2013 Fiscal Year Research-status Report
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24570170
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
斉藤 修 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (60241262)
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Keywords | 渋味 / 緑茶 / カテキン / TRPA1 / TRPV1 |
Research Abstract |
本研究では、渋味感覚の分子機構解明に向け「味覚神経上ではTRPA1とTRPV1が茶カテキン(EGCG)を感じる渋味センサーであり、それらが活性化されることが渋味感覚を導いている。」という仮説を立て研究を進めている。これまでに以下の成果を得ていた。(a)TRPA1は、緑茶カテキンEGCGで活性化される。(b)感覚神経の他のTRPの中では、TRPV1がEGCGに反応する。さらに、TRPV1はTRPA1よりEGCG感受性が高い。(c)TRPA1とTRPV1を発現するマウス後根神経節由来の培養感覚神経は、EGCGにより活性化される。(d)溶解直後のEGCGはTRPチャネルを活性化せず、数時間経過したEGCGがTRPチャネルを活性化する。HPLCとLC-MS解析より、時間経過により出現する物質の中に、生理活性の高いEGCGの二量体Theasinensin A/Dが存在した。今年度は、更に以下のような研究成果を得た。 1(渋味リガンドの特定):Theasinensin Aを精製し、TRPA1とTRPV1に対する作用を解析して、Theasinensin Aが数時間経過し酸化したEGCG溶液に出現する渋味感覚を引き起こす物質の一つである事が明らかになった。 2(センサー上の渋味リガンド認識部):魚類のゼブラフィッシュの二種のTRPA1(zTRPA1aとzTRPA1b)をキメラ解析した結果、zTRPA1aの渋味認識部位がN端に存在する事が示唆された。一方、各種の動物のTRPV1及びTRPA1の酸化EGCGへの反応性を解析した結果、TRPV1は鳥類から、TRPA1は哺乳類からカテキン反応性を示すことが明らかになった。以上の解析から、動物がどのようにしてTRPV1とTRPA1を使って植物由来の渋味成分を認識できるようになってきたか、解析することが可能になった。 3(実際の感覚神経の渋味応答):実際の培養感覚神経が、酸化EGCG、Theasinensin Aにより活性化され、その応答においてTRPV1とTRPA1の相互作用が関与している事が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「渋味リガンドの特定」については、四位らの方法により合成・精製に成功したTheasinensin Aは、酸化EGCGに比べ極めて高いTRPA1活性化能を持つ事が判明した。一方、TRPV1に対しては、明らかな活性化能が検出されるものの、酸化EGCGの活性を説明するには不十分であり、Theasinensin Aに加え更に未知の渋味リガンドが存在する事が明らかになった。 「センサー上の渋味リガンド認識部」については、ゼブラフィッシュTRPA1の解析によってzTRPA1aのN端部のアンキリンリピート6から10の重要性が判明した。また、哺乳類、鳥類(ニワトリ)、爬虫類(ガラガラヘビ)のTRPV1及びTRPA1の酸化EGCGへの反応性を解析した。実験に先立ち、ニワトリDRGを材料にTRPA1cDNAをクローニングした。そして、応答解析の結果、TRPV1は鳥類から、TRPA1は哺乳類からカテキン反応性を示すことが明らかになった。そして、予備的な結果ではあるが、キメラチャネルを用いた実験で非常に興味深い知見が得られつつある。マウスのN端をもつニワトリチャネル(MC-TRPA1)とニワトリのN端を持つマウスチャネル(CM-TRPA1)のキメラを作成して解析した。結果、CM-TRPA1のみがカテキン応答性を示した。よって、重要な酸化カテキン認識部位はTRPA1のC端側の膜貫通部にあることが示唆され、ゼブラフィッシュTRPA1と大きく異なる結果となった。 「感覚神経の渋味応答」については、マウスの培養DRG細胞を用いて、顕著な酸化カテキン・Theasinensin AへのCa2+応答が検出された。また、その応答がTRPA1及びTRPV1の阻害剤でどの程度遮断できるか検討した結果、どちらの阻害剤でも顕著な抑制が起こることが明らかになり、TRPA1とTRPV1が相互作用して応答に寄与していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
(渋味リガンドの特定)酸化EGCG溶液中に形成されるもう一つのEGCG二量体Theasinensin DがTRPV1を活性化する特異渋味リガンドの最有力候補本体である。そこで、Theasinensin DのHPLCピークを分取・精製し、TRPV1あるいはTRPA1の発現細胞を用いて、それらをどのように活性化するか解析を行う。構造異性体をTRPA1とTRPV1が識別するという事になるかもしれない。 (センサー上の渋味リガンド認識部)昨年度の研究から、TRPV1は鳥類から、TRPA1は哺乳類からカテキン反応性を示すことが明らかになった。一方、魚類のゼブラフィッシュのzTRPA1aは、カテキン反応性をもつ。おそらくこの矛盾は、ゼブラフィッシュは例外的にカテキン反応性を獲得した生物種だからである。もしそうなら、他の魚類はカテキン応答性を示さないだろう。そこで、ゲノム配列が明らかにされているメダカとフグのTRPA1cDNAを取得し、カテキン反応性を解析する。また、高等動物TRPのカテキン認識部を明らかにする為、昨年に引き続きキメラ解析を行う。TRPA1についてはマウスとニワトリの間で、TRPV1についてはニワトリとガラガラヘビの間でN端部(アンキリンリピート)をスワップするキメラを作成し、カテキン反応性を解析する。これまでの予備実験では、C端の膜貫通部にカテキン認識部位がある可能性が示されている。 (カテキン応答の電気生理解析)真のTRPチャネルの活性化を把握するには、細胞内の蓄積Ca+の濃度変化をモニターするCa2+イメージングでは不十分であり、電気生理学的解析を行う。酸化カテキン、更にはTheasinensin A/Dによって、各TRPV1及びTRPA1チャネルの活性が、どの濃度でどう変化するか、カエル卵母細胞を用いた二本刺し膜電位固定法で明らかにする。必要に応じて、前述の研究で使用したキメラチャネルを発現させ解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
継続使用する試薬の購入が年度を超えることが判明したので、次年度購入することにした。 継続使用する試薬を、前年度残金を含め、平成26年度早々に購入予定である。
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Research Products
(5 results)