HPLCとLC-MS解析より、時間経過により出現したのは、EGCGの二量体Theasinensinであった。即ち、Theasinensinが、渋味リガンドの実体である事が示唆された。内容の一部を院生が学会発表し、学術奨励賞を受賞(第28回茶学研究会)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画通り、渋味センサー候補のTRPA1とTRPV1が示す茶カテキン類へのリガンド特異性や種々の阻害剤の効果について、多くの知見を得ることが出来た(前述の(1),(2))。また、同時にEGCG二量体のTheasinensinが、真の渋味リガンドの実体である可能性を見出す事に成功した(前述の(4))。今後、Theasinensinを合成することが出来、この分子のみに渋味リガンドの活性がある事が示せれば、極めて大きな味覚研究上の発見につながる。また、平成24年度に計画した渋味センサー上の渋味リガンド反応部については、ゼブラフィッシュの二種のTRPA1(zTRPA1a,zTRPA1b)を用いて有意義な結果を得る事に成功した。即ち、zTRPA1aが茶カテキンEGCGに反応すること、一方zTRPA1bはEGCGに反応しないこと、更にzTRPA1aがN端のアンキリンリピートの5番目から10番目をzTRPA1bのものに交換されるとEGCG応答性を失う事を発見した。今後、この解析を続けることで、EGCGのTRPA1上の作用点を見出していくことが出来る。加えて、もともとは平成25年に計画した実験であったが、計画が順調に進んだ為、マウスの感覚神経を用いた渋味応答解析を実施した。結果、マウス後根神経節由来の培養感覚神経が、茶カテキンEGCGにより活性化され、その感覚神経の応答が実は主にTRPV1を介している可能性が示唆される事になった。今後、更に詳しい検証を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(渋味リガンドの特定)昨年度は、茶カテキン類の中でEGCG二量体のTheasinensinが、真の渋味リガンドの実体である可能性を見出した。今後は、四位らの方法(Chem Pharm Bull 59:1183, 2011)などによりTheasinensin合成を試み、LC-MS・LC-MS/MSにより分析し、Theasinensin合成を確認する。そして、このTheasinensinのTRPA1,TRPV1,後根神経節細胞に対する作用を解析し、さらに各チャネル阻害剤の効果を調べ、渋味センサーを活性化する渋味の実行成分を明らかにする。 (センサー上の渋味リガンド認識部)昨年度は、ゼブラフィッシュのzTRPA1aのN端のアンキリンリピート内に茶カテキン認識部位が存在する可能性が示された。そこで、さらに詳細なキメラ解析を行い、カテキン認識に必要不可欠な部位を決定する。その上で、その配列情報から哺乳類更に他の生物のTRPA1とTRPV1のカテキン認識部を予想し、正常及びその部位の変異体TRPチャネルを発現し、カテキン応答能を解析する。そして、渋味センサーが如何に渋味物質を認識しているかその分子基盤を確定すると同時に、動物がどのようにして植物由来の渋味成分を認識できるように進化的してきたか考察する。 (実際の感覚神経の渋味応答)昨年度の解析で、実際の培養感覚神経が、茶カテキンEGCG(Theasinensin)により活性化され、その応答が主にTRPV1を介することが示唆された。今後、更に詳しく培養感覚神経の応答特性解析やKOマウス(TRPA1-KO、TRPV1-KO)の培養神経を用いた研究を行い、TRPV1を使った直接の応答であることを確定する。更に、マウス個体を用いた渋味応答の行動学的検討も実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、種々のチャネルリガンドの購入、分子生物学的実験用のプラスチック・試薬購入、細胞培養用及びCa2+イメージング用の試薬購入など、物品費の全ては消耗品購入に充てる予定である。また、現在、学会発表のエントリー準備を始めており、学会参加の為の旅費としての使用が予想される。更に論文作成の為の、英文校正依頼費が必要である。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Green Tea Polyphenol Epigallocatechin Gallate Activates TRPA1 in an Intestinal Enteroendocrine Cell Line, STC-1.2012
Author(s)
Kurogi, M., Miyashita, M., Emoto, Y., Kubo, Y., and Saitoh, O.
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Journal Title
Chem Senses
Volume: 37
Pages: 167-177
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 渋味センサー探索の試み2012
Author(s)
黒木麻湖、河合靖、長友克広、久保義弘、齊藤修
Organizer
日本味と匂学会 第46回大会
Place of Presentation
大阪大学コンベンションセンター
Year and Date
20121003-20121005
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