2013 Fiscal Year Research-status Report
プロテインフォスファターゼ関連因子の組織的探索と新規染色体機能制御機構の解析
Project/Area Number |
24570195
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中世古 幸信 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (30231468)
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Keywords | 染色体構築・機能・分配 |
Research Abstract |
本研究課題ではタンパク質の脱リン酸化反応が細胞内でどのような機構によって生命現象、とりわけ細胞増殖を制御しているのかという点に焦点を絞った解析を行なっている。プロテインフォスファターゼは、タンパク質の脱リン酸を担う酵素であるが、その逆反応を担うプロテインキナーゼに比較して、作用機序が不明な部分が多い。本研究では酵母ランダム突然変異株ライブラリーを用いた組織的スクリーニングにより、プロテインフォスファターゼに機能的に関連する因子のスクリーニングを網羅的に行なう。一連の解析により、触媒サブユニットを制御する因子、基質、あるいはプロテインキナーゼや他のプロテインフォスファターゼとの機能的相互作用等が見出される事が期待される。それらの結果を総合的に解析し、プロテインフォスファターゼの新規機能、ならびにそれら遺伝子間の機能的ネットワークの理解を目的とする。本年度は昨年に引き続き、分裂酵母のランダム変異株ライブラリー中の変異株に対して、1型プロテインフォスファターゼとしてDis2 を、2 型プロテインフォスファターゼとして、Ppa2(2A型), Ptc1(2C型)を用いて、機能相互作用する変異株ならびに遺伝子の同定を行なった。その結果、Ptc1により相補される変異株が多数同定され、それらの変異遺伝子の解析を進めた。遺伝子の解析を進めた結果、機能的にMAPキナーゼ経路を始めとして、大別して4グループの遺伝子群の作用機序にPtc1が関係している事が明らかとなった。そのうち3グループには共通する遺伝子がPtc1以外にも見いだされた。Dis2, Ppa2についてはスクリーニングを継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ptc1により相補される変異株、ならびに相補する遺伝子のネットワークについて解析を進めた結果、4グループの遺伝子群に大別された。まず1番目のグループとしてMAPキナーゼSty1/Spc1変異株を3株同定し、さらにそれらの株の中にはPtc3(プロテインフォスファターゼ)やRep1(Rabゲラニルゲラニル転移酵素エスコートタンパク質)で相補される事を見いだした。これらはMAPキナーゼ経路とPtc1以外のプロテインフォスファターゼ、ならびに後述のプレニル化反応関連因子との関連を示唆する結果である。2番目のグループとしてRep1に変異を持つ株を6株同定した。これらの株についてもPtc1以外にもSpo9(ファルネシルピロリン酸合成酵素)や未同定Rabゲラニルゲラニル転移酵素アルファサブユニット、Fps1(ゲラニルゲラニル転移酵素)、Zfs1(亜鉛フィンガータンパク質)、Ptc3等の遺伝子が相補する事を見いだした。3番目のグループとしてSpo9変異株を3株同定し、これらもまたPtc1以外にもFps1, Rep1, 未同定Rabゲラニルゲラニル転移酵素アルファサブユニット、Zfs1、Ptc3等の遺伝子が相補する事を見いだした。4番目のグループとしてSpr18変異株を新たに同定(合計2株)した。Spr18変異株からはいずれも上述のタンパク質修飾関連の遺伝子との機能相互作用は観察されなかったがTop3(トポイソメラーゼ)との相互作用が観察された。以上の結果から、上述の4グループの変異株群はいずれもPtc1と機能相互作用するが、最初の3グループについてはPtc1以外にも共通する遺伝子が見いだされた事から、これら3グループ間の機能相互作用の存在が新たに示唆された。それに対してSpr18はPtc1以外に共通な遺伝子が見いだされないことから、それらとは別の経路により生体内で機能する事が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
Ptc1を中心とした解析では、新たに多数の変異株、ならびに候補遺伝子を同定できたため、得られた遺伝子の情報を基に、機能相互作用する因子の関連について、以下に述べる2つの解析を進める。まず、MAPキナーゼ経路、イソプレノイド転移・合成経路、他の2C型プロテインフォスファターゼ関連因子について、同定された個々の遺伝子の既に報告されている情報を集積し、相互作用を分子レベルで説明できる現象を探索する。もう一つはこれらの遺伝子の情報を今回構築された分裂酵母変異株ライブラリーの情報内で検索し、新たな相互作用を探索する。変異株ライブラリーの個々の変異株を相補する遺伝子群については8割以上の株について既に蓄積されている。以上2つの探索により得たデータを統合的に解析すれば、これらの遺伝子間のネットワークがさらに明らかになる事が期待される。Spr18変異株については増殖の高温感受性に加えて、有糸分裂に異常を示すという明確な表現系を示すので、他の有糸分裂制御因子との関連を調べる。本研究ではタンパク質の脱リン酸化による機能調節が焦点であるため、とりわけ細胞周期制御に関連するプロテインフォスファターゼ、プロテインキナーゼとの相互作用の有無を調べる。またSpr18はサブユニット構造(へテロ8量体)をとるため、得られた2種の変異株と他の7種のサブユニット遺伝子との機能的相互作用の有無についても検討する。Dis2(1型)とPpa2(2A型) プロテインフォスファターゼを用いたスクリーニングについては現在のところ候補変異株が同定されていない。制御サブユニット(Sds22等)を共発現するアプローチを継続してスクリーニングを行なうと共に、NMT1等発現量を制御できるプロモーターを用いた発現型の構築を試みる。
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