2013 Fiscal Year Research-status Report
栽培きのこ類子実体の発達異常の原因遺伝子同定と検出マーカーの開発
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24580007
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
松本 晃幸 鳥取大学, 農学部, 教授 (60132825)
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Keywords | 発生・分化 / 菌類 / 遺伝子 / 育種学 / 担子菌類 / 突然変異 |
Research Abstract |
我が国特用林産物の基幹作物である食用きのこ類の生産現場における原因の特定できない子実体の奇形化は、経済的損失につながる重大な問題である。しかしながら、この現象の遺伝的な背景については明らかでない。このため、本課題では、奇形化現象のひとつと考えられる子実体が発生後、正常に傘と柄の分化を行うことができないウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius)の自然突然変異体を材料として、この原因遺伝子を同定し、奇形化の遺伝的素質を明らかにする。そして、その結果に基づき、きのこ類育種および種菌製造過程における変異検出用DNAマーカーを開発することを目的とする。 平成25年度は、変異形質の推定座乗領域(約140kb)より推定された50遺伝子の中から野生型と変異型で塩基配列レベルの多型が認められた9遺伝子について、原因遺伝子の絞り込みを進めた。9候補遺伝子の野生型について、cDNA配列を決定し、変異型の当該領域DNA配列と比較することにより、翻訳アミノ酸レベルにおける変異の有無を検討した結果、9遺伝子中6遺伝子で1~5アミノ酸の非同義置換が推定された。さらに、野生型および変異型それぞれの子実体由来トータルRNAを用いたRT-PCR法による発現解析により、3遺伝子で野生型のみの発現を示す明瞭な泳動像が観察された。これら3遺伝子についての遺伝子破壊用ベクター(pTM1)を構築し、破壊実験を進め、1遺伝子の破壊株作出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請書に記載した平成25年度の目標は、「変異遺伝子候補の絞り込みを発現解析レベルで進め、その結果に基づいた遺伝子破壊による変異原因遺伝子を同定する」であったが、前半部分についてはほぼ計画通りに進めることができたものの、後半については目標達成に至っていない。この理由は本課題で対象としている栽培きのこ種などのモデルきのこ種以外では他生物種と異なり、形質転換効率が極めて低い上、相同組換えによる遺伝子破壊の効率はさらに難易度が高くなることにある。このような背景下、申請者の研究室では本課題で対象としている栽培きのこ種、ウスヒラタケでの遺伝子破壊に成功しているため、期間内での候補遺伝子の破壊株作出は可能と考えていたのに対し、予想以上に破壊効率が悪かったことが大きく影響した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、①前年度に引き続き、これまでに推定している変異原因遺伝子候補からの原因遺伝子特定を遺伝子破壊法により進める。さらに、およそ140kbの原因遺伝子座乗領域の変異型ゲノム配列を次世代シーケンサーゲノム解析により完全に埋め、候補遺伝子に漏れのないようにする。②特定した原因遺伝子の変異様式をDNAおよび蛋白質構造レベルで明らかにし、その情報に基づいて子実体発育過程における当該遺伝子に起因する子実体の発達異常のメカニズムを推定する。③国内外より収集・保存している約50菌株のウスヒラタケ野生株あるいは栽培株における当該遺伝子の多型を明らかにし、多型と変異発生性との関係を考察する。また、育種利用を目的に、育種素材および保存株における当該遺伝子の内在性変異検出用DNAマーカーを作製する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は計画していた変異型ゲノムの次世代シーケンサーによる受託解析を進めることができなかったことにある。また、遺伝子破壊実験が順調に進まなかったことも予算の使用を遅らせることに繋がった。 次年度は本来の申請計画に加えて、前年度の継続となる変異型ゲノムの次世代シーケンサー解析等に対する支出を計画している。
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