2012 Fiscal Year Research-status Report
低アレルゲン小麦作出を目指したコムギ種子貯蔵タンパク質遺伝子の網羅的解析
Project/Area Number |
24580011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
川浦 香奈子 横浜市立大学, 付置研究所, 助教 (60381935)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パンコムギ / 種子貯蔵タンパク質 / 遺伝子発現 / アレルギー |
Research Abstract |
パンコムギの種子貯蔵タンパク質は、グルテンを構成するため小麦粉の加工適性を決定する要因であるとともに、小麦粉によるアレルギーや小腸の炎症を引き起こすセリアック病の原因となる。アレルゲンとなるタンパク質をコードする遺伝子と品種間差を同定し、DNAマーカー作出や種子貯蔵タンパク質をコードする多重遺伝子の遺伝様式を明らかにすることを目指して研究を行った。 コムギアレルギーの既知のエピトープのアミノ酸配列から作製したペプチド抗体3種を用いて、さまざまなコムギの種子貯蔵タンパク質との反応性をウエスタンブロット解析により調査した。ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)・コムギによって選出された多型パネル系統約170系統を用いて、反応性が異なる系統を特定した。また、コムギ標準実験系統Chinese Spring(CS)においては染色体異数体系統の種子貯蔵タンパク質を2次元ゲル電気泳動で分離し、ウエスタンブロット解析を行うことで、各種子貯蔵タンパク質の分子種が由来する染色体を同定した。 また、コムギ2系統の受粉後18日目の登熟過程の種子からRNAを抽出し、比較的長いリード長が得られる次世代シークエンサーRoch GS FLX+を用いてRNAシークエンスを行った。シークエンスデータから、2系統間でのRNA分子種の違いの比較解析およびエピトープ配列の探索を行っている。以前に行ったEST解析との比較も行っている。 さらに、特徴的な抗原抗体反応を示す品種同士およびCSとを相互に交配し、種子貯蔵タンパク質遺伝子の遺伝様式の調査に用いる材料の作出を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、発現遺伝子からアレルギーの原因となる抗原を定量するというテーマで、3つの研究計画を立てた。1つ目は、アレルゲンのエピトープ特異的抗体によるコムギ品種のスクリーニングとしており、計画通りのコムギ系統数のウエスタンブロット解析が終了し、目的の抗原抗体反応性が異なる系統を特定することができた。2つ目は、次世代シークエンスによる発現遺伝子の網羅的解析としており、計画通りに2品種から種子登熟過程のRNAを抽出し、次世代シークエンスを行うことができた。3つ目は、実験用分離集団の作出、としており、特徴的な抗原抗体反応を示す品種同士や、ゲノムデータが充実している標準実験系統との交配を相互に行い、次年度以降に用いる交雑系統を複数得ることができた。 3つの研究計画ともに計画通りに進められたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた次世代シークエンサーによる登熟過程のコムギ種子のRNAシークエンスデータの解析を中心に研究を進める。2系統間でのエピトープをもつ遺伝子をコードしている配列を抽出する方法を確立し、種子貯蔵タンパク質遺伝子の多様性を明らかにする。また、シークエンスのリード数から個別の遺伝子発現量を明らかにする。これらから、品種、発現している種子貯蔵タンパク質遺伝子、遺伝子発現量およびコードしているタンパク質のアレルゲンのエピトープについてカタログ化を目指す。 また、発現遺伝子の配列データを基に、エピトープをもつ種子貯蔵タンパク質遺伝子の多重遺伝子間の多型および品種間の多型を調査する。種子貯蔵タンパク質遺伝子内の繰り返し配列領域を利用したSSRマーカーまたは保存領域のSNPを利用したDNAマーカーを設計する。前年度に作出したF2分離集団に対してこれらのDNAマーカーを用い、種子貯蔵タンパク質遺伝子の遺伝様式を調査する。 二次元電気泳動によって分離し、ペプチド抗体に特異的に反応したタンパク質を同定する。プロテインシークエンスを行い、アミノ酸配列と発現遺伝子の塩基配列との対応付けを進める。これらから、発現遺伝子の品種間差とエピトープに反応するタンパク質の品種間差の関連づけを行う。 これらから次世代シークエンスによるトランスクリプトーム解析を応用したアレルギーのエピトープを含む種子貯蔵タンパク質の効果的な解析法の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度の研究費は、次年度の研究費と合わせ、タンパク質やDNAの解析試薬の購入に使用する。
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