2013 Fiscal Year Research-status Report
脊索動物門誕生の基盤研究:脊索形質獲得の進化発生学的解析
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24570251
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
高橋 弘樹 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 助教 (40283585)
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Keywords | 脊索 / ナメクジウオ / ホヤ |
Research Abstract |
脊索形成の分子メカニズムの解明は脊椎動物体制構築の解明につながると同時に、脊索動物進化のメカニズムの理解にも直結する。特に頭索動物ナメクジウオは最も原始的な脊索動物であり脊索動物門の誕生を理解する上で欠かせない動物群である。しかし、ナメクジウオの産卵は年に一度であり生存個体数が比較的少ない希少種であり飼育条件が最適化されていないために初期発生の実験動物として用いる際の障害が非常に大きい。 そこで、まずはナメクジウオ成体を用いた解析をスタートさせている。脊索・筋肉・神経索をそれぞれ単離して脊索遺伝子のRNA-Seq解析を行い、各組織の分子的な基盤を明らかにすることを試み、それぞれの組織に発現する遺伝子群を比較解析することに成功した。 また、すでに明らかにされているフロリダナメクジウオのゲノム配列を利用して、脊索形成に重要な働きをする転写因子Brachyury遺伝子の解析を展開している。ナメクジウオのBrachyury遺伝子はゲノム中にタンデムに逆向きに存在していることが明らかになり。実験系が確立している近縁のカタユウレイボヤ胚を用いて、ナメクジウオBrchyury遺伝子の発現調節領域の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにナメクジウオ成体の脊索・筋肉・神経索の各組織RNA-Seq解析を行い、祖先的な脊索動物であるナメクジウオの脊索遺伝子群の分子的基盤を示すことができた。また、脊索と筋肉および神経索で発現する遺伝子群を比較解析することから、脊索と筋肉に共通する遺伝子が数多く存在する一方、神経索に発現する遺伝子群は脊索・筋肉と比較すると共通する遺伝子が少ないことが明らかになった。興味深いことにナメクジウオ成体の脊索細胞で脊索形成に重要な働きをしているBrachyury遺伝子が発現していることが初めて示された。 さらに、すでに明らかにされているフロリダナメクジウオのゲノム配列を利用して、脊索形成に重要な働きをする転写因子Brachyury遺伝子の解析を展開している。実験系が確立している近縁のカタユウレイボヤ胚を用いてナメクジウオBrachyury遺伝子の発現調節領域の解析を進めている。現在までにナメクジウオBrachyury遺伝子の上流領域がカタユウレイボヤ胚において筋肉細胞での発現を担っていることが明らかになった。また、ナメクジウオBrachyury遺伝子のイントロン領域には脊索細胞での発現を制御する領域が複数存在することが示唆される興味深い結果が得られており、当初の実験計画に沿っておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
脊索動物門の脊索形成にはBrachyury遺伝子が重要な役割を果たす。しかし、Brachyury遺伝子の役割は脊索形成に特化したものではなく、もともと原腸形成に関連した役割を持っていたものが、脊索動物の進化の際に脊索形成に関わったものと考えられる。これまでのBrachyuryの研究から脊索動物では原口での発現を制御する領域と、脊索での発現を制御する領域は異なる可能性が示唆されている。そこで、最終年度である今年度は、これまでにカタユウレイボヤ胚を用いて解析してきたナメクジウオBrachyury遺伝子の遺伝子発現解析を、飼育条件が整いつつあるナメクジウオを用いたナメクジウオ胚実験を開始することを試みる。また、脊索を持たない近縁の動物である半索動物・棘皮動物胚を用いてBrachyury遺伝子の遺伝子発現解析することにより脊索動物誕生の分子的基盤につながる遺伝子ネットワークの進化の解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ウニ胚とナメクジウオ胚を用いた実験をそれぞれ筑波大学下田臨海実験所と熊本大学天草臨海実験所において次年度に行なうことを予定したために、研究旅費とフィールド実験に伴う経費が繰り越されることになった。 最終年度にあたり、ウニ胚を用いた実験を筑波大学下田臨海実験所で、ナメクジウオ胚を用いた実験が熊本大学天草臨海実験所で行なえる段階になった。その際に用いる遺伝子解析コンストラクトの作製に伴う分子生物学研究試薬代として主に物品費を使用する。また、ウニとナメクジウオを用いた実験を遂行するために研究旅費を使用する計画である。
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